映画の『おまけ』

横溝美保

目次
序論
第一章 〈おまけ〉の歴史
  第一節 日本のおまけ
  第二節 グリコのおまけ
  第三節 グリコのおまけの歴史
  第四節 おまけを求める大人たち
第二章 映画の『おまけ』
  第一節 映画のおまけの種類
  第二節 現在の映画のおまけ
  第三節 映画のおまけの現状
  第四節 おまけの進化と変化
  第五節 映画のおまけの効果
第三章 今後の映画のおまけ
  第一節 おまけより割引
  第二節 おまけの可能性
まとめ
参考文献

序論

 二〇〇九年一二月四日の朝日新聞夕刊一六面に、映画公開情報が載せられた。これらの記事の中には、いずれの映画にも共通した情報が書かれていた。「前売り券購入の方にストラップをプレゼント」「劇場へお越しの方に先着で化粧品を差し上げます」等がそうである。これらはどちらも映画を劇場で観る際の特典をアピールしている。昨今、大抵の映画情報には上映期間、キャスト、評論家の感想、あらすじだけでは無く、こうした特典のアピールが付きものなのである。映画に特典が付きものになってきたと共に、それは多種多様なものになってきた。前売り券に付いてくるストラップ、公開初日に配られるポストカード、先着で配られる化粧品、劇場で子供達に配られるおもちゃ。特典の配られる条件、方法、特典の内容は多岐に渡る。そしてそれらはしばしば映画に話題性を与えることにもなる。しかし、映画はあくまで作品を観ることが一番の目的であるはずだ。特典がどんなに魅力を持っていたとしても、特典は主役にはなれない。これらの特典は、映画という主役のおまけ的な存在なのである。そこで、ここからは映画に関する様々な特典を映画の『おまけ』として記述していく。主役ではないおまけだが、存在する以上は価値があるはずである。だからこそ映画には付きものとなり、今日でも尚多種多様に進化し続けているのだと考えられる。本論ではそのおまけを様々な角度から見ていく。
  

第一章 『おまけ』の歴史
第一節 日本のおまけ

 昨今の映画にはつきものの『おまけ』。このおまけには話題性や集客性を得るという狙いがあると考えられる。おまけを生産する上では必ず費用が必要になってくる。それでもおまけを生産し配布するということは、そこにいくらかの確実な利益を見込んでいるはずである。確実な利益を見込める程、ほとんどの日本人がおまけ好きであることは誰もが少なからず実感しているのではないだろうか。なぜなら、日本にはあらゆる『おまけ』が溢れているからである。お子様ランチに付くおもちゃ、お菓子に付くカード、雑誌の便箋等付録、化粧品に付く試供品、5足で1足プレゼントの靴下、漫画に付くシール、クリスマス来園記念のキーホルダー、早期申し込み割引の旅行。これ程までに日本におまけが溢れているのは、おまけというのが利益を見込める有効な手段であることが認識されているからだと考えられる。

第二節 グリコのおまけ
 日本に溢れるおまけの発祥は、もちろん映画においてのものではない。むしろ映画のおまけの歴史は他の歴史よりもずっと浅く、人々の認識度も満足ではない。おまけの発祥として有名なのはお菓子のグリコである。したがって、以下日本中におまけが溢れることとなった最初のおまけ、すなわち映画のおまけのルーツとなったと考えられるグリコのおまけについて調べていく。
 お菓子のグリコは一九二二年、創業者である江崎利一によって「栄養菓子グリコ」として初めて発売された。誕生の時点で、グリコには既にお菓子に栄養というおまけ的付加価値があった。翌一九二三年、グリコクーポン券付きチラシ、オマケカードが誕生した。これらは今日のグリコには見られないおまけではあるが、現代の日本でもよく見られるおまけの形である。その後グリコは黒字となり、東京への進出も果たした。そして一九二七年、今日のおまけと同じ様な豆玩具オマケが創案された。更に一九二九年にはおまけサックが考案され、おまけの量産が始まった。このグリコの形が現代まで続いているのだが、グリコは一九二九年以降も様々なおまけ的挑戦をしていった。一九三一年にはグリコを買うとその場で映画を観ることができる「映画自動販売機」を設置。これは日本最初の自動販売機であるが、当時から映画とおまけという組み合わせは日本人にとって魅力的なものだったのかもしれない。翌一九三二年には、クーポン券による引換え商品制度を開始した。これら以外にもグリコは様々なことを試みてきたが、おまけに対する情熱が常に一番強かった企業と考えられる。グリコの代表的「おまけ係」であった宮本順三氏は、昭和十四年発行の『グリコ(株)現況と其の行き方』の中でこう綴っている。

