巻上 卓也

今日は。
私はこのゼミの元ゼミ長で、現在四年生の(マキガミ タクヤ)といいます。

最近の主な趣味は、町を徘徊すること(レコード屋と中古楽器屋・本屋まわり含む)です。
町をうろついていると、普段見過ごしている様々なものが見えてきてよいです。
またもう一つの趣味である音楽については 私のホームページ で(と思っていますが現在製作中です。)

就職活動を終えてみて、ゼミは単に学ぶ場というだけでなく、自分の人生の一部において、重要な経験や益を与えてくれたものだと思います。
これから社会にでても、これらは役に立つと思います。

卒論においては、三年間のゼミや進級論文を通しての集大成として、「産業の情報化と日本経済」というテーマで研究したいと思っています。

私へのEメールは mackie@wellmet.or.jp e050617@isc.senshu-u.ac.jp までどうぞ。
ではさようなら。

 3年次進級論文

情報ネットワーク化と日本経済

 E−O5−0617E

      巻上 卓也

情報ネットワーク化の進展と日本経済

目次

 序章

 第一章 情報ネットワーク化の進展が日本経済に与える影響

  第一節 産業に与える影響

  第二節 産業構造に与える影響

 第二章 情報ネットワーク化は日本経済の問題を解決するか

 第一節 規制緩和との関連

  第二節 空洞化との関連

第三章 情報ネットワーク化促進に伴う問題

  第一節 セキュリティーに関する問題

  第二節 規制の問題

終章 日本経済およびネットワーク化への展望


序章

現在、日本経済は様々な問題に直面している。例を挙げるならば、長期におよぶ景気低迷や産業の空洞化はなどがある。これらは直接的な原因は違っていても、日本経済における構造的な問題が根底にあるという点においては、共通である。

 これら構造的問題としては、数々の規制や日本型経営システムの弊害があげられる。

 一方、急激な技術革新などにより、情報のネットワーク化はいたるところで進んでいる。

企業におけるLANやインターネットがそうであろう。

 これらが進んでいくことは日本経済にとってどのような影響を与え変化していくのだろうか。そしてそれは日本の構造的問題を果たして解決するものなのだろうか。これらについて考えていきたい。

 そこで、これから以下のような流れに沿って進めていく。まず第1章で現状分析として、産業に与える影響を考える。そして二章では日本経済の構造的問題との関連を見る。そして最後に、これからの情報ネットワークと日本経済についての展望を考える。

一章 情報ネットワーク化の進展が日本経済に与える影響

 まず始めに現状分析を兼ね、現在行われている情報ネットワーク化について調べ、それについての考察をしていきたい。まず産業の各分野におけるネットワーク化について述べていきたい。

第一節 各分野におけるネットワーク化

製造業におけるネットワーク化の動向

 製造業においてはFA化(Factory Automation:製造システムのオートメーション)、さらには、CIM化(Computer Integrated Manufacturing:製造部門のみならず設計、開発、生産管理、販売管理等経営全体に渡る総合ネットワーク化)がなされている。とくにCIM化にいたっては、CAD/CAMによる設計の電子化によって、実質上国内において研究開発及び設計しなければならないメリットは減り、海外への研究開発や設計部門の移転が行われる企業も出てきた。そして流通・物流部門における受発注ネットワーク形成、新物流システムの形成により、在庫圧縮等経営の合理化を進めながら、リードタイムの短縮、多品種少量生産、さらには、生産・販売一体化等の市場対応型の生産体制の形成が目指されている。それに伴い、部品の調達などにもネットワークが活用され、系列取り引き以外の取り引きが生まれていくだろう。

流通業における情報ネットワーク化

 流通業においては、EOS(Electronic Ordering System)、POS(Point of sales:販売時点情報管理システム)、カード等の活用により、商品企画、品揃え等の商品管理力、顧客ニーズへの対応力の強化が図られている。

 現在の情報ネットワーク化の形態としては、(a)メーカー(川上)主導型、(b)卸・商社(川中)主導型、(c)小売(川下)主導型、(d)物流業者主導型に大別され、現在各々独自に構築されているが、今後同業種のメーカー・卸間の業界ネットワーク化が進み、このような共同ネットワークと、メーカー主導、量販店等の小売り主導のネットワークが接続されていくものと考えられる。特にコンビニエンスストアに代表されるような小売りのチェーンにおけるネットワークが卸やメーカーのネットワークとつながり、影響を与えていくようなシステムが主流となっていくだろう。

 今後、製造から卸、小売店まで、各企業が垂直ネットワークを活用して消費者情報等の情報を共有し、一体的な市場ニーズ主導型商品生産・供給等が形成される他、ホームショッピンッグ等新たな流通システムの創造、クイック・レスポンス性が要求される流通経路の簡素化等が進展するとともに、決済事務の効率化を契機として、商流システムと資金流システムの一体化が進み流通ネットワークが金融機能をも有するようになるだろう。

