日本経済の再浮上第五章事前予習レポート
<宇多良隆>
1997.11.22第五章の感想として、福祉事業の民営化が必要であるという事です。日本の企業体制についていろいろといわれている昨今でありますが、私は日本の民間企業の水準は今もって世界のトップであると考えています。今日、問題となっているのは、天下りを有する政治の絡んだ企業であり、一般企業ではありません(大まかには)。純粋な競争という原理が稼動している市場においては民営化はうまくいくと考えられます。
<佐山浩昭>
1997.11.23第五章事前レポート
これから高齢化に向かうにつれて、年金、医療などの社会的費用は増大し、現在の財政を見ると更なる国民負担率の上昇は、避け難い状況となっている。政府の対応が間に合わなくなるとすれば、年金の民営化などで政府に頼らず国民自身が社会保障を管理しなければならなくなるだろう。「政府管理か自己管理か」という選択肢も考えなければならない問題だと思う。
<小川 剛史>
1997.11.25高齢化に伴い年金や医療にかかる費用が増大する事も、その負担額がある程度上昇する事も仕方のない事だと思う。だが、医療システムの矛盾、無駄がこれほど浮き彫りにされている状態では、納税者は納得いかないと思う。医療システムの情報公開を積極的に行い、需給のバランスが公正になるよう早急に改革に取り組むべきだと思う。
<奥澤啓之>
1997.11.25第5章感想
それぞれの社会保障制度がシステムとして急速な高齢化社会に対応できていないように思う。そこで、合理化し、効率的で費用節約的なシステムを創って行くべきであると思う。しかし、それには国民の理解と合意をいかに確保するかということが大切になってくるだろう。今回、私は担当なのでレジュメで詳しく説明したいと思う。<大前慈子>
1997.11.25第5章感想 年金のことについて言うのならば、世代間の不公平は本当に大きな問題だと思います。今までの年金制度では明らかに今年金のためにお金を積みたてている人は、年金の交付時期にはもらうおかねがなくなってしまう。ここに書かれているように本当に貧困な高齢者には重点的に生活を保障するべきであるが、制度の見直しがひつようだらう。効率的・費用の面で問題が起こってくるのかもしれないけれど年金制度の見直しは財政再建という点からも最重要課題だと思う。
<上田寛>
1997.11.24第5章読んでの感想年金、社会保障については、あまり勉強していなかったので勉強になったが、筆者の考えは少し具体的ではないと思う。労働者世代と年金受給世代との不公平をかいているが、その対策として全世代にわたって課税される間接税
(消費税など)の割合を増やし(値上げ)ていくべきだと思う。<斎野将孝>
1997.11.25第5章の予習レポート消費税は元々国民福祉税という発想で提案され、将来必要になる社会保障費用を賄うための新しい税でした。1997年4月から消費税が引き上げられましたが、それよりも、社会保障制度改革が必要であるという意見を多くの人が持っているのは、現在の行政主導による社会保障システムが非効率的であり、このままでは、予想される高齢化、少子化による社会保障費用の増加に対応できないと考えているからだと思います。
現在の年金負担者は、将来の年金給付にはっきりと不安を感じていて、若者でも年金に加入しなくなっています。年金非加入者の増加は、彼らが退職する将来に、生活費用不足者が増加することになります。
行政改革の目的の1つに、小さな政府の実現があげられていますが、そのためにもより効率的なシステムの再構築が必要だと思います。
<梶山勇人>
1997.11.25今週(5章)の予習本章では、さらに進展する高齢化社会において、更なる増大が予想される、社会的費用の問題を論じています。一般に、「高福祉=高負担」もしくは「低福祉=低負担」という2項対立でだけ論じられがちであったが、そうではなく、質を落とさず、効率化し費用を節減し、負担を軽くしていかなければならないと筆者は論じています。現在の社会保障システムは、現在においては世代内の、将来においては世代間と2重の矛盾を抱えています。この矛盾の解消こそ重要なのだと思いました。
<宮澤淳>
1997.11.25国民年金は保険料3分の
2と国庫支出金3分の1という構成比から成っています。現状の各種税率のままでは、私たちの年金給付は保証されないことはシュミレートから分かっています。できることは何でしょうか。平成