 大量仕入れから受ける利益、技術の熟練やコストの低減によって、よくマァこんなものがこの値でと言われる程の物が出来ます。手先の器用と家内的工業の賜物によって、重要輸出品として出される日本の特産豆玩は全世界の子供を喜ばせているが、一つの指針をもって作られているグリコの豆玩具を地元に持つ、日本の子供たちは幸福であると私共も自負して憚らない所であります。グリコを体に例えるならば、豆玩はそれに纏ふ四季とりどりの衣服とでも申しませう。(中略)見栄を張るだけや、家の飾りとして玩具を買ふ人は、何処までも外観の立派なものでなくてはならないでせう。本当に遊ばす為、遊びの教育をするためならば、グリコの豆玩は小さくとも山椒の粒であり、小さきが故に子供に無上に愛される玩具のエキスとも申されませう。

 この文章から、ただの営利目的だけではないグリコのおまけに対する宮本氏の誇りや情熱を感じることができる。ここまで情熱的な「おまけ係」が今日の日本の企業にどれだけいるかはわからない。しかし、間違いなくグリコのおまけは今日の日本のおまけに影響を与えている。
 様々な初の試みをしてきたグリコであるが、そのグリコのおまけもいくつかのヒントを得た産物であったようである。その一つが「あてもん」である。ボール紙で仕切りを作り、その枠の中に小さな指輪や腰下げ、飴玉などを入れて、薄い紙で蓋をしてある。そこへ上から指を突っ込み、当たった品物がもらえる。これを「あてもん」といい、グリコの開発よりももっと昔から一文駄菓子屋や文具店にあったそうである。グリコはここから「何が当たるかわからない」という発想を得た。そしてもう一つに「サンライズ」というタバコがある。明治三四、五年、「サンライズ」は商品に美人の写真を入れてヒットした。これをヒントに創業者江崎氏は商品に絵葉書のようなカードを入れた。これがグリコのおまけに繋がっていったのである。つまり、グリコのおまけは最初の『おまけ』では無かったのである。キャラメルの箱におもちゃを入れたのはもちろんグリコが最初であるが、それがいわゆる『おまけ』での最初ではなかったようである。したがって『おまけ』のルーツは起源を辿ることが困難であるのだが、その歴史が想像以上に古いものであることはわかる。同時に、おまけや「何かがもらえる」というようなギャンブル性のあるものを日本人は昔から好んできたこともわかる。

第三節 グリコおのおまけの歴史
  以上のようにおまけのルーツや日本人の気質について探っていくことは困難であること、また本論の『映画のおまけ』の議論からも遠ざかってしまう為、深入りはとどめる。しかしもう一点グリコのおまけには注目したい点がある。それはおまけの内容である。一九二七年に豆玩が誕生してから八〇年以上経つが、グリコのおまけは常に変化し続けてきた。
 一九二七年に創案された豆玩具は、偉人や兵隊などの銅製メダルであった。その後は紙めんこ、明治天皇御製歌集、組立飛行機集、おまけ箱の家シリーズ等紙製のおまけが多かったようである。その他には七宝バッチや木竹紙製等もあった。これらを見ると、現在では子供に喜ばれないようなおまけが多い。現代の子供達は紙のおまけにそこまで満足できるとは考えづらいし、天皇という言葉に興味を惹かれる子供も少ないのではないかと考えられる。実際、現在のグリコのおまけには当時のおまけの特徴が見られない。
    
 一九三七年、グリコのおまけに変化が訪れる。日中戦争が勃発した為である。この影響により、グリコのおまけは戦時色の強いおまけが多くなる。おまけ箱の家シリーズにあった様々な家、八百屋、おもちゃ屋、文具屋、花屋等は、兵営、爆撃機格納庫、野戦病院、中国の城門、高射砲陣地。戦艦、航空母艦等に変わった。そして材料はアンチモニー、紙、セルロイド、粘土が中心となった。これらのおまけも現在のグリコのおまけでは考えられない。 
 一九四七年、終戦後はおまけの材料不足となり、ロウセキ、クレヨン、ゴム等手に入る物が最大限に利用された。その後はまた加工しやすい紙製品が主体となったようである。それ以外はラムネ玉を使用した車や動物、アンチモニー製の飛行機、電車、オートバイ等があった。ここで戦時色はだいぶ薄れたようである。
 一九五二年、グリコはおまけのプラスチック化を目指す。その他にもセルロイド、モール、木、ブリキ等材料が多様になってくる。また戦前と比べて女の子用のおまけが増えた。そして一九五八年、おまけはプラスチックの時代になった。当初は単色で形も小さい自動車や乗り物が多かった。  
 一九六一年、人気漫画のキャラクター『鉄人28号』のおまけが登場する。これは明治製菓のアトムシールに対抗していたようである。その後、男の子用と女の子用のおまけ、キャラクターおまけとノンキャラクターおまけに分類され、消費者が自由に選択できるようになった。この辺りでおまけは大きく、カラフルになり、形も多様になり種類も増えていった。
  
