財政破綻か再建か

財政の展望

現在、国および地方の長期債務残高の中身を見ると、96年度末の残高は、国が321兆円、地方が138兆円、国と地方のダブルカウント分14兆円で総計445兆円になる。これが97年度になると、国が344兆円、地方が147兆円、ダブルカウント分15兆円総計476兆円になると見込まれている。また、これまでのような財政構造を続けていくと、10年後には経済が3.5%で成長するケースで482兆円となって、累積債務残高はGDP比の68%となり、これが1.75%のペースで成長すれば544兆円、累積債務残高はGDP比の92%になるとされている。

では、このような累積債務残高の累増を食いとめるためにはどうすればいいだろうか?以下では財政支出、財政構造、社会保障、の3点から考えてみた。

<財政支出>

債務残高の累増を食い止めるためには、経済成長が一定であれば、まず歳出を抑制する事が基本になる。もし96年を起点として一般歳出の伸びを自然体のケースにしておくと、10年後に債務残高はGDP比で126%まで上がってしまう。しかし一般歳出の伸びをゼロにすれば、10年後にGDP比85%まで抑えられるのである。このような大幅な歳出の削減は容易でないが、財政赤字の累積を補位置しておくと、金利の上昇、経済の停滞、インフレの加速、為替レートの低下、実質所得の低下と失業の上昇生活水準の低下と言う典型的な衰退シナリオに陥る危険性がある。

<財政構造>

財政支出で述べた基本方針を踏まえ一般歳出とりわけ当市部門の98−2000年度の伸び率をゼロにすると言う新たな仮定のもとで、財政当局は中期的な財政の展望を推計したいくつかのデータがある。

まず、1つは伸び率をゼロにするために歳出入のギャップを特例国債の発行で埋めると言うケースである。もう1つは特例公債の脱却を目指して2005年に特例国債をゼロにするよう97年以降、毎年1兆円ずつ発行額を減らすケースである。しかし、もしこの2つのケースを実際に行うとしたら歳出の伸びはゼロに抑えられるが多額の歳入不足が生じてしまうのである。このように、思い切った歳出削減と財政構造改革を実行して中期的にプライマリーバランスを達成した場合、累積債務の抑制はある程度実現するが、他方、大きな歳入欠陥を埋めるには、目覚しい経済発展でもない限り、大幅増税など何らかの増収策を講じる必要がある事を示している。

<社会保障>

経済審議会の報告では、高齢化が進む中、経済構造改革が行われず、現状のまま推移した場合、経済成長率は大幅に低下し、2025年には0.8%になると予測されている。また国民負担率、潜在国民負担率も 大幅に上昇し、2025年以降は勤労者1人当たり手取り所得マイナスに低下してしまう。ここのような状況を改善するために経済審議会は基礎年金の支給年令の引き上げ、年金拠出率の引き上げ、医療自己負担の引き上げ介護保険の導入、高齢者雇用促進、育児政策拡充など様々な政策を検討している。そしてもし、これらの政策がうまく作用すれば、日本経済を破局から救済する事は不可能でないと述べているのである。

マクロ目標の設定

財政健全化のためのマクロ目標としては、@プライマリーバランスとA財政均衡の二つがあげられる。@は、公債費を除く財政収支を均衡させる、財政赤字は利払い費のみに限ると言う考え方である。Aは、赤字国債は発行せず、その結果、経済成長にともない、累積財政赤字は長期的には減少し、究極的には解消していくという考えである。