農業経済論冬期休業提出レポート

提出日1998.1.12

E07-0808A宮澤

「市街地周辺の農地転用」の読後にまず感じたことは、「中途半端な市街地の形成は止めるべきである」ということであった。生活空間の適正な土地利用、人口や産業の都市への集中が進む中で、都市およびその周辺地域では、無秩序な開発などにより不良な市街地が形成され、あるいは職住の混在による環境の悪化、公共投資の効率の低下など、計画性を欠いた都市化が進行すると様々な問題が発生してくる。都市計画区域においては、このような問題を未然に防止し、都市の成長、発展を適正に誘導していくために、総合的な土地利用計画を策定し、これに基づく規制を行うとともに、都市計画事業の実施により人々が安全で快適な都市生活を営めるように、計画的な都市形成を図るべきであると感じた。

都市計画区域内での無秩序な市街化を抑制し、新しい開発地が適正な市街地としての水準を確保するように、開発行為について規制または誘導を行うべきである。未線引き都市計画区域や市街化区域については、開発面積や予定建築物に応じて、技術基準に適合した道路、公園、排水施設等を整備することにより良好な市街地環境の形成を図っていることは確かだが、一方、市街化についてはまだ問題が多く存在している。バブル崩壊後の東京や大阪のビルの谷間の空き地は異常であったが、かつての郊外地区に815階建ての集合住宅や近代的なレストラン、ショールーム等が一戸建ての家屋や畑の間に建設されるといったことも起きている。

論題のなかの「農地転用」とは、住宅、道路、公園等の用途に供することである。農地とは耕作の目的に供する土地であって、現に耕作されている土地のほかに休耕地、不耕作地も含み、登記簿の地目で区分するものではない。農地の持ち主は、転用や転用目的の所有権の移転を勝手にすることは出来ない。しかも、農業用の農地価格と宅地用の農地価格の間では、英国で25140倍、オランダで約25倍、日本で約1030倍とマルティプライヤーに大きな差があるのである。私が驚いたのは、あまりにも大きい各国の価格差である。これだけの差が何か影響を及ぼさないのであろうか。宅地用価格は特に英国では1980年から1990年にかけて510倍に急騰しマルティプライヤーは2035倍から100200倍に劇的に上昇し、そして日本では715倍から1545倍に顕著に上昇しているのに対して、オランダの場合は宅地価格は若干下がっているのに農業用地のそれは倍増しているため40倍から20倍に逆に低下しているのである。

農地を転用して市街地を拡張することは経済発展を語る上で当然のことである。第一次産業から第二次産業へと主軸産業が移行し、さらに第三次産業が盛んな現代において、農業人口は零細農家数の減少とともにさらなる減少の一途をたどっている。私は経済活動が活発化して都市が拡大し、周辺の農地が減少しているのも、自然な流れであると思う。だがここで、文頭にも述べた「市街地の中途半端な拡大」が問題になってくる。農地を侵食する市街地をただ漫然と増加していくのではなく、場所を集中していくことが重要であると思う。“市街化区域”と“市街化調整区域”の明確な区分付けを従来の5年毎よりも短期間で行い、市街地と農地をそれぞれ場所を集中させて効率的に機能させることが、経済成長が停滞し先行き不安な日本の市街地周辺の農地を活かすことのできる道ではないだろうか。