問題2 免疫の仕組みについて説明せよ。

解答

免疫とは簡単に言うと「自己以外(非自己)の高分子が体内に進入すると攻撃し、無毒化する生体防御」のことである。どのように防御するのか、また防御する細胞はどのように分類されるのか、免疫の仕組みを以下考察する。

始めに、免疫に関する細胞を九つに分類して以下示す。

1.T細胞(Tリンパ球):骨髄由来のT前駆細胞が胸腺に入り分化したリンパ球である。抗原刺激をうけてさらに分化すると、腫瘍細胞、ウィルス感染細胞などを傷害するTリンパ球(キラーT細胞、細胞傷害性T細胞)、免疫作用を助けるTリンパ球(ヘルパーT細胞)、免疫作用を促進するTリンパ球(サプレッサーT細胞)、遅延型アレルギーなどをおこすTリンパ球(DTHエフェクターT細胞)などによる。

2.B細胞(Bリンパ球):骨髄由来のリンパ球で、分化成熟して抗体産生細胞である形質細胞となる。このリンパ球は表面に免疫グロブリンをもっている。この表面免疫グロブリンはB細胞の抗原レセプター(受容体)である。B細胞は抗原提示細胞ともなる。

3.ナチュラルキラー細胞(NK細胞):正常な動物の体内に存在する細胞。大型リンパ球様の細胞。

NK細胞は抗原刺激がなくても、腫瘍細胞やウイルス感染細胞の細胞表面に発現しているある種の糖タンパクと反応して、これらの細胞と結合して細胞傷害性に働き、生体を防御する。NK細胞はインターフェロン、インターロイキン−2という物質によって活性が増強される。

4.K細胞:NK細胞と同様に腫瘍細胞やウイルス感染細胞を傷害するリンパ球をK細胞という。K細胞は抗体の存在下で標的細胞(攻撃目標となる抗原保有細胞)を特異的に破壊する。このような細胞傷害機能を抗体依存性細胞傷害という。K細胞とNK細胞は同一のリンパ球か、もしくは重複する細胞集団に属する細胞と考えられる。

5.マクロファージ:生体内に広く分布し、盛んな貪欲をいとなむ大型の単核細胞。骨髄の幹細胞から血液中に出た単球に由来する。抗原の処理、T細胞への抗原提示(抗原提示細胞)、リンパ球の増殖因子(インターロイキン−1;IL1)産生、インターフェロン産生など多くの働きを持つ。

表面で、細胞に結合した抗体などと特異的に反応したのち 細胞をマクロファージ内に取り込み消化破壊する。

6.樹状突起:リンパ節や脾臓中によくみられる細胞である。表面に抗原を長期間保持し、抗体が体内に広がるのを防ぐ。免疫系で重要な機能性をもち、リンパ球に強い抗原提示をする機能をもった細胞(抗原提示細胞)である。

7.好中球:免疫学的には最近などの異物を貪食して殺菌し、感染防御に重要な役割をもつ抗原・抗体複合体も貪食する。

8.好酸球:免疫学的には種種の刺激で酵素を細胞外に放出する。抗原抗体複合体を貪食する。

9.ナル細胞(ヌル細胞):細胞表面にTリンパ球やBリンパ球の特徴を持たない細胞を指す。きわめてわずかに存在。この中にはNK細胞、K細胞、などが含まれる。

これらの細胞を一括して免疫担当細胞という。

免疫担当細胞をふまえた上で、「抗原」、「抗体」を定義すると、「生体内に入れられた結果、抗体や感作リンパ球をつくるきっかけを与え、またつくられた抗体、および感作リンパ球と特異的に反応する物質」、「産生を促した抗原と特異的に結合するタンパク」と定義できる。

免疫機構は機能的に体液生免疫(生体内に抗原性のある物質が入ると、抗原と特異的に反応する血清タンパク“免疫グロブリン”が合成される)と、細胞性免疫(抗原と特異的に反応するリンパ球“感作リンパ球”が産生される)の二つに分類される。それぞれ挙げていく。