 一九八〇年、世の中では受験戦争による子供の遊びが減退し、おもちゃ離れの現象が訪れた。その為か、グリコは更におまけに工夫を重ねていく。男の子のおまけはSF、女の子のおまけはメルヘンタッチのものが主流となった。さらに『空から来たポーとペーの世界』『ギャラクシー百科』などストーリー性のあるものが登場した。
 そして現在、グリコのおまけは性別の違いが無くなった。おまけは大型でカラフル、動きのあるものが主流になった。さらには千円グリコ等も登場することとなった。
 これらのグリコのおまけの歴史を見てみると、常に技術の向上を目指し、消費者の需要に応えようとする姿勢が伺える。この点が映画のおまけにも共通しているのである。それについては後で詳しく述べていく。ちなみにこれについても後述するが、映画のおまけは子供向けの物が多いという印象が強いようである。グリコのおまけも同様に子供向けの物が殆どである。実際グリコのおまけは子供を対象としているのだから、これは間違いではない。いつの時代もどのようなおまけも、子供向けのものが多いのかもしれない。おまけというのは本来無くても良いものである。おまけを配給する側からすると、主役である物から利益を得たいのであり、おまけはその促進効果を期待する物でしかありえないのではないかと考えられる。その為おまけにはあまり費用をかけることができないはずである。費用が少ないのであれば、やはり品質の高いおまけを生産することは難しい。しかし、品質の高くないおまけに経済力のある大人が満足を得ることもまた難しいと思われる。一方、子供は大抵の物は与えてもらう他方法は無く、あらゆる物が初めての物である。その為、品質の高くない物でもより満足を得やすいと思われる子供に向けたおまけが多いのだと考えられる。

第四節 おまけを求める大人たち
 しかし、グリコのおまけを大人が盛んに欲した時代もあった。それが戦時色のおまけが多くなった戦時下である。戦時下、戦地の兵士たちの慰問袋にはグリコとグリコのおまけが入れられていた。それに対する兵士たちのお礼文、引換え商品請求の手紙をいくつか紹介する。

   宮本兄。先日は軍歌集頂戴し、有り難う御座いました。軍歌集は小人のためになる良い本である上に、私達でもこれを読んで感激し、「抜刀隊」など陸軍観兵式には必ず奉せられる陸軍マーチだと、電報班長殿も感激して居られました。私達、広報監部勤務の者はせめて軍歌でも声高らかに歌って、第一線に行けるその時の来るのを待っております。

 『豆分』謝々。グリコはエライものだよ。この僻地に、サイダー、酒、ビールを押し退けてやって来た。キャラメルよりもいいと大評判だった。大きな箱に驚かされ、二十四個入りに、四個おほいワイと勘定した。オマケは、一時間程兵隊さんのオモチャになった。飛行機は胸にトメタ。子供の兵隊さんもある。

  暫しの間の休憩時間に部隊より渡された、加給品がありまして、益々グリコのモットーとする一粒三百メートルを其侭にいやそれ以上に発揮して○○を突破し、遂に見事○○をほふり万歳の声も高らかに、どっと喜ぶ兵士達がポケットを探り、次の攻撃力を養ふべくグリコを頬張り、中より出て来た賞品切手にさながら子供のやうに、あれやこれやと皆で集めたのが三十枚の切手であります。中には土でよごれたものもありませう……

  此処に『グリコ』賞品引換鐙を五十枚御送り致します。此の券は御慰問袋の中に入れてあったので、小生が戦友より貰ひ一生懸命に貯めた物です。軍艦の文鎮とケンビキョウ、すぐ御送り下さい。


 兵士の中にはおまけを子供に贈る人もいたそうである。しかし、兵士達もグリコだけではなくおまけにも心を躍らせていたことがこれらの文からわかる。おまけは子供向けの物が多く、必要としない人も多いかもしれない。しかし、おまけを嫌がる人は殆どいないのである。それどころか状況やおまけの内容によっては喜ばれることも多いのである。グリコのおまけに見受けられたおまけの変化、おまけに対する人々の反応は映画のおまけにも共通する。その点を次の章から述べていく。


