1998年度
「電算機入門」履修者へ 授業内容の確認
1998.7.15 今日は最後であるが、これまでの回帰分析の説明の中でもれた大事な点について補足した。最初に、タイムラグを伴う回帰分析を説明した。たとえば、消費を所得で回帰する時に、同時期の所得が消費に影響を与えることはもちろんであるが、消費は習慣性の影響が大きく、今期のみならず、前期までの所得の習慣の影響を多く受けることになる。 Ct = a + b1 Yt + b2 Yt-1 + b3 Yt-2 ..... 例を挙げれば、リストラ前の高い給与水準の影響がリストラ後の消費水準に影響を与えることは必至である。ただこうした分析の問題点は、説明変数の間で独立性が保てず多重共線性の問題が発生することである。 次に、非線型の関数の場合の回帰についてである。 例えば、Y = A K (1-a)L(a) の場合についていえば、この両辺を対数変換すれば非線型が、次のような線形に変わる。 log Y = log A + (1-a)log K + a log L そしてこの時重要な点はパラメーターが弾性値となることである。従って、1パーセントの変化がその変数の何パーセントの変化を生ずるかということが計測できる。 その後試験に移った。 授業全体に対する感想をBBSもしくはメールで送ること。 1998.7.8
Y=C+I+G+Ex-Im
1998.7.1
1998.6.23
宿題
1998.6.17 最初、前回理解の及ばなかった学生が多かったため、再度回帰分析の意義、回帰直線の導出の仕方、分散、回帰の周りの分散、決定係数の理解を進めた。 教科書の例で言えば、
消費の分散=35.4 回帰の周りの分散=5.99 決定係数=(35.4 - 5.99)/ 35.4 = 0.831 Y = 0.961 + 0.8013 X さらに、家族数という新しい情報を入れ、
Y = - 0.5876 + 0.6458 X + 1.5159 Z 回帰の周りの分散 = 2.716 決定係数 = 0.923 となり、新しい情報を加えるたびに分散(平均的な誤りの程度)は減少し、つれて決定係数が1に近づくことがわかる。 その後、昨年行ったいくつかの回帰分析の具体例を示し、その重要性と有用性を理解した。 宿題 再来週までに、小田急線沿線の家賃相場を説明する回帰モデルを作ること。その際、家賃を説明する変数として、新宿からの距離(最寄りの駅の数)、部屋の大きさ、築年数、駅からの距離、急行停車駅であるかどうか、風呂とトイレが別であるかどうか、風呂の追炊きが出来るかどうか、ガスが使えるかどうか、などを入れること。資料としては、「週間賃貸住宅情報」などの生のデータを最低100件ほど、均等に集めること。
1998.6.10 今日から、回帰分析に入った。回帰分析は、経済学のみならず、すべての科学の分野で広く使われている基本的な分析方法である。これを理解するためには、統計学、数学が必要であるが、この授業では受講者の素養を考え、出来るだけ易しくし、特に大事なポイントに的を絞って説明したい。最初に、基本統計値の説明から入った。 分散
すなわち、個々のデータから平均を引いた偏差の二乗の和の平均である。これは、分布の散らばり方を表現する。 標準偏差
これらの基本統計値の理解のために、いわゆる偏差値を計算してみた。 偏差値 = この後、所得と消費のデータを基に、散布図を書く。そこでは右上がりの関係、すなわち所得が増えれば消費が増えるという関係が読み取れる。そこで、こうしたデータ群を代表するにふさわしい直線を科学的に引く方法が、回帰分析である。その方法としては、個々のデータからその直線上におろした距離(直線では現わしきれない誤差ともいえるもの)の二乗の和(S)を最小にすることとする。 S = この回帰直線の係数bは、いわゆる限界消費性向に当たり、これにより様々な経済政策上の提言が行われうるのであり、また、新たなFact Findingの有力な手段となる。 Excel上の回帰分析ツールを使い、これらの係数を求める。そこで得られる様々な統計値のうちで、決定係数について説明した。
