「俺が日産の社長になったら.......」

野崎

 

遂にというか、とうとう「今週の顔」の順番が俺に廻って来てしまった!

何とか卒業まで逃げきれると思っていたのに....

うーん...どうしよう?

何をテーマにしようか散々悩んだ末、身近な存在である自動車に関して常日頃、感じている事を俺の「極めて歪んだ独断と偏見」で思いっきり書かしてもらう事にする。

今迄の「今週の顔」に、どことなくカタさを感じてたのは、きっと俺だけではないだろう。

非難・中傷大いに結構!、では行ってみよう!!

まず、国内主要自動車メーカーである世界の「ホンダ」と眠れる象「日産」の9月期中間決算がそれぞれ、11月12日、同10日に出揃った。(ちなみに三菱自動車、マツダ、スズキの9月期中間決算も出たが、トヨタは未だ)

それを見ると、追いつ、追われる者の関係である両社の勢いの違いは明らかである。

ホンダが単独中間決算で売上高:1兆4213億円、経常利益:1259億円、連結中間決算で売上高:3兆1335億円、税引き後利益:1582億円と、いずれも3年連続で過去最高益を更新したのに対し、日産は単独中間決算で売上高:1兆6385億円、経常利益:288億円、99年3月期の連結ベースの業績予想も下方修正し、税引き後は300億円の赤字になる事も発表したのである。

まさにホンダは現在絶好調であり、単独売上高では日産の優位は揺るぎ無いが、グループ全体の総合力を示す連結売上高では、ホンダはトヨタに次ぐ2位の座を伺う勢いである。

この結果を受けて、世間では「ホンダさんはスゴイ!」的シンドロームが蔓延しつつあるが、果たしてそうであろうか?

確かに「数字が人格」等と言われる企業の論理では、数字を挙げる事は最重要課題であり、賞賛されるべき物である事は認める。

しかし、それと素晴らしいクルマを作るという事は全くの別問題であり、むしろ数字が上がれば上がる程、そのメーカーのクルマの品質は落ちる傾向がある様な気がする。

まず、ホンダの収益構造を見ると、国内販売数は減少しており、国内売上高は対前年同期比13.3%減!の5447億円に落ち込んだが、輸出全体は北米や欧州向けの4輪車の輸出が大幅に伸びたため、0.2%減の8766億円となっている。

これは何を意味するかというと、ホンダが極めて輸出依存体質であり、本来の実力である国内販売実績では、たいした実績を上げていない事の証明でもある。

又、ホンダは自動車メーカであると同時に、その起源が示す通り、「世界最大の2輪メーカー」である。

日本ではバイク=危険な乗り物(又は、バイク=寒い)という誤った認識と、その免許の取得上における特殊性のため、ごく限られた人たちの間でしか楽しまれていないが、これが海外に出るとその様相は一変する。

海外では、その免許取得上の容易さと、道路事情等によって非常に人気があり、事実、総生産台数に占める日本国内販売シェアは、たった15%位しかないのである。

つまり、日本のバイクは総生産台数の約85%を買ってくれる海外のユーザーの嗜好が優先され、日本のライダー達はその輸出するオコボレを頂いているという形になっている。

当然、これらホンダの2輪車の売り上げも今回の決算に換算されている訳で、ホンダの数字が良いのもそこにある。

又、2輪車以外にもホンダには田舎者にお馴染みの「軽自動車」というリーサル・ウェポンもある!

また、日産と比較してもらえれば明らかであると思うが、売り上げに対する利益率がホンダは異常に高い。

確かに、合理的な経営システムの導入や、効率的なラインの導入、といった事で普段ならば説明されてしまうのかもしれないが、俺から言わしてもらうと、ホンダの商品は非常に付加価値が高く(=ボッタクリとも言う)、ホンダ好調の起因はコスト対策以外の何者でもないのである。

まさに最近のホンダ車がそれで、ここ数年に登場したホンダ車には以前の様な「ホンダイズム」のカケラも見られない車ばかりであり、まるで「avex trax」から量産される「パチモンアーティスト」を見ている様で正直言って胸が痛む.....