細胞性免疫とは、抗原刺激を受け感作状態にあるリンパ球が抗原と接触することによって引き起こされる特異的な生態反応の呼称である。抗原が生態に入ると、マクロファージが取り込まれる。マクロファージが取り込んだ抗原を処理し、細胞自身のタンパク質で抗原提示細胞に存在するMHC(主要組織連合抗原)クラスU抗原とともに細胞表面に提示する。前T細胞の表面に存在するT細胞レセプターは、マクロファージ細胞表面に提示されたMHCクラスU抗原ぺプチド(複合体)と処理抗原を認識し、結合して活性化する。同時にマクロファージも活性化し、生物活性をもったサイトカイン(高分子物質、免疫細胞を増殖・分化)の一つであるインターロイキン−1(IL)を分泌する。このインターロイキン−1(IL)の作用を受けた前T細胞はさらに活性化し、ヘルパーT細胞となる。ヘルパーT細胞はインタロイキン−2を分泌し、前T細胞の分裂をさらに促進させる。

抗原情報を受け継いだ前T細胞のあるものは、分裂増殖を繰り返し、いくつかの機能を持った感作T細胞となる。種類としては、@DTHエフェクターT細胞:遅延型アレルギーに関与するT細胞で、抗原と接触することによってマクロファージ活性化因子などの生物活性物質を産生し、マクロファージの機能を高めたり、遅延型アレルギーを起こす。AキラーT細胞:同種移植片拒絶反応、ウィルス感染細胞の排除、ガン細胞に傷害性に直接作用するT細胞である。標的細胞上の抗原を認識して抗原特異的に標的細胞を直接傷害する。細胞表面分子としてCD8を持っている。BヘルパーT細胞:マクロファージによる抗原提示を受けT細胞が活性化するのを助ける。B細胞を活性化して増殖、分化を助けたり、キラーT細胞の発現を助けたりするT細胞をヘルパーT細胞と言う。CサプレッサーT細胞:抗原刺激によって起こった抗体発生はいつまでも続かない。サプレッサーT細胞はB細胞の抗体発生を抑制する。また、抑制因子を分泌してキラーT細胞の分化やDTHエフェクターT細胞の分化を抑える。

細胞性免疫の発現には、感作リンパ球と抗原との接触によって始まる。細胞性免疫の発現順序には二つある。第一は、DTHエフェクターT細胞と抗原が接触することによって、この細胞からリンフォカイン(液性生物活性物質)が放出され、この物質が直接、あるいはマクロファージなどを介して働きアレルギーを起こす。第二はキラーT細胞などの細胞性傷害性T細胞が標的細胞上の抗原とMTHクラスT抗原を同時に認識し、直接働いて細胞を傷害する細胞傷害性反応(同種移植片拒絶、ガン細胞傷害、ウィルス感染細胞排除など)である。一部のT細胞は刺激を受けて分裂したのち、記憶細胞となる。この記憶細胞は再び同一抗原の刺激を受け取るとすぐさまDTHエフェクターT細胞、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞に分化し、二次免疫応答を起こす。このように細胞性免疫はさまざまなT細胞の労力によって機能しているのである。

体液性免疫の成立には、B細胞が直接に抗原を認識して活性化し、増殖分化して抗体を生産する過程と、ヘルパーT細胞の助けを必要とする過程とがある。その抗原の一つ胸腺非依存性抗原は、B細胞抗原レセプター(表面免疫グロブリン)と反応してB細胞を活性化、増殖分化させ、抗体を生産するようになる。もう一つの抗原の胸腺依存性抗原は、B細胞を活性化、増殖分化させて抗体を生産させる。それには二種類の方法がある。@B細胞とヘルパーT細胞の接触によるもの:ヘルパーT細胞はB細胞上の組織適合性抗原のMTHクラスUとともに提示された抗原(MHC抗原−抗原複合体)を認識すると活性化して、B細胞を刺激し、増殖分化させ、さらに形質細胞へ分化させ、抗体を生産させるようになる。A活性化T細胞が生産したサイトカインによるもの:マクロファージなどの抗原提示細胞上のMHCクラスU抗原(MHC抗原−抗原複合体)を認識したT細胞は活性化して、種種のサイトカインを生産するようになる。このサイトカインによってB細胞は活性化され、増殖分化して形質細胞となり、抗体を生産するように成る。一部のB細胞は記憶B細胞となり、再び同一抗原の刺激を受けるとすぐさま抗体生産組織に分化し(二次免疫応答)、強く抗体を生産する。

これらの二つの抗原によって体液性免疫は抗体を生産して機能しているのである。

以上の細胞性免疫と体液性免疫の仕組みから、免疫の仕組みは説明できる。