第二章 映画の『おまけ』
第一節 映画のおまけの種類

 本論では、映画に関するおまけを総称して『映画のおまけ』とする。映画のおまけは大まかに三つの種類に分けることができる。一つ目が、劇場を訪れる観客全員に配られるおまけ。二つ目が、前売り券を購入した人に配られるおまけ。三つ目が、先着順等条件付きで配られるおまけである。これらを一つずつ詳しく説明していく。
 まず一つ目の、劇場を訪れる観客全員に配られるおまけについて。これは文字通り、劇場を訪れれば誰もがもらえるおまけである。前売りチケットを購入する必要も無く、配布期間が設けられていることもなく、一番手に入れやすい。その為、三つのおまけの中でも一番量産されていると考えられる。このおまけは特に子供向けの映画で多く見られる。劇場版『ドラえもん』や『ポケットモンスター』では毎年観客の為のおまけが用意されている。ここで配られるおまけはカード、フィギュア、ミニカー等が多い。いずれもけっして質が高いとは言えないが、子供達が喜ぶよう毎年工夫が為されている。この点が、この一つ目のおまけが子供向けの映画に多い理由の一つであると考えられる。第一章で述べた通りであるならば、大人よりも子供の方が質が高くなくともおまけに満足しやすい。その為、質が高くなくとも量産することで興行収入への効果が期待できるのではないだろうか。もう一つの理由は単純に、おまけによって子供を釣りやすいことだと考えられる。この事実が最もわかりやすいのが劇場版『ポケットモンスター』である。この作品では劇場に訪れた観客全員にポケモンカード等を配っている。しかしその他にも特別なおまけが存在する。それは、ゲーム『ポケットモンスター』のポケットモンスターデータである。これはゲーム機ニンテンドーDSと該当するポケットモンスターカートリッジを劇場に持っていくと、劇場内のスクリーンからワイヤレス回線でポケットモンスターデータがもらえる仕組みとなっている。このおまけはニンテンドーDSと該当カートリッジを持っていけば誰でももらうことができる。もちろん、観客全員がニンテンドーDS等を所持しているとは限らない為、現在でもカード等一般的なおまけも用意されている。しかし、現在の劇場版『ポケットモンスター』のおまけは、カードよりもポケットモンスターデータの方が圧倒的に注目を集めている。なぜなら、劇場で配られるデータのポケットモンスターは、通常ゲームするだけでは手に入らないものだからである。これらのデータは劇場版に登場する幻のポケットモンスターとして、毎年宣伝されている。同ゲームにはポケットモンスターのデータを集めるという目的要素も含まれている為、このデータを欲する人はとても多い。実際、『ポケットモンスター』のアニメを見ない様な大人達の中にもゲームを楽しんでいる人も存在する。その為、同じ様に子供向け映画の『ドラえもん』とは違い、『ポケットモンスター』の上映館内ではデータ欲しさの大人の姿をしばしば見ることができる。更にデータのおまけである場合、材料費等のコストが省ける為とても効率が良いと考えられる。一つ目に挙げたおまけは質が高いものばかりでは無いし、大人が釣られることも少ない。しかし、劇場に行かなければもらえないという特別感は確かに存在するのである。
 二つ目の、前売り券を購入した人に配られるおまけについて。これは前述した一つ目のおまけとは違い、劇場で配られるおまけではない。当日券では無く、前売り券を購入した人のみがもらえるおまけである。このおまけで圧倒的に多いのがストラップやボールペン等筆記具である。これは一つ目のおまけのカードやフィギュアよりも質が高いおまけだと言える。また、このおまけが多く利用されるのが大人向けの映画である。例えば、客層が大人である作品の劇場でフィギュアが配られたとしても喜ぶ人は多くないと考えられる。かといってストラップや筆記具を量産するには費用がかかってしまう。そこで、前売り券を購入した人にのみおまけが配られるという形が多いのではないかと考えられる。さらに前売り券の場合はその分の興行収入が確保される為、映画配給元からすると安全な策だと言える。より確実な利益を確保する為か、このおまけにはストラップ以外にも質が高く工夫を為されたものが多いのも特徴の一つである。ちなみに通常映画の券は通常大人が一人一八〇〇円、学生が一五〇〇円であるのに対し、前売り券は一三〇〇円前後であることが多い。前売り券は通常料金よりも安い上、現在ではおまけがついていることが当たり前となっている。消費者側からも利益のある形であると言える。
 三つ目の、条件付きで配られるおまけについて。このおまけは公開初日のみ、先着何名かの限定等条件が合うときにもらえるおまけである。このおまけも二つ目のおまけと同様に、量産されるわけではない為、一つ目のおまけよりも質が高いものが多い。また、このおまけの形は三つのおまけの中でも一番実行されることが少ないが、大人向け子供向けどちらの映画でも利用されている。一般的には先着順や指定の店舗での券購入が条件となることが多いが、近年では作品内のキャラクターのコスプレで来場することが条件になる等、条件も多様化してきている。

第二節 現在の映画のおまけ
 第一節では映画のおまけをおおまかに三つに分けて説明した。第二節ではおまけの種類が三つであるということを頭においた上で、現在のおまけがどの様な物であるか、具体的に紹介していく。ここから、二〇〇九年度専修大学学生二二五人にとったアンケートも併せて紹介していく。まずは、アンケートを元に判明した実在した映画のおまけを載せていく。

 ストラップ、ペン、消しゴム、フィギュア、ミニカー、ヨーヨー、ポストカード、カード、コイン、キーホルダー、うちわ、ライト、パスケース、コースター、しおり、携帯クリーナー、時計、クリアファイル、下敷き、カレンダー、デスクトップデータ、メイキング映像、雑誌、バンダナ、巾着、ティーシャツ、化粧品等

 上記の例を見るだけでも、現在の映画のおまけが多岐に渡っていることがよくわかる。さらに変わった物では、恐怖映画でおまけとしてお守りが配られた事例もあったようである。また回答の中には原作者描き下ろしの絵がプリントされたチケットを挙げ、おまけでは無いものの価値があるのではないかという意見もあった。映画のおまけ等工夫は多岐に渡り、そこに価値を見出す観客も確かにいるようである。そこで、次は人々の認識等から映画のおまけの現状を見ていく。

