作者は六条斎院宣旨源頼国女。
作者名は藤原定家の「僻案抄」等に見られる記述によるが、頼国女がどのような人だったのか、細かい事情については不明。
また成立年代も、作者である頼国女の伝記資料と物語内部の考証によるが、やはり未詳であり、平安末期の作としか言えない。
「狭衣」は、「源氏物語」の影響を受けて生まれた幾多の物語群の中でも最も輝いた作品で、「源氏物語」の中心的な女君である紫上や藤壺、そして儚く忘れがたい印象を残す夕顔や浮舟たちの姿がさまざまな形で投影されている。
また「うつほ物語」や「竹取物語」など古い物語の世界も取り入れられ、さらに「夜の寝覚」「浜松中納言物語」などの平安末期から中世に掛けて作られた多くの物語類との関連も窺われ、さらに「狭衣」以後の中世物語群にも多大な影響を与え続けた書であり、すべての物語要素を集大成して作られた、物語を代表する物語ということのできる「モノガタリ」なのである。