6年には3兆9千億円の国庫支出金がありました。このままですと、30年後の平成37年には支出は8兆1千億円になるという予想があります。その為、6月に行った健康保健法改正には、各医療保険制度の赤字を減らすことと、国庫支出金増加を避けることという目的が掲げられているのです。しかし改正は、従来の患者負担である医療費一割を二割に引き上げさせ、入院費を一日700円から1000円にするという負担率の増加を呼びました。国民の不満はつのるばかりです。国民負担率の急激な増加は不信感を増大させるだけです。しかし、今後の高齢化社会の訪れは確実である為、少々の増税は致し方ないと私は考えます。
年金の性質が積立方式から賦課方式に変化しつつあることもありますが、もう増税をストップしようというのは、長期安定を図る上でおそらく不可能です。ただ、後世代の負担が物価の上昇とあまりにもかけ離れた負担増とならないようにバランスをとらねばなりなせん。
最後に、国庫支出金を減らすのと逆進的に各種保険料は増加するため、結局は増加するのが「保険料負担」か「税金負担」かという話で、我々が現在より低い負担で今後すごせるはずはないのでしょう。
<小野公樹>1997.11.26<第5章の予習>
第5章の中で着目する点は、「世代間の負担の不公平」だと考える。現行の年金制度の基礎は、70年代に固められたものであり、高齢化・少子化といった問題を踏まえていない。
従って、現高齢者を賄っている現労働者と、その現労働者が高齢層になった時に賄わなければならない我々若い層の負担に格差が出来る。
単なる年金や保険料の負担額の増加のみ行うのではなく、システムの改革及び効率化が必要とされている。
<三冨成樹>
1997.11.26<第5章の感想>今後の日本が超高齢化社会になることは目に見えている。だが高齢者の中には勤労意欲のある人がいるはずだ。働きたくても働くための機会が整っていない。
高齢者の雇用機会を増やせば、年金に依存する高齢者が減少し、国民負担率の上昇にも歯止めがかかるのではないだろうか。
<安西
正幸> 1997.11.26第五章「
重い高齢化か、軽い高齢化か」の感想第五章を読んでみて、日本の人口の急速な高齢化に伴い社会保障システムの改革は必要である。しかも、社会的サービスの質を落とさないで費用を最小に押さえるような社会保障システムにしなければならないと思う。
しかし、本当に費用負担を最小に押さえる事ができるのだろうか。現在のような日本経済の低迷が続けば国が予想している時期よりも早くコスト不足にならないだろうか。
<永尾龍太郎> 1997.11.26
高齢化の問題について、僕は老後に自分が年金をもらえるとは思っていない。たとえもらえたとしても今よりもかなり給付年齢が上がっていると思う。そこで思うのは、定年制度を無くせばいいのではないかということだ。定年の年齢になってもまだ働ける人はたくさんいると思う。通勤が大変だという人にはパソコンなどを使って在宅勤務するなどいろいろやり方はあると思う。働いていれば収入が入ってくるので、年金をもらわなくてもすむだろう。病気などになった時などにしっかり助けてくれればいいと思う。歳を取っても働いていけるような環境作りというのも大切なのではないかと思う。
高齢化が進むにつれて社会的費用が増大することは間違いない。その費用負担を少しでも軽減するために日本の経済成長を軌道にのせることがまず必要なのではないかと思う。本書では4%、3%といったシュミレーションを行なっているが今の日本の現状ではその数字すらも考えにくい。経済成長が軌道にのれば国民の心理も負担に前向きになるのではないだろうか。
それと年金の制度的な問題について、負担よりも給付が少なくなるというのはあまりにも公平ではないので、著者がいうところの合理的で公平なシステムを再構築することがやはり必要だと思う。
人口構造の急激な高齢化に伴い、社会的費用が増大し国民の負担率がある程度上昇することは避けられないと思う。しかし、この様な状況になったのは、単に政府だけの責任なのだろうか?そこには、国民の危機意識の低さもあるように思う。
第5章は、高齢化の問題である。高齢化が進むことにより、費用が増大することは避けて通ることができない事実である。そして我々が高齢になった時、年金を頂くことは無理であろう。しかし、社会保障システムの再構築により、費用の伸び率を少しでも押さえることができるのではないだろうか。 特に、現在の医療費に関しては削減できる余地があると言える。医療システムの再構築により、効率化を図ることによって費用の伸び率を押さえることができると考えている。
<庄子穏行>