これが意味するところは、情報のない場合の誤差が、所得という新しい情報が入ったときにどの程度減少するかを現わしたものである。これらのことは、なかなか一度では理解しにくいようなので、再度次週に説明することとする。 宿題 先週、十分に出来ていなかったGDPのグラフを打ち出し、そこに出来るだけ詳しい経済事象を書き込み、提出すること。 1998.6.3 最初に、専修大学経済学部の2年から3年に進級する時点における留年率の高さ(14%)を分析し、それが1年次にほとんど学校から離れてしまうことによるものであることを説明した。その原因は、@大学に入ることが目的であったため、入ってからの目標を失った、A高校とは違う各自の自主的な勉学態度が理解されていない、B遊び、アルバイト、サークル活動にのめり込んでしまった、C授業がつまらなく感じた、E希望大学、学部でなかった、F長い坂を敬遠するなどであろう。米国の例では、このようなケースでは退学になるのが一般的である。なぜならば、卒業要件は単位数だけでなく、成績も多いに関係するからである。例え単位を取得しても、平均して「良」を維持しないと退学になる。一つの「不可」は一つの「優」でカバーしなければならず、しかもその「優」は、日本とは違い、トップ10%程度にしか与えられない。こうして考えてみると、米国の基準に沿えば、おそらく半分以上の専修の学生は1年以内に退学になってしまうであろう。留年はそれによって、そのまま退学する人もいるなどその後の大学生活、就職に大きく影響するものである。 本題に入って、宿題を検討した。 実質GDPの各要素を日経NEEDSから取り込み以下の計算を行った。 前年比残念ながら、提出された宿題の中で、正しく寄与度まで計算できた人は、わずかであった。 次に、ケインズの投資乗数の概念を表計算で確認することを行った。 投資の純増加分は、その1/s倍だけの所得増加を生ずるが(△ Y= 1/s △ I、あるいは△ Y= 1/(1−c) △ Iここで、sは限界貯蓄性向、cは限界消費性向)、それを確認するために次のような例を考えた。
△ 50 = 1/0.2 * △ 10最初の投資増10がまず、所得増になり、その80%が消費増になる。それが、再び所得増になる過程を繰り返し計算し、波及効果を合計すると、ほぼ50になる。 問題は、発展途上国のケースのように、この無限回繰り返す過程が、早い段階で消滅することが多く、そのための市場、経済システムの整備が必要となる。 その後、恒久減税の効果を見るために、税を取り入れた次のモデルを考えた。
Yd = (1−t)* Y、Ydは可処分所得 Y= 1/(1−c) *(1−t)△ Iこれらのモデルを使えば、公共投資の増加(△ Iの増加)、恒久減税(tの低下)、消費の促進(cの上昇)の所得増の効果が測定可能となる。
宿題 実質GDPデータの対前年比のグラフ上に、主要な経済事象を図形ツールを使って書き込み、私あてにメールで送付すること。授業の感想をBBSに載せること。
1998.5.27 今日から、実際の経済分析に入るが、その前に勉強の姿勢について述べた。 掲載されているプロフィールを読むと、高校時代に体を動かして部活に燃えていた人が多く見られるが、大学に入るとそうした充実感に乏しいと感ずる人が大半であることがわかる。高校における部活では、体を動かすというわかりやすく、比較的容易に充実しやすいものであったが、大学では知的なものに関心を持ち、論理的な分析を行い、頭で汗をかくことの喜びを味わって欲しい。これはそれほど簡単ではない。 そのためには、自分を縛る「自分の好き嫌い」だけで、短絡的に物事を判断し、自分が関心あるものにしか関心を持たないという姿勢を考え直すことが必要である。自分の世界を広げ、多くの出来事、人々に関心を持つことが知的な充実の始まりである。 今日のテーマ GDPおよび、その構成要素のデータを取り出し、前年比、寄与度を計算し、グラフ化する。 最初に、経済企画庁発表の以下の文章を読んだ。
平成8年度国民経済計算のポイント 平成9年12月16日 経済研究所
1.経済成長率
(実質成長率は3.2%増、3年連続の名実逆転)
(デフレーターは3年連続して下落)
この文章に出てくる、成長率、名目、実質、デフレーター、寄与度の意味を理解するために実際にGDPの構成要素を検討した。 GDP=民間最終消費+政府最終消費+総固定資本形成+在庫増加+財、サービスの輸出−財、サービスの輸入 大型コンピューターから、データを取り込み上の式が正しいことを確認。 実質=名目/デフレーター、 伸び率=(本年ー前年)/前年*100 寄与度=前年の構成比*伸び率 の関係を理解した上で、GDPのデータを加工処理し、グラフ化を行った。 次に、授業中の例を挙げて、寄与度計算を再説しよう。 消費の寄与度10%は、前年比14.3%*構成比(昨年)0.7 10 = 14.3 * 0.7 同じように、投資の寄与度10%は、前年比33.3%*構成比(昨年)0.3 10 = 33.3 * 0.3 合計の伸び率20% = 消費の寄与度10% + 投資の寄与度10% ここで注意したいことは、前年比の計算では、相対位置指定で良いが、構成比の計算では列は絶対番地指定となる。