金融業における情報ネットワーク化

 銀行業・証券業においては、金融の自由化、国際化に対応するため業務システムの見直し・充実に加え、顧客情報、経営情報、各種金融情報を提供する「情報系」、ファームバンキング等外部ネットワークと接続していく「外部性」、海外支店との情報ネットワークである「国際系」等の分野でのシステム化・機能充実を目指す第三次オンライン化が展開されている。

 また、クレジット業においては、クレジットカードの活用を中心に他業種との業務提携進められている。

 今後、情報通信ネットワークの活用によりエレクトリックマネー化が加速され、資金移動が飛躍的に活発化していくとともに、金融機関相互間のみならず、流通部門等非金融機関との間においても金融業務の競合が生じていくであろう。

 こうしたエレクトロニック・マネー化の進展に伴い、決済事務等金融業務が情報通信サービスとなってくる上、金融情報提供力の強化、情報化に伴って蓄積されたソフト開発力・情報通信コンサルティング力を活用した情報通信分野での業務量が増加し、金融機関の情報通信産業化が進展していくだろう。。

 また、カードを活用した他企業、他業界との業務提携により、新たな企業グループ化が展開されるとともに、カードの高機能化(キャッシング機能や多様な付帯サービス機能が一体化)が進み、本格的なカード社会化が加速されてきている。

サービス業における情報ネットワーク化

 サービス業全般において、業務の主要機能の効率化、高付加価値化を目的とした企業内での情報通信活用が展開されているが、旅行代理店等情報提供サービス型の業種を中心に、情報提供元とのネットワーク化はまた、顧客等サービス提供先とのネットワーク化への取り組みが進んでいる。

 また、本部−チェーン店間等組織内部においてネットワーク化によるPOSデータ分析情報等の経営情報の共有化、衛生塾等映像メディアを利用し商品そのものを伝送する形で、経営の面的拡大を図るものが見られる。

情報通信の活用により、サービス業に多数の新業態、新業種のビジネスを創出していくとともに、サービス商品の均一的提供体制を構築し、サービス産業の高品質化・高付加価値化を促進する。

 また情報通信システムを活用した多様な情報提供事業者の出現に伴い、従来、商圏が営業店からの距離に制約されていたサービス商品が「足の長い商品」(広いエリアで取引関係が発生するようなマーケットエリアの広い商品をいう)と化し、市場の拡張・流通加速が招来されるとともに、各企業の商圏の重複・競合が激化し、サービス産業における競争環境が変化していく。

 以上のように産業の各分野ごとにおける情報ネットワークかは進んでいる。ここで重要となっているのは、これらにより、各産業のボーダーレス化が促進されてきているということだろう。情報のネットワーク化は、それぞれの分野がネットワークを活用することにより既存の他の分野へも足を踏み入れていかざるをえない状況を作り出してきているといえよう

第二節 産業構造に与える影響

 前節で述べたように情報ネットワークかは産業のボーダーレス化を生み出している。急激な情報ネットワーク化は産業構造にも影響を与えるだろう。

 そもそも、第一次、二次、三次というような産業の形態がどのような比率を占めていくかというクラークの考え方も個別産業の特性に基づいて分類することを目的とするものではなく、経済発展にともなう産業構造の変化を捕らえようとするものであったが、情報ネットワーク化が進むと、今までいわゆる3次産業とされてきたような情報分野は上記に挙げたように製造業にも及ぶこととなるし、三次産業においてもそれが本来指し示すサービス分野の情報化ネットワーク化により1次二次と結合され、ボーダーレス化が進んでいく。

 この事により、いわゆる三次産業が肥大化してゆき、次章における空洞化の問題とも関連していることであるが、サービス経済化への懸念が生まれてきている

第二章 情報ネットワーク化は日本経済の構造的問題を解決するか

 序章であげたように、前章のような日本経済に与えてきている影響というものは、果たして構造的問題にどのような関連を及ぼすのであろうか、この章ではそのことについて考えていきたい。

第一節 規制緩和との関連

 まず、ここであげる、情報ネットワーク化と規制との関連においては、これまでにあった規制を支えてきた根拠を陳腐化させるものとなるかということが重要なのであるといえよう。  

 そこでまず規制の根拠となっている経済根拠をあげる

1.マクロ的市場介入

 経済システムが不完全なものであり、それを安定させるためには、金融・財政    の両面からの政府介入が必要である。 

2.限界費用逓減産業

限界費用が逓減すれば、規模の大きい企業程コストが低下し、最終的にはただ一つの企業のみが残ることになる。残ったただ一つの企業は、必然的に独占企業となるので、独占の弊害をさけるために規制が必要となる。

