日本経営数学会案内

 

経営数学は、社会システム、社会科学、ビジネスやマネジメントにおける諸問題解決のための数理的アプローチを探求する学問領域である。これには、オペレーションズ・リサーチやマネジメント・サイエンス、そしてファイナンスやマーケティングにおける数理的アプローチを含み、さらには経営学の領域である経営戦略や経営組織などに見られる様々な現象の理解に対する数理的アプローチが含まれる。

経済学のための数学を経済数学とよべば、経営数学は経営学あるいはビジネスのための数学となり、社会科学系学部における基礎数学などとは区別されるかもしれない。しかし、日本経営数学会では、上記のように経営数学の領域を広く取り、これらの幅広い領域の研究を取り込む学会として存在している。

また、数理的な研究やビジネス上の数理的なアプローチの発展は著しい一方、学部学生とくに社会科学系の学部生の数学の基礎的素養に疑問が持たれ、数理的アプローチの教育に支障が出ている。本学会はこのような状況に危機感を持ち、われわれの定義する広い意味での経営数学教育のあり方や方法の研究にも重点を置いて活動している。

 

1.目的

 (1) 経営数学、すなわち数理的アプローチを用いて、企業経営、ひろくは社会システムの

諸問題にとって最適なあるいはより良い意思決定法を提供する。

 (2) 新しい経営数学、すなわち数理的アプローチを開発し、結果を検証する。

 (3) 経営戦略や経営組織などに見られる様々な現象を数理的に解明する。

 (4) 経営数学普及のための教育方法、教材等の開発。

 (5) 経済学・経営学、その他の社会科学、さらには数学、情報学などの自然科学分野との

融合。

 (6) その他

 

2.対象分野・適応領域

(1) 企業経営

  管理業務:人事,財務

  製造・販売:生産,在庫,販売,物流

(2) 経営組織,経営戦略

(3) サプライチェーン、M&A、交渉、契約

(4) 社会−通信、交通、都市、環境、エネルギー

(5) 情報処理

(6) その他

 

3.適応手法

 (1) OR/MS(数理計画法、待ち行列理論、シミュレーション、AHP,DEA)、

商業数学(金利、保険数理)、統計学、システムダイナミクス、他

 (2) ファイナンス、マーケティング

 (3) 意思決定論、ゲーム理論

 (4) その他

 

4.本学会の歴史

本学会の歴史は、第2次大戦後まもない1951(昭和26)年頃、佐々木道男・久武雅夫・佐藤信吉・越原久明・野沢孝之助などの諸氏によって組織された商業数学研究会にさかのぼる。その頃はまだコンピュータはおろか現在われわれが日常簡単な計算を行う電卓すらない時代であった。そのような時代において、金利計算を中心とするビジネス上の計算を実用に耐えうる精度において行うためには、まず時間をかけて金利表、数表を作成する必要があり、作られた数表を利用していかにビジネス計算を行うかが主として研究された。

1959(昭和34)年7月、上記の商業数学研究会のメンバーが発起人となり、全国的な商業数学の研究団体として現在の日本経営数学会の前身である日本商業数学会が創立された。本会はこの時代から日本経済学会連合、日本学術会議に加盟する学会として学会誌の刊行、全国大会の開催を主軸に研究活動を続けているのである。

その後、電卓の普及とコンピュータの発展はめざましく、ビジネス上の計算そのものは研究領域としての重要性を持たなくなり、本会の研究活動の主軸はマネジメント、ビジネスにおける数理的アプローチへと拡大していくこととなった。その結果、オペレーションズ・リサーチないしマネジメント・サイエンスの領域と重なる部分が多くなり、Business Mathematicsという英文名はそのままで、1978(昭和53)6月に学会名を現在の日本経営数学会と改称することとなった。

現在では前述の目的、対象分野・適応領域で示すように、マネジメント、ビジネスに関連する領域における数理的アプローチばかりでなく、このような領域を学ぶための基礎教育である社会科学系学部生への基礎数学教育へも目を向けるようになり、特にインターネットやパソコンに代表される最先端の情報技術も踏まえた広い意味でのマネジメント、ビジネスに関連する数理的な教育方法についても研究領域として関心がもたれてくるようになっている。

 

5.研究活動

 全国研究大会:6月に2日間にわたって開催。

現在までに通算53回、日本経営数学会として33回開催。

 定例研究会:秋に定例の研究会を開催。ときには1泊の合宿形式でおこなわれる。

 研究グループ:随時研究グループが組織化され、研究活動が行える。

        近年は後述のような科研費学会プロジェクトとして組織されている。

 学会誌の刊行:審査付論文を中心とする学会誌が年2回発行される。

        現在32巻第12号まで刊行されている。

 科研費学会プロジェクト:

  平成17年〜18年度「社会的要請に応える経営数学のあり方と方法についての研究」

平成11年〜12年度「経営数学の体系化と共通教材開発の方法につての研究」

  平成13年〜14年度「新しい経営数学のあり方と文系学部における教育方法の研究」