名目GDPの対前年比伸び率、寄与度を計算し、メールで送ること。 今日の授業の感想をBBSに載せること。
1998.5.20 最初に、来年度の就職状況について、実際に活動中の4年生から得た情報を説明した。労働市場がタイトになる中で、企業は良い人材をじっくり選別する態度をとっている。名の知れた企業では平均10倍から100倍程度の競争があり、何回かの面接を経てほんのわずかな人数を採用する。1次面接では、サークルだけしかしてきていない学生も何とかとおることが出来ても、その後の面接で勉学面で聞かれると、マニュアルどおりの答えでは、成功しない。答えられる中身がないと説得できるものではない。自分の表現力、論理的な分析、応答姿勢が見られる。 今日の授業の目的は、データの収集方法である。最初に、次の3つのインターネットのサイトからデータを取り込んだ。 http://www.stat.go.jp (総理府統計局) http://www.epa.go.jp (経済企画庁) http://www.boj.or.jp (日本銀行) これらのサイトでは、エクセルのフォーマットでデータが提供されていることが多い。 次に、大型コンピューターとの間の捜査方法と概念を説明後、日経NEEDSデータへのアクセスを試みた。 取り込方をここにもう一度説明する。 @Communinetの中のM680Hを起動させる。user idとpasswordを入力。 A>>が出たら、NEEDS と入力しenter keyを押す(テンキーの右のキー) B以下、メニュー形式を選択し、目的のデータまでたどり着く。 Cデータの形式、データの始まりと終わりの時期を確認する。 D選びたいデータを”S”と入力して、指定する。 Eenterを押す。 Fデータの取り込み画面で、MSDOS形式のフロッピー、データの種類(月、四半期、年など)、データの始まりと終わりの時期を指定する。 Genterを押すと、@HENKAN.DATAにデータが保存されたと表示される。 Hこのプログラムを一度終了し、再度M680Hを起動させる。user idとpasswordを入力。 I>>が出たら、IFITと入力。 JHost−>Terminal(1)、データ名として、@HENKAN.DATA、フロッピーのファイル名として、A:¥DATA(ここは好きな名前を入力) Kenterを押すと、データが大型コンピュータから、フロッピーに転送され、transmissionの完了通知が出る。 LExcelを起動し、フロッピー上のファイル(ここでは”DATA”)を開く。そのさい、ウイザードの中で、カンマ区切りを指定する。 宿題 景気動向指数の、先行、一致、遅行系列をエクセルに取り込み、授業の感想とともに私にメールで送ること。
1998.5.13 最初に、宿題の答えを解説した後で、今日の2コマで、表計算ソフトの大方の説明を行う旨を述べた。そのため、スピードは速くなるが、教科書にそったものであり、後で復習が必要であること、そして、これからの授業の中で、実際に何度も繰り返し行うので、心配ないことを説明した。 主な作業 @1994年から1997年の首都圏の大学の志願者数の推移の表を作成 A合計を計算する中で、式のあらわし方、関数の使い方(ここではsum, average)を学ぶ Bデータのグラフ化、棒グラフ、円グラフ、これに関連して、オブジェクトのコンセプトを説明 Cワープロへエクセルのデータを転送、貼り付ける作業 D売上高の表を作成して、相対番地、絶対番地、さらにIF関数の説明 Eこれらの他、パーセンテージ、3桁ごとの区切り、表上の表現と内容ボックスとの違いなど。 宿題 @教科書の合否判定の例題を解き、メールで送ること A授業の感想を載せること