第三節 映画のおまけの現状
 専修大学学生を対象にした225名の回答から、様々なおまけが実在することがわかった。そして、おまけに価値を見出している人がいることもわかった。しかし、全ての人がおまけに価値を見出しているのだろうか。そして、歴史自体が浅い映画のおまけは十分に認識されているのだろうか。これらを同アンケートの結果から見ていく。
 

 図1の結果を見ると、少数ではあるが『映画のおまけ』の存在を知らない学生がいることがわかる。存在を知らない学生は、映画を観る習慣もしくは映画を劇場で観る習慣が無いのかもしれない。しかし映画のおまけは歴史自体がまだ浅く、またどの作品でもおまけが用意されている訳ではない為、映画を劇場で観る学生でもおまけの存在を知らない場合があると考えられる。
 次に図2の結果を見てみると、図1の結果との差が生じていることがわかる。図1の質問に対するYESの回答人数よりも、図2の質問に対するYESの回答人数がやや減少している。つまりこの結果からは、おまけの存在を知ってはいても貰った経験は無い学生がいるということが伺える。今日のアニメーション映画のテレビコマーシャルでは、同時におまけについても宣伝されている。また劇場での本編が始まる前の予告映像では、前売り券とそのおまけの宣伝がされていることもある。図1、2の比較結果から、これらの宣伝は人々への認知に少なからず効果を上げているということが伺える。いずれにせよ、映画のおまけは多くの人々に知られているということがわかった。

第四節 おまけの進化と変化
 今日では多種多様になった映画のおまけ。それは日本の人々の多くに存在を知られている。その様な今日に至るまで、歴史が浅いと言えども映画のおまけは確かに進化を遂げてきた。この点についてが、第一章第三節で挙げたグリコのおまけの歴史と共通する。
 まず技術的な進化を劇場版『ドラえもん』の歴代のおまけから見ていく。一九八九年、『のび太の日本誕生』により劇場版『ドラえもん』は十作目を迎えた。その記念として初代のおまけが作られた。このおまけは単色であり、仕掛けや動きも無い。ここから毎年劇場版『ドラえもん』ではおまけが配られていく。まずは翌一九九〇年、おまけは単色のフィギュアにバネが付き、おまけ二年目にして早くも動きのある物へと進化した。更に一九九二年には単色から二色へと進化した。この後は何年かミニカー型のおまけが続いた。そして二〇〇〇年にはついにカラフルなおまけとなった。この辺りからミニカー型ばかりではなく、パズルになっている等の変化も見られる。

     

 この様に、劇場版『ドラえもん』のおまけは十年ほどでより質の高いものへと進化してきたのである。しかし技術的な進化においては、現在ではやはり劇場版『ポケットモンスター』が最たるものであると思われる。同作品でワイヤレス配信されるポケットモンスターというおまけは、二〇〇七年に公開された『ポケットモンスター ディアルガVSパルキアVSダークライ』のダークライのデータから始まった。このワイヤレス配信のおまけは世界初であり、大変な好評を得た。その為このおまけは二〇〇九年現在まで続いており、今尚興行収入に少なからず影響を与えている。
 次におまけの内容を見ていく。映画のおまけは今日でもおもちゃやポストカード、又は作品に関連したアイテムのフィギュア等が多いようである。しかしストラップを始め、携帯電話クリーナー、パソコン用デスクトップデータ入りのCD、メイキングDVD等、電子機器に関するおまけも増えてきている。また今日のドラマ、美容等の韓流ブームの影響からか、韓国映画では韓国ブランドの化粧品が配られた事例もある。この様に、おまけの内容は日々世の中の人々の需要に応えるよう工夫がなされているのである。
 そしてもう一つ、特殊な例を挙げる。それは二〇〇七年に上映された『劇場版xxxHOLIC真夏ノ夜ノ夢・劇場版ツバサ・クロニクル鳥カゴの国の姫君』のおまけが配られる条件である。同作品では前売り券のおまけ等も用意されていたが、もう一つのおまけも用意されていた。同作品のキャラクターのコスプレをして劇場に訪れた人にのみ配られたおまけである。コスプレがおまけ配布の条件として登場したことは、まさに現代日本のオタク文化が強く反映された出来事だと考えられる。
 グリコのおまけ同様、映画のおまけも日々進化と変化を遂げている。それはより人々の需要に応え、興行収入へと影響を与える為であると考えられる。しかし、これ程までに多様化してきたおまけが必ずしも興行収入に影響を与えているとは限らない。それは次のアンケート結果を元に、説明していく。