3.情報の不完全性とサービス消費の瞬時性

 財・サービスの内容が複雑で、消費者がその適否を十分に判断できない場合には、何らかの規制によって品質や価格を保証することが必要である。 

4.過当競争

 多数の自由な企業が競合すれば、過当な競争になって、安全性等が脅かされる可能性がある。このような場合には、政府が企業の設備や参入を規制して、過当な競争を避けるべきである。

 以上のような規制の根拠となるものがある、ここで検証していくならば情報ネットワーク化がもたらすものと関連あることは3の点で大きいということができるであろう。3の項目についていうなら、情報ネットワークかが進むことは消費者にとって情報の不完全性を極力減らすことにつながる、この事により不必要な規制は取り払われることとなるだろう。

第二節 空洞化との関連

 

 現在日本経済において空洞化が叫ばれているが、情報ネットワーク化と空洞化との関連はいったいどうなのであろうか。

 まず空洞化をどう考えるかであるが、空洞化が発生することとは国際分業にいたる結果国内の既存産業、特に製造業が海外に流出したり、他のコストのやすい海外企業にとって変わられることとするならば、情報ネットワークかはその流れを促進することにもなる。

 そして国内に至っては、いわゆるサービス経済化が進むとしてそれを懸念する声がある。

 しかしそれは、大きな意味では日本企業にとっては利益を追求する手段であり、それが日本経済に悪影響を与えるかということとは区別する必要があるだろう。

 問題は雇用が確保されるかどうかということであるのであろうが、それでは日本はどうすればよいのだろうか、情報ネットワークかのメリットを生かすことで雇用は確保することは出来ると思われる。まず、情報化ネットワーク化により、新規参入のコストの削減が考えられる。そのため、ベンチャー企業などの設立でも取り引きコストの削減などにより様々な新しい企業が設立され、雇用が促進される。また系列外の取り引きが促進されることにより、能力のある企業は国内海外を問わず取り引きできるようになるであろう。

 これらのことのより、海外に進出した分の雇用の確保は出来るであろうし、また新規産業も生まれるであろう。

 まず空洞化やサービス経済といった言葉により恐れを抱かされるという点が大きいといえるが、この状況は別の意味では、今までの日本経済における構造的問題を解決することにもなる。

 これらの例を挙げるならまず、長期系列取引があげられる。これは。戦後日本においては重要な役目を担っていた。互いの信頼関係などのよって、情報ネットワーク化が進められ低なっかたじだいには、これらによって緻密な情報のやりとりができ、製品のクオリティーを上げることができた。しかし現在のような円高の時代にはそのメリットよりもコストの方が際だってしまった。情報ネットワーク化により、コストが低く生産できるところでも情報のやりとりは可能になり、日本の競争力の維持につながるであろう。

 このように、情報のネットワーク化は日本経済が、これまで成長するために築いたシステムがここにきていきずまりに直面している事態に変化をもたらす鍵となるといえる。

第三章 情報ネットワーク化促進に伴う問題点

 さて、前の章では情報ネットワーク化が日本経済に与える影響について考えてきたが、ここでは、解決すべき情報ネットワークかを阻害するような要因について考えていきたいと思う。

第一節 セキュリティーに関する問題

 情報ネットワーク化で一番の問題といえば、セキュリティーの問題が挙げられるであろう。

 コンピュータネットワーク上にある情報は、すべてそのネットワーク上につながれている端末から見ることが出来るというのが前提である。そのため秘密を守りたいものであっても他人から見えてしまう。そこで暗号化が必要となる。

 暗号化の技術によりほとんどの場合セキュリティーは守ることはできるであろうが、それを破る技術もまたすぐに開発されてしまう。このようなネットワークにおける犯罪出来行状法が盗まれた場合、企業の存続に関わる問題となりかねないし、金融システムのネットワーク化が進むにつれ、個人の金もいわゆる電子マネー化されたときに大問題となるであろう。

 この点については技術の進歩という点に頼るしかないのが現実である。

第2節 規制に関する問題

 また現在ある規制も情報ネットワーク化促進の妨げとなるであろう。現在ある情報ネットワークに関する規制には次のようなものがある

1.電気通信業における規制

(1)参入・退出の許認可制度

 第一種電気通信産業者の参入に際しては許可が必要であるが、その際、参入が需要にてらし適切なものであること、設備が著しく過剰とならないこと、経理的基礎及び技術的能力があることなどの許可の基準を定めている。しかしながら、これらの基準を満たしているか否かの判断を政府が下すことは困難であり、かなり裁量的要素が強くなるものと考えられる。さらに退出に関しても公共の利益が著しく阻害される場合を除き撤退の申請を許可することとなっている。この点に関しての完全な裁量権が企業側に与えられているとは考えにくい