1997.11.26重い高齢化か軽い高齢化か。日本は高齢化と少子化に伴い、社会保障制度(年金、医療保険)を見直さなければならないと思う。社会保障制度自体(資本主義の欠陥である弱者の問題を捉え、社会を均等で公正にする。また、医療保険はすべての国民が病院に通いやすくなった。)は賛成なので、いかに合理的にかつ効率よくしていくかが問題だと思う。年金の問題にしても、すべての高齢者が働くことができないとは限らない。
<秋元
亮> 1997.11.26第五章の感想
確実に予想される高齢化なのだが、本を読んだだけでは対策を出すのは難しいので,論点としては「無駄」を考えたい。
<石井豊>
1997.11.27高齢化に伴い、社会的費用は増大していく。年金制度、国民医療費、福祉、介護、ともに問題を抱えている。この問題は、われわれ国民にとって、とても身近であると同時に、コスト意識が薄い部分に問題があるように思える。また、効率化を進めるためには、情報の開示の問題が大きな比重を占めているとも言える。問題の解決には、政府がいかに国民の理解を得て、意識を高めることが出来るか、そして、制度の改革を行っていくことが出来るかと言う部分にあると言える。
<矢内司>1997.11.27
高齢化に伴う社会的費用の増大、負担増は避けられないと思います。年金制度については、世代間の不公平性を少しでも是正する為に給付額の削減ということも考えてみる必要もあると思います。著者が示していた、高齢者に対する税制度の改革は今後の治療費自費負担額の増加を考えれば必要がないと思いますが、国民にコスト意識を実感させる為にはなんらかの対策が必要だと思います。しかし、病院に市場原理を導入することにより、コスト意識を定着させることができるという著者の考えは、サービス低下、所得・貯蓄格差による差別が生じる危険もあると思うので疑問です。
<吉田真理>1997.11.27 5章について
高齢化は、これから社会に出て否応なく社会保険料を負担しなければならない私たちにとって避けては通れない問題です。これまで優遇されてきた年金受給者のことを引き合いに出されれば、今、早急に支給年齢を引き上げるのは酷のような気もしますが、今やらないと将来もっと厳しい状況になることを認識すべきだと思います。
<清水直>1997.11.27 5章の感想
社会保障や年金制度の合理化、効率化が必要であるといわれているが、いったいその中身は何なのか?今一つ目的意識が欠けていると思う。
私は自宅で93歳の祖母と知的障害の姉の世話をしている関係でよく福祉手続きを行うが、ある時姉の通う訓練センターでこんなことを言われた。「清水さん、福祉サービスは食うか食われるかの戦いですよ。もらえるもの(保障、補助金)はどんな手段を使っても勝ち取らなきゃ。」私達は高い税金を払っているのに、なぜ公的サービスを受けるのにこんな四苦八苦しなければならないのか。もし、合理化が進み給付水準が変更されて、余計に苦労しなければならなくなったらどうしましょ?やっぱり政府のやろうとしていることが信じられない。
<渡邊健太郎>1997.11.27
僕も年金に関していうと、いまのままではいろいろと問題がある。また、現在の年金問題を悪化させる現象が起こっている。若い世代の年金払わない現象だ。なんで、もらえるかわからないものにお金を払うのか、払っても長生きできないから今がよければいいという考えが日本中に蔓延し、入るはずのお金が減少するもんだいがおきている。強制的に年金をとる制度やもっと年金に特約をつける必要があるのではないか
また、国・地方公共団体などの財政状況は大変悪化している.それは(隠れた借金も含め),将来相当な国民負担にもなる.また,企業も隠れた負債を抱えているのは、ゼミのみんなもごしょうちの通りである。そこで,これに関して社会関連情報として会計(世代会計)からみてみてみようと思う。
国民負担の検討に,世代会計からも考慮される.世代会計は,世代別の生涯の純負担を明らかにする.世代会計の推計の目的には二つある. 第一は,ある政策の世代間の公平性の検討.第二には,世代会計の情報により,ある政策が消費や貯蓄に与える効果をライフサイクルに分析する.
なお,世代会計は,現在の支出構造を前提としたとき,将来世代はどれくらいの負担が必要かを政府予算から検討する...世代会計は,特に上記にあげた年金などの問題検討に重要である.
年金には大別して公的年金と私的年金(企業年金,生保の個人年金保険など)の二種類ある.公的年金(厚生年金・国民年金・国家公務員等共済組合・私立学校教職員共済組合など)は,「世代間扶養」で公平な給付を要する.一方企業年金(厚生年金基金・適格退職年金・中小企業退職共済組合)などの私的年金は,自己扶養の原則でより高い給付を目的とされる.