第五節 映画のおまけの効果
 第三節に載せたアンケートでは、他にもいくつかの質問をしていた。その一つが、「おまけ目的で映画を劇場まで観に行ったことがあるか?」という質問である。結果は、男子学生六九人中六人、女子学生一五七人中十七人がYESと回答した。この結果を多いと感じるか、それとも少ないと感じるかは人それぞれであると思われる。映画を観る習慣が無い人、またおまけ目的で劇場に行ったことが無い人からすると、少なからずYESという回答があっただけでも驚きかもしれない。映画は学生であれば通常一五〇〇円の費用がかかる。加えて映画を劇場で観る際には大抵二時間ほどの拘束時間が発生するのである。その費用と時間を材料費がさほど高くないと思われるおまけに費やそうという考えは、けして多くはないはずである。それでも男女ともに一割前後の学生がおまけ目的に映画を観に行ったというのであれば、この結果はけして少なくはないと考えられる。しかし第四節で述べた通り、映画のおまけは今も尚進化と変化を続け、人々の関心を惹こうと工夫が為されている。それら多様化された映画のおまけを見る限り、適当に生産されているとは考えにくい。作品ごとに、毎回どのようなおまけを用意するか企画され、試作と検討が繰り返されているのだと予想される。それ程までに今日の映画のおまけは日々多種多様なものが配布されている。またその事実はアンケートからもわかるように、多くの人々にも認知されている。これらの点から、今回の質問の結果はもっと多くても良かったのではないかと考えられる。まず、工夫がなされているおまけはもっと人々の関心を惹いてもよいのではないかとも思われる。しかしそれ以上に疑問となるのは、おまけ目的で映画を観に行く人が一割前後であるならば、そのおまけは興行収入にあまり影響を与えられないのではないかと考えられる。また作品とそのおまけによっては全く興行収入に影響を与られなかったり、おまけが損失となってしまうこともあるのではないかと思われる。それにも関わらずなぜ映画のおまけは生産され、進化し続けているのであろうか。
 ここで参考にしたいのが、徳田賢二著『おまけより割引してほしい:値ごろ感の経済心理学』である。この著書では、値ごろ感について説明されている。ある物に対して費用を払った時、そうして得た物に対してどれ程の値ごろ感を感じることができるか。もちろん、値ごろ感は高ければ高いほど良い。その値ごろ感は数式で表される。費用を分母とし、その商品価値を分子とする。つまり、商品価値を費用で割ったものが値ごろ感となる。この数式で値ごろ感を高くする方法は三つ。一つは商品価値を上げること、もう一つは費用を下げること、そして最も効果的な方法は商品価値を上げ且つ費用を下げることである。例えば、自動販売機で百二十円の缶ジュースを一本買うとする。これは今日では普通のことである為、値ごろ感はゼロであると考えられる。この時、特別期間として缶ジュースの内容量が増えていたとする。費用は変わらず百二十円であったとしても内容量が増えたことにより、購入者は普段以上の値ごろ感を感じるはずである。これが、商品価値である分子を大きくした場合である。そしてもう一つが、同じ缶ジュースが百円で売っていた場合。
内容量はいつもと変わらないが、費用が下がったことによりこの場合も普段以上の値ごろ感を感じるはずである。また缶ジュースの内容量が増え、且つ百円で購入した場合は値ごろ感が大幅に大きくなる。数式で表すと難しい気もするが、この値ごろ感の変化は誰もが経験したことがあるのではないだろうか。ちなみに、この数式での費用には金銭だけではなく時間等も含まれる。いくら缶ジュースの内容量が増え百円で売っていたとしても、その自動販売機が現在地から一時間かかる場所に設置してあった場合。更に買い溜めるのではなく、喉が渇いていてすぐに飲む為に缶ジュースを買う場合。その一時間かかる自動販売機まで行く人よりも、近くの自動販売機で通常の缶ジュースを買う人の方が多いと考えられる。値ごろ感は、商品価値や金銭だけではなく時間やその人の状況も影響するのである。
 これを映画に当てはめると、分子が上映作品で分母が鑑賞券代と上映時間、劇場までの交通費等になる。映画のおまけとは、この数式の分子を大きくする役割を担っている。おまけが無い状態が値ごろ感ゼロであるとする。連作もので作品の面白さが保障されていたり、特定の好きな監督の作品である、好きな俳優が出演している、評判を耳にしている場合は、映画を観る前からその上映作品に期待と安心という価値を感じている為分子が大きいと考えられる。それは、その作品に対する値ごろ感が大きい為実際に劇場に訪れる要因となり得る。しかし、前述したような価値を特に感じていない場合は値ごろ感がゼロである。そこでわかりやすく値ごろ感を上げるのが物であるおまけであると考えられる。おまけが付くことを宣伝することで分子を大きくし、値ごろ感を大きくしているのである。実際に見終わり、どれ程の値ごろ感を感じるかはわからない。しかし、観る前の値ごろ感を上げることにより興行収入へと影響を与えることは確かに可能なのである。これが、映画のおまけが生産され進化し続ける理由の一つであると考えられる。もう一つが、「値ごろ感は感じなくなる」ということである。同書では、値ごろ感はそのままの状態ではいずれ感じなくなる、ということも書かれている。缶ジュースの内容量が増えた時、料金が百円になった時には値ごろ感を感じることができる。しかし、それがずっと続くとその状態は当たり前となり、値ごろ感はゼロになってしまうのである。そして、もっと内容量が増え料金が下がることを望むようになってしまう。この値ごろ感がゼロになるという経験も、経験したことがある人は多いのではないだろうか。映画のおまけも同じような状況なのだと考えられる。今日では大抵の映画におまけが付くようになっている。特に前売り券にはおまけが付くのが当たり前にさえなっているように思う。この状況で前売り券に何も付かないと、値ごろ感はマイナスになってしまいかねない。映画のおまけが広まったからこそ生産を止めることは難しい。そして少しでもおまけが値ごろ感を大きくするよう、他作品のおまけとの差別化を試みて進化と変化が続いているのではないかと考えられる。
 日々進化と変化を続け、多様化されている映画のおまけ。しかし、効果を発揮したとしても一割前後である。更に、このままでは効果が減少していくこととなる。前述したアンケートでは、男女ともに学生の一割前後が「おまけ目的で映画を観に行ったことがある。」と回答した。これは分子がおまけ、分母が鑑賞券代と上映時間、交通時間となる。この場合、おまけを目的とする以上そのおまけの元となる作品にも価値を感じているはずである。そうだとしても、このおまけは分子を相当に上げたのだと考えられる。しかしアンケート結果から、この様に分子を上げることができるおまけは少ないこともわかる。おまけの効果の減少を止める為に、そしていまある効果をさらに高める為に、今後映画のおまけはどの様なものになっていけば良いのか。それについて、同アンケートを元に次章で考えていく。