(2)事業者の区分

 わが国の場合、独自の設備を有するか否かで規制の形態を変えており、第一種電気通信事業者にはより強い規制を課している。第一種電気通信産業は基本的に全国規模のサービスを展開しているものであるが、衛星系、地域系、移動体通信系と、そのサービスは多様である。しかも、市内通信以外についてはどれも複数の事業者が参入している状態である、したがって、自己の設備投資の有無によって規制の種類を分けることの意味は希薄である。

(3)料金規制

第一種通信事業においては、公正報酬規制に基づいて料金を設定することとなっている。公正報酬規制とは、サービスを提供するのに必要となったすべてのコストに一定の報酬率を上乗せして、料金収入ですべてのコストが賄えるように一単位あたりの料金を定める方式のことを言う。この方式では、適正報酬率との考え方から報酬率に上限が設定されている。したがって、報酬額を増加させるためには、レート・ベース(事業資産)そのものの額を上乗せすることによってしか、報酬額の増加がはかられないこととなる。そのため、不必要な投資が行われる可能性が高く、非効率的な経営に基づいたコストの増大が料金に転嫁されることとなる。また費用の積算に際してコストをサービスごとに振り分ける必要があるが、その根拠は希薄である場合が多い。したがって、被企業側が情報を操作し、コストが適切なサービスの料金に振り替えられない場合が多い。さらに、料金を認可するためには、郵政省はその料金が適切なものであるかの判断を行うために、膨大な資料を被規制企業に対して要求することとなり、被規制企業はせう明資料を作成するために多大な時間を費やして作業を行わなければいけなくなる。他方、政府としてもチェックを行うための職員を配置しなければならなくなり、双方にコストがかかる。

2.通信と放送の融合に関する規制

    

(1)日本電信電話株式会社法

 NTTは日本電信電話株式会社法により、放送事業に参加することができないということになっている。つまり、将来的にNTTにより光ファイバーケーブルが張り巡らされた場合、NTTのそれを放送事業に使うことはできない。

(2)放送事業から通信事業への参入規制

 放送事業から通信事業へ参入するには、CATV事業の許可とともに、第一種通信事業者の免許を取得する必要がある。つまり、CATV網を用いて電話業務を行うには、通信事業者と同じ免許を得なければならず、二重の手間が必要であると言える

(3)CATV事業に関する規制

CATVネットワークの整備に関しては、国道を空中で越えることは電線と電話線にしか許されていなっかったり、電話回線や水道管、ガス管等を集中して配備する共同溝に参加することができないなどの不利がある。このことにより、CATV業者の発展を阻害しているともいえよう。

 これら規制は、情報ネットワーク化の進歩のスピードにあわず、陳腐化してしまったことが原因となりその発展を妨げている。そして、強いては空洞化の解決策となりうる事柄を妨げているといえよう、これらを解決することがこれまでまでの日本の経済構造を変える重要な要因であることは間違いないであろう

終章 日本経済及び情報ネットワーク化への展望

 さて、ここまでをみてきて、最後に展望を述べていきたい。

 まず、情報ネットワーク化において大切なことは、電子化された情報は距離、時間が関係なくなるということであり、またそのことは、今まであったシステムを変える力となりうるということだろう。

 具体的な例でいうならば、個人にも及ぶインターネットに代表されるような情報ネットワーク化は、これまででは個人や小さな企業には出来なかったようなことを可能にする。ネットワークによる情報の発信や商品の販売や、ネットワークを通じたいわゆるアウトソーシングの中の一つとなることが、能力のあるものならば、これまでのように、大掛かりな経費などをかけずに出来るようになるのである。

 情報ネットワーク化がこれまで以上に進んでいくであろう。その結果もたらされることは、非常に大きい。

しかしここで重要な問題が再び浮かんでくる。それはまた規制の問題である。現在ではまだ、これらのことが現実にはそれほど広がっていないが、これからこのようなことがいずれ経済の大きな位置を占めるようになると、既得権益をもつものなどからの反発や、乱立などの懸念から新たな規制が設けられることも考えられよう。これらは絶対に避けなければならないことである。

 そして、情報ネットワーク化によってもたらされるであろう個人にも及ぶグローバル化の波を受け入れる素地を作っていかなくてはならない。

 これらのことによって日本経済の構造的問題を解決していくことができるであろう。

参考文献

 ネットワーク産業の展望  南部鶴彦 他 編

 規制緩和の経済学  加藤 雅

テレコミュニケーションの経済学  

経済白書 

通信・マルチメディアの仕組み  青柳 全

 CALSからECへ  築地達郎 

ゼミナール日本経済入門