昔のホンダにはその全ての車に付けられるHマークが示すとおり、日本の自動車メーカーで唯一と言っていい程、一貫性が有り、レースに力を入れ、そこから得たノウハウを市販車のエンジンにフィードバックし、車全体に占めるエンジンのエンゲル係数が最も高いメーカーであった。

駆動方式にも徹底してFF(前輪駆動)にこだわり、エンジンもレスポンスの良いNA(非ターボ)を重視し、うちは他の自動車メーカーとはここ(エンジン)が違う!と言い切れるメーカーであり、明確なビジョンを持っていた。

しかし、現在のホンダの人気車種は、「ステップワゴン」、「オデッセイ」、「CAPA」、「SM−X」等に代表される、いわゆる今ハヤリのRV車ばかりであり、では車の基本であるホンダのセダンの売り上げはと言うと、実はガタ落ちなのである。

この様な万人受けする車は、自動車業界における小室哲哉である「トヨタ」に任せておけばいいのであって、「ホンダイズム」の喪失は悔やまれるところである。

また、最近では「Small is smart」なるCIを掲げ、積極的に小型車推進運動に出ているが、これは欧州の自動車メーカーの潮流であり、その「猿マネ」をするのはいかがな物か?

小型車推進運動はまだしも、その小型車の安全対策に於いてもホンダが示す方向性が感じられない。

もし、小型車と大型車が衝突したら、大型車の重力加速度は小型車のそれと比べ当然、大きい訳であり、同じ強度でも小型車に乗っている人の方がダメージを受ける可能性は高くなる。

となると、大型車を潰れ易くしておいて、逆に小型車を適度に固く作るのが道理であるにも関わらず、ホンダは新しい「Life」と「Z」の広告に於いてオフセット正面衝突64km/h、フルラップ正面衝突55km/h、と高らかに謳い、又、歩行者の安全も考え、いざ人身事故を起こしてしまった際、歩行者がダメージを受け易いボディ前部の構造も見直してあると広告は謳うが、こんな事は両方とも数十年前からベンツは取り組んでいる。

笑ってしまうのが、ホンダの小型車「Logo」であるが、何と安い下位グレードにはエアバックが標準装備ではなくオプション設定なのである!!

安全が商売になると知ってから日本の自動車メーカーは、ここぞ!とばかりに、エアバックを付けはじめたが、規制が無い限りは徹底的に手を抜くという、その生まれ持った性格上、見えない所には「みーつけた!!」とばかりに、缶蹴り感覚で手を抜いてしまうのである。

とにもかくにも、小さな町工場から誕生したホンダも今や超大企業となり、そこに集まって来る人間も根っからの車好きから、ネームバリューを追い求めてやって来る人間が多くなって来た。

当然そこには必然的に大企業病が発生し、個性を重視する車作りから、数字を重視する車作りへと移行し、トップも個性的な、かつての歴代社長のような人物ではなく、東京大学工学部出身のありきたりなエリート社長!?が今年就任し、ますます企業としての魅力が無くなって来た。

社長はかく語る。

「うちはとにかく、2010年になっても売れ続ける車を作らなくてはならない!!」

おい、社長さん!本当にあんた商売の事分かってるの?

俺だってそんな事言えた義理じゃないけど、お金という物は後から付いて来るもんじゃないの?

リチャード・ブランソンだって、スティーブ・ジョブスだって、ビル・ゲイツだって、「お金を儲けたい!」と思って事業を起こしたのではなくて、ただ純粋に「俺はこれがしたいんだ!!!」という沸き上がるパッションから始まったんじゃないの?

こんなのがトップだから、企業としての方向性が分んなくなって来ちゃうんだろうな....

まあ、ホンダに限った事では無くて、日本の自動車メーカー全てに当てはまるんだけど....

続いては、眠れる象、問題児「日産」である。

924日、日産は銀座の本社ビルの一部を146億円で森ビル系不動産会社に売却した。

去年の乗用車の販売台数はトヨタ120万台に対し、日産は68万台と、その差およそ約半分!

983月期連結決算ベースの有利子負債は25000億円!!

参考までに、先日会社更正法が適用され、俺がヒヤヒヤした「日本リース」の負債総額が24000億円である。

もし、俺が明日から「日産」の社長になれるのならば、まず、真っ先にやりたい事がある!!

今現在、日本で最もカリスマ性のある職業、それはミュージシャンである。

GLAYやB’ZがCDを出せば、400万枚も500万枚も売れるのである。

出版業界で大ヒットと言ってもせいぜい100万部や200万部であり、しかもCDと単行本の単価を比べれば、CDの方がはるかに高いし、CD一枚の原価がどれだけ安いかは我がゼミナール、渡辺君の良く知る所であろう。

ミュージシャンとレコード会社の関係を考えてもらえれば良く分ると思うのだが、リクルートの会社年鑑に「ミュージシャン」という職業欄がある訳でもないし、ミュージシャンは決してレコード会社に履歴書を持参して就職している訳ではないのだ。

ライブハウスやコンテストで活躍しているどこのウマの骨だか分らない様なヤツに、レコード会社が声をかけて契約している。

その代わり、売れなくなったらそれでオシマイ。

「キャリアを積んだから出世させよう!」という事には決してならない。

思うに、「日産」が最も遅れを取っているのは、他ならぬ「デザイン」である!!