第三章 今後の映画のおまけ
第一節 おまけより割引

 同アンケートで、「今後どの様なおまけがあったら嬉しいか?」という質問をした。この質問に対して、様々な回答が寄せられた。その中でもまず注目したいのが「割引」という単語である。回答として、「映画の割引券」が九票、「レストラン等割引券」が二票、そして「次回作の鑑賞券」が一票であった。この回答はどれもが値ごろ感の分子を上げるおまけである。しかし、「映画の割引券」「次回作の鑑賞券」という二つのおまけは、次回作の映画の値ごろ感においては分母を下げる役割となるのである。分子を上げることよりも、分母を下げることにより大きな値ごろ感を感じたのだと考えられる。この点についても第二章第五節に挙げた徳田氏の著書に書かれている。値ごろ感を大きくする為には分子を上げるか分母を下げる必要があるが、人は分子を上げるよりも分母を下げることでより値ごろ感を大きく感じるようである。これは数式に様々な数値を当てはめて計算した上での結果である。ここではその詳しい部分は省くが、物であるおまけは割引よりも利益を具体的に実感しにくいということも理由の一つである。この結果が映画のおまけのアンケート結果にも表れたようである。アンケートでは「おまけ」と書いていたにも関わらず、物ではない「割引」という回答が挙げられたのである。しかも、他の「物としてのおまけ」の回答と比べても上位にあがる票数なのである。世の中では映画におまけよりも割引を求める人の方が多いのかもしれない。それに応えているのが「夫婦50」や「レディースデイ」「映画の日」等だと考えられる。アンケート回答者はこれよりも更に金額を下げてほしいのだと思われるが、鑑賞券代に関しては映画業界全体の経済に関わることである為、本論では避ける。本論ではあくまで分子を上げる、おまけの可能性を追求していく。