1998.5.6 最初に、インターネットによる海外へのアクセスを試みた。そのための、yahooによるサイト検索を試みた。 @whitehouseのサイトに行き、最新の報道発表(press release)を読む。(www.whitehouse.gov) Aハーバード大学に行き、経済学部のコース一覧の中で、国際経済の講義を探す。(www.harvard.edu) B通信政策に関する資料を一つ探す。(governmentのセクションから) Cスタンフォード大学の、経済学部のコース資料を探す。(www.stanford.edu) 多くの学生が、英語力の不足のため、十分にサイトを探せなかった。ネット上の情報のおそらく9割以上は英語であると考えられるので、日常的に英語力のアップを図りながら、果敢にチャレンジして欲しい。また、ネットを使うことで、自然に慣れてくるという効果も期待できよう。 次に、表計算言語の説明を行った。 簡単に、表計算の歴史を得なかで、世界最初の表計算言語「visicalc」と日本最初の表計算言語「PIPS」についてそのいきさつを説明。PIPSについては、私が日本銀行にいたころに自分の業務をより円滑にすべく自分のために開発したものであり、その基本的な考えは以下の通りである。 @多くの「仕事」は「表」で表現できること。 多くのデータ処理の「仕事」は、「表」から「表」を作り出すこと。 従って、「表」の様々な加工処理が出来れば、それはすなわち、「仕事」をしたことになること。 Aそれまでの、BASIC,FORTRAN,COBOLなどの高級言語と呼ばれる言語を使って仕事のためにプログラムを作ることは、プログラムに対する適性から見ても一般的には難しいこと。 B高級言語の、命令語レベルは日常の思考レベルから見て、計算機よりであり、知的レベルに比べるとかなりの差がある。このため、PIPSでは日常的な知的レベルで命令語をつくりあげた。 開発の経緯や、より詳しい内容、当時のパーソナルコンピューターの状況などについては、「PIPS誕生記」(日経「サイエンス」、1982)などを参照して欲しい。(なお、これらについて、現時点から見た評価も合わせた形で、本の形で公表したいと考えている) 表計算言語の基本的な考えを説明後、すぐにEXCELをたちあげ、実際に簡単な例を試みた。 以下は、宿題となった。 身長が140cmから200cmまでの人の、標準体重を計算し、その結果を私あてのメールに添付すること。 標準体重の式は、(身長ー100)*0.9である。 1998.4.22 現在の日本が直面している課題は多いが、この授業で関連するものに「情報化」、「国際化」の後れがある。情報化については、先進国の中で情報処理教育は際立って遅れている。文部省は中学校、高等学校におけるコンピュータの設置を義務づけたが、実際には大学入試の科目になっていないため履修する学生は少ない。そのため、大学入学時においては先進国の学生と比べて大きな差が出ている。また、国際化については、一つの目安である英語力でみても、この数年は低下を示すデータが現れている。(例えば、TOEFLのスコアはこのところ毎年低下し、今やアジアの中でも下位に位置している) この授業では、情報化はもちろんのこと、国際化の遅れについても関心を持ってほしい。そのために、一つのツールとして、インターネットを利用したいと考えている。実際、国際化の点で言えば、ネット上の情報の大半は英語によるため、日頃から積極的に海外のネットにアクセスして欲しい。 授業におけるコミュニケーションを早くとりたいため、少し駆け足であったがインターネットの設定を行い、実際に最初のメールを送付した。一部送付できない人がいたが、そのほとんどが設定のミスであった。 netscape navigatorのメール設定(主要ポイント) @メールのフォルダーの作成と設定 h:\ユーザーID\netscape\mail Aoptionのmail & preferencesの設定 smtp server : smtp.isc.senshu-u.ac.jp pop server : pop3.isc.senshu-u.ac.jp Identity の設定 ---Email address : ユーザーID@isc.senshu-u.ac.jp 設定後、宿題でFDに保存しておいたファイル(先週の項を参考)をメールに添付して私あてに送付した。これについては、各自のプロフィールとして掲載。 宿題
最初に、授業履修者の確定をした。先に選ばれた57名の中で、最初の授業に現れなかった13人に変えて、キャンセル待ちなどの希望者の履修を認めた。次に、この授業について、その目的を大学での勉強との関係で説明をした。以下は、その概略である。
以下は授業の要点
来週までの宿題
この5点を書き、FDへ保存しておくこと。来週は、そのデータをインターネット上に載せることとする。
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