そこで俺は、カー・デザイナーもミュージシャンと同じ方式を採用したい。

優秀な外部の人間を登用するのである!!

スポーツ選手やミュージシャンと同じで、デザイナーが良い仕事をするのは10年位の極めて短い期間だ。

その分だけ、デザイナーにはステイタスを与えてやらなければなるまい。

クルマにはデザイナーの名前を入れて、報酬も1億や2億、ポンと出すのだ!

今のカー・デザイナーが良い収入を得ようとしたら社内で出世するしかない。

しかし、良いデザインをする能力と出世する能力が別物であるのは言うまでもない。

実際、自動車会社ではデザイナーの地位というのは極めて低く、出世の対象にはならない。

社長になるのは有名大学を出ていてあとは、文系出身か理系出身かどうかというくだらない事で、もめるのがオチだ。

カーデザイナーになりたい人間は山ほどいる。

俺が「日産」の社長になった暁には、広くデザイン・コンペを行い、ポプコン方式でクルマのデザインを決めようと思う。

デザイン担当重役が気に入る様なデザインをする社員デザイナーは要らないし、常に物事の新しい発想は異業種の人から得られると俺は信じている。

事実、デザインの本場イタリアでは、「フェラーリ」や「アルファ・ロメオ」などの優れたデザインを生み出すメーカーは、「ピニンファリーナ」や「ジウジアーロ」といった有名デザイナーのデザイン工房にデザインを依頼し、結果として素晴らしい造形美のクルマを作り出しているし、昨今、優れたデザインのクルマを作る「アルファ・ロメオ」の認知度は日本国内に於いて目を見張る物がある。

結局、最終的にクルマはデザインである。

どんなに性能が良くても、外見がイケてなかったら終わりである。

最近登場したi−MACが現在、デスクトップ・パソコン総売り上げの3割を占めているという事実は、性能が良い事は勿論だが、結局はエポックメイキングな、そのデザインである。

SONYの「VAIO」が人気あるのも同じく「デザイン」がイケてるからである。

お得な通話プランがあり、更に端末もタダで配っているにもかかわらず「IDO」が「DoCoMo」に勝てないのは、「DoCoMo」が持つ「ブランド」とその端末の「デザイン」であろう。

ちなみに就職活動中、「IDO」の面接で「お宅の端末のデザインは終わっていると思います。」という旨の発言をしたら面接官も納得していたが、なぜか落とされた!

その時、俺はもう2度と「IDO」ユーザーにはならない事を誓った。

まあ、ルックスのイイ男は黙ってていてもモテル。

しかし、当然ながら我々は「竹之内 豊」にはなれないし、美容整形の権威であっても俺を「金城 武」の様には出来ないであろう。

そこで、彼らに負けない様に、手を変え品を変え、泣いたり、なだめすかしたり哀願したり、あるいは「バイアグラ」を飲んだりしながらガンバッて生きているのである。

ところが、クルマに関してはカッコいい物を自由に選べるし、クルマであったら「反町」にでも「IZAM」にでもなれるのである!

だからこそ、クルマは楽しいし素晴らしいのである!!

それなのに、臆病で保守的な選択をしていないであろうか?

おい、そこの君!何でもかんでも1台で済むような「守りに入った車」を選んでいないか?

日本のクルマがカッコ悪いのは、結局のところユーザーがカッコよさを求めていないからではないか?

サッカーW杯フランス大会を思い出して欲しい。

日本のサポーターが誉められたが、一糸乱れぬ応援風景は決して誇れる物ではないし、「キム・ジョンイル」の前で狂ったように踊る子供達さえ彷彿とさせる。

各々が好き勝手に応援する方がよっぽど自然であろうし、あれじゃあ甲子園球場のタイガースファンや東京ドームのライト・スタンドと大差無いではないか!

又、試合に負けたのも、個人技に長けてない事と個人の判断力に差があっただけではないか?

我々、日本人は、たとえば、サッカーの「中田 英寿」選手の様に、自己演出を心掛けるべきだ。

周りと違う事や1人になる事を恐れぬ勇気を持ち、ステキな自分を存分にアピールすべきなのである。

街にあふれ返る白色の 「レガシー・ツーリングワゴン」を見ると、俺は思わず明日の政局を考えずにはいられなくなってくる....

どいつもこいつも、「レガシー・ツーリングワゴン」に乗っているから、俺は嫌だ!とハッキリ言える人間になって欲しい!!

以上が、カッコイイ奴等と、カッコイイクルマの国、イタリアに追いつくための俺からの提言である。

くれぐれも言っておくが、もし私が「日産」の社長になったなら、就任した当日から以上の提言をトップダウンで行うつもりである!!!