第二節 おまけの可能性
 値ごろ感をより大きくする為、今後どのようなおまけが必要であるのか。まずはアンケート回答から人々の需要を把握していく。具体的な回答としては、上位にストラップ一一票、ペン九票、クリアファイル七票、フィギュア七票が挙がった。これらはいずれも実際に多く配布されているおまけである。その為、これらの一般的なおまけは現時点で観客を満足させられていると考えられる。また少数派の中には、缶バッチ、ポスター、キーホルダー等前者の上位回答と同様に実際におまけとなることが多い物が挙げられた。しかし前者とは違いいずれも一票しか得ることができなかったということは、これらは観客からあまり必要とされていないおまけなのかもしれない。その他、エコバック、シュシュ、名場面のセリフが聞ける機械、DVDの先行販売、映画作品とブランドとのコラボレーション品等も挙げられた。これらの回答も少数票ではあったが、アンケート結果から一般的なおまけでは無いと考えられるものである為、今後の新しいおまけの可能性に繋がるのではないかと思われる。もう一つ、具体的な回答の中で多くの票を得たものがある。それは、飲食物一五票である。一口で飲食物といっても、鑑賞中に飲食できるもの、作品中に登場する飲食物、駄菓子等色々な要望も寄せられた。まとめると一五票と一番の票を得たおまけであるが、アンケート結果から飲食物をもらった経験がある人がいないこともまた判明している。実際には飲食物のおまけは実在しているかもしれないが、アンケートからは需要と供給が合っていないことが読み取れる。従って、今後は飲食物のおまけを増やしていくことが値ごろ感を大きくする為に効果的であると考えられる。またこの回答の特徴として、女性の意見が多かったことにも注目したい。この点に注目すると、レディースデイにおまけとして飲食物が配られることが最も効果的であると考えられる。こうすることで、分母を下げ分子を上げるという最も値ごろ感を大きくする形となるのである。
 次に、具体的ではない回答を見ていく。始めに「映画に関するもの」という回答について。これには「作品内容に関するもの」「作品中に登場するもの」も含めた。この一見当たり前だと思われる回答は、一三票を得た。これは、今あるようなおまけで良いという意見が多いのか、もしくは実際には映画に関係無いようなおまけが多いことへの意見であるのか。票の多さに後者の様な考えが浮かんだが、映画と全く関係の無いおまけが配られることは非常に稀であるはずである為、現状のおまけに満足しているという表れなのだと考えられる。そして最も注目したいのが、「実用的である物、映画のおまけだと分からない物」という回答である。この回答は全ての回答の中でも一七票という一番の得票数であった。実用的である物という回答は、映画のおまけが子供向けのおもちゃ等が多いことから発生したと考えられる。またこの回答により、ストラップやペンが多数の票を得たことも納得できる。映画のおまけだと分からないものという回答は、実用的である物という回答に繋がると考えられる。いくらストラップやペン等実用的な物であったとしても、作品のロゴが目立つ様では実際には使いづらいということである。ストラップはおまけとして多く配られているが、映画のおまけのストラップを実際に携帯電話につけている人は、私自身一人しか見たことがない。記念として保存している人は多いかもしれないが、人前で所持することで自分がその作品を観たと主張できる人は少ないのかもしれない。実用的ではなく映画のおまけだと分かるおまけでも、作品を強く気に入った人にとっては嬉しい物であるはずである。しかし、そこまで強く気に入った訳ではない、普通に作品を楽しんだ程度の人からすると不必要なものとなってしまいかねない。この現状がアンケート回答に表れたのだと考えられる。
 これらの回答を踏まえると、ストラップやペンは今後もおまけとして有効であると考えられる。ただし、映画のロゴ等がさりげない程度になると、より多くの人に喜ばれると思われる。そして最も今後を期待したいおまけは、飲食物である。これはまず需要が他のおまけと比べても高い。またその場で食べることも可能である為、荷物にならない。そして「実用的である物、映画のおまけだと分からない物」にも当てはまる。劇場で配布されることを考えると、音の出ない物、匂いの強くないもの、保存のきくものと条件は厳しいかもしれない。しかし缶ジュースや飴等条件に当てはまる物はいくらでもあるし、館内の店舗にて飲食物を配布することも可能であると考えられる。「映画オリジナルドリンクを飲みながら作品を楽しもう!」「作品登場のあのクッキーを来場者の方にもお配りします!」等の宣伝が多くなる日が来るかもしれない。

まとめ
 今回、映画のおまけについて調べていくことで、日本の文化の一端を知ることができた。おまけにストラップが多いことから、携帯電話の普及率の高さがわかる。物ではなくデータのおまけが誕生したことから、日本の技術が進歩してきたことがわかる。映画のおまけにコスプレが関わったことから、現代日本のおまけ文化の広がりがわかる。映画のおまけからは、その時々の日本を見ることができるのである。
 また根底には、「日本人はおまけが好き」という傾向があることもわかった。興行収入の為におまけは日々工夫されるが、実際におまけが効果を上げているとは限らない。そして人々は現状のおまけに十分に満足しているとは言えない。しかし、おまけをもらうこと自体は嫌ではないのである。最後に、もう一つのアンケート結果を紹介する。「映画に関わらずおまけをもらうことは嬉しいか?」という質問に対し、男子学生六九人中六三人、女子学生一五七人中一四一人がYESと回答した。もちろん日本人全員がおまけが好きとは限らないが、九割という非常に高い割合で日本人はおまけが好きなのである。また今回のアンケート全てにおいて、YESの割合に男女の差は殆ど出なかった。まさに「日本人はおまけが好き」なのである。
映画のおまけの歴史はまだ浅く、その可能性にはおまけである以上限界もある。しかし、おまけ自体の危険性は殆どない。従って、今後もあらゆる内容、方法、条件のおまけにどんどん挑戦していって欲しい。日本の文化を見ることができる映画のおまけ。その更なる変化と進化を遂げたおまけを見ていくことが、今後も楽しみである。


参考文献
・『おまけより割引してほしい:値ごろ感の経済心理学』、徳田賢二、筑摩書房、二〇〇六
・『僕は豆玩(おまけ)』、宮本順三、いんてる社、一九九一
・『グリコのおまけ型録』、酒井雅康、八重洲出版、二〇〇三
・『おまけとふろく大図鑑』、高橋洋二、株式会社平凡社、一九九九
・『入場者ヒストリー』、http://www.dora-movie.com/pre_history/index.html、
 アクセス日:二〇〇九年一二月七日
・『朝日新聞夕刊』、二〇〇九年12月四日