ファジィ・ソフトサイエンス叢書1
t-ノルムのすべて


書名:t-ノルムのすべて(ファジィ・ソフトサイエンス叢書1)
著者:中島信之(富山大学名誉教授(元富山大学経済学部経営学科教授))
編集:日本ファジィ学会ソフトサイエンス研究部会
発行所:株式会社 三恵社
定価:2500(2381+税)
ISBN4-88361-039-X


内容紹介(「まえがき」より)

t-ノルム,t-コノルムは現在ファジィ理論において,おもに集合演算,論理演算の拡張として大きな役割を果たし,理論構築の点で欠かせない存在になっている.

しばらく前に,t-ノルム,t-コノルムについて勉強するはめに陥った.ことの起こりは,あるシンポジウムでクリーネ論理代数について発表したところ,「t-ノルムに基づくファジィ論理をどう考えるか」という意味の質問を受けた.このときはt-ノルムについて何も知らなかったので,満足な答えはできなかった.それでは・・・というわけで,t-ノルムに関する文献を漁り読み始めた.文献数が30編を越えたあたりで「読むべき文献が多くて困ります」なんて愚痴をある人にこぼしたことを思い出す.

とにかく手当たり次第読んだ(り,眺めたりした)文献を取り急ぎ「通覧」(中島[1])としてまとめた.まとめることを急ぐ事情もあり,あらためて振り返ってみると,不満の残るところが多い.

とはいうものの,こういう「通覧」のようなものがこれまでほとんどなかったからでもあろうが,手っ取り早くt-ノルムについて知ろうとするには簡便でよいとも聞いた.そういう話を聞き,つらつら考えてみるに,t-ノルムについて勉強しようとする(特に若い)人たちを---ちょうど富士登山で五合目あたりまでバスで行くように---ある標高まで案内してくれる書があってもよいのではないかという気がしてきた.t-ノルム,t-コノルムについて書かれた専門書は,最近何冊か出たようだが,残念ながら日本語で著された書は(これまでのところは)ない.

そうこうするうち,99年の9月から1年間,上記のシンポジウムでの質問者であるTürksen教授(トロント大学・カナダ)の研究室の一隅に席を借り勉強する機会に恵まれた.幸い時間は十分にあったので,この時点ではどこから出版するというあてもないままに,とりあえずまとめておくことにした.

「通覧」はおおざっぱな文献の位置づけだけを考えたので,ごくごく粗っぽいスケッチに終わった.また思い違いや記述の誤りも多かった.そこで本書では,数学的にきちんとした記述を心がけた.定義や基本的な性質なども,できるかぎり原論文・原書にあたって,書くよう努めた.応用面では,応用されている分野の定義や定理なども紙面の許す範囲で解説するようにした.

用語・記法などは統一をはかるよう心がけたが,読者諸氏が原論文にあたられることも考慮して,原論文の用語・記法なども可能なかぎりそのままに記述した.

序章でt-ノルム理解に必要な集合演算・論理演算の基本的な事項を説明した.第1章から第5章までをt-ノルムの定義とその性質の解説にあて,第6章でt-ノルムの新たな展開を,第7章で補整演算子と統合関数を紹介した.第8章以降は応用編とした.第8章は応用の全般を解説し,第9章以降で個々の解説をした.

付章でt-ノルムの歴史を振り返ってみた.これは通覧の歴史に加筆修正したものである.付章の最後に簡単な年表をつけておいた.また第2回ファジィ理論とその応用に関する国際ワークショップ」で提起された未解決問題の訳を付録として加えた.

なお参考文献は,各章ごとに,その章で参考にしたもの(t-ノルム関連でないものも含む)をあげ,t-ノルムに関連する全文献を巻末にまとめた.

本書をまとめるにあたり,文献の蒐集に関して,多くの方にお世話になった.Klementの(未発表段階での)論文やSugenoの学位論文(74年)のコピーをいただいた室伏先生(東京工大),Klementの(国際会議での講演)論文のコピーを送っていただいた向殿先生(明治大)に感謝する.Hamacher(78年)の学位論文を検索し,国内にはコピーがないことを教えていただいた河口先生(北大),その在処に関する情報を知らせていただいた中村先生(長岡技大),ならびにコピーをお送りいただいたてH.-J. Zimmermann教授に感謝する.廣田先生,菅野先生に感謝する.

t-ノルム探索のきっかけを与えていただいたTürksen教授に感謝する.本書をまとめるあたって,教授の研究室にいた1年間はじつにありがたかった.日本にいてはおそらく接する機会のなかった雑誌を読むことができ,視野が広がるのを感じた.それに何よりも研究室の雰囲気が私に去りがたい思いをさせた.教授と研究室の学生諸氏に深甚の感謝の意を表する.

なお,当初,出版の見込みはなかったと書いたが,日本ファジィ学会ソフトサイエンス研究会の叢書の1冊として上梓される幸いを得た.ありがたく思う.

最後に,書きなおし見なおすたびに大小さまざまな誤りを発見した.そのことから推し量ると,まだまだ間違いや思い違いがあると思う.今後とも諸賢にご叱正をいただき,できるかぎり誤りを正していきたい.よろしくお願いする所存である.

参考文献
[1] 中島信之, t-ノルム,t-コノルム通覧(1)--概説と歴史, (2)--応用,日本ファジィ学会誌, 11, 561-576, 734-744, 1999
[2] 中島信之, t-ノルム,t-コノルム通覧(3)--補遺,日本ファジィ学会誌, 13, 155-171, 2001

目次

まえがき

第I部 t-ノルムの理論
序章 集合演算と論理演算
第1章 t-ノルム,t-コノルム
第2章 t-ノルムの性質
第3章 t-ノルムの数学(1) 表現
第4章 t-ノルムの数学(2) 積・和・補
第5章 t-ノルムの数学(3) その他の数学
第6章 新しいt-ノルムたち
第7章 t-ノルムとt-コノルムの間

第II部 t-ノルムの応用
第8章 ファジィ理論とt-ノルム
第9章 ファジィ位相
第10章 ファジィ代数学
第11章 ファジィ測度・積分
第12章 ファジィ数とファジィ区間
第13章 ファジィ関係とファジィ分割
 その1 ファジィ同値関係ファジィ分割
 その2 ファジィ選好関係とファジィ関係方程式
第14章 ファジィ`測度論'
第15章 ファジィ論理

付録
付章1 t-ノルム外史
付章2 t-ノルムに関する14の問題
t-ノルム略年表と関連地図
参考文献

全231ページ,288件の参考文献目録付き

入手方法

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高萩より,転送いたします.
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