現代社会は,高齢化社会・少子化社会から公的年金の財政状況悪化が予想され,支給年齢の段階的引上げもある.それゆえ,つなぎ役の企業年金などは役割が期待される.しかし,企業年金もまた財政悪化で,実際に積立てられた年金資産に対し責任準備金のバランスも危ぶまれている.米国では,年金資産積立て不足が「いわゆる格付」に大きな影響を与えている.
なお,日本の企業年金は薄価主義(会計制度)を採用のため,その後の株式市場の低迷で実質的には含み損を抱えている.
ただし,97年度末から時価主義導入もあり,過去勤務債務の拡大や株式市場次第では含み損(いわゆる「隠れた負債」,既に96年3月決算で大企業の一部はこれを認知)が多大に生じる自体となった。.
国の一般会計債務の公債残高(建設公債・特例公債)の残高は,96年度末で約240兆円(対GDP比48.3%;国民一人当たり約191万円).更に,国有林野事業などの各種特別会計の借入が約80兆円で,国の長期債務残高は約320兆円も達する.
地方公共団体も,地方債の残高約100兆円含めて債務残高約136兆円にも達する(なお,約14兆円は国の債務残高と重複).そこで,国・地方公共団体の債務残高は約442兆円(対GDP96年度比89%). また,いわゆる「隠れ借金」もある.これは,地方からの国の借り入れ約5.5兆円・厚生年金の国庫負担繰り延べ約1.3兆円・政府管掌健保の国庫補助繰り延べ及び棚上げ債務約2.2兆円.また,国鉄清算事業団長期債務約27兆円.こうして,隠れ借金が約43兆円ある.さらに,企業活動の外部不経済(社会的費用)で,公害・環境破壊がある.
60年代の公害問題の負の経済効果は,四日市公害の被害補償は74年度から毎年210億(89年度価格,環境庁調べ),水俣病は同126億円,イタイイタイ病は73年度から同25億などもあり,今後も継続し,汚染防止に必要なコストの数倍から百倍の負担を強いられている.
近時,住専(住宅金融専門会社)処理に6850億円(国民一人5500円)あるが,事業団の債務は実に27兆5800億円ある. さらに,薬害問題も後を絶たない.これらは,結局企業などを監視出来なかった行政問題であり,国民の犠牲と共に其の債務も国民負担(公費)となる.資源・環境問題は(自然の資本;資本として扱い,其の保全に留意),次の世代からの債務ともいえる.
国民に対して企業・行政の情報公開は,「市民社会的監視や制御」を持つ社会の変革に必要不可欠で,其の社会が演繹的手法や帰納的手法のもとで社会・経済システムが益々進展されることが望まれる.
そこで,会計(アカウンタビリティー;説明責任)は,個別企業の私的計算用具にとどまらずに,「社会的用具」もなり「動的社会秩序の形成要因の機能を発揮」すべきであると私は思う
<鎌田大介>1997.11.27
高齢化社会が到来するに至って、国民負担率が上昇してしまうのは仕方のない事であると思う。問題はその負担率の上昇をどれだけ押える事ができるかという事ではないだろうか。そのためにはまず、医療システムに市場原理を導入し効率性を上げていくべきではないかと思う。
担当:梶山・山條・奥澤
1 社会的費用と負担 これから日本は、人口構造の急激な高齢化に伴い、それによる費用の増大はさけられないようだ。しかし、問題はむだや過大な費用が含まれていないか、ということである。もし、むだや過大な費用を含んで高齢化の社会的費用が膨張し続ければ、それは大きな私たちにとっては重圧となり、人々の勤労意欲や企業の投資意欲を阻害し経済は活力を失い、やがて衰退していくおそれがある。(これを「重い高齢化」と呼ぶ。)しかし、高齢化を支える社会サービスの質を落とさずに、システムを合理化し費用を節約することができれば、費用負担は最小に抑えられ、経済は活力を維持できるのである。(こうしたことを「軽い高齢化」という。) そこで国民の負担を示す指標として国民負担率がある。これは、次の式で表せる。 (租税負担+社会保障負担)/国民所得*100 これは、景気変動に伴う大きな波動があるけれども、長期的には構造的、趨勢的な上昇傾向が見られるようである。また、経済成長率の程度によって将来の給付と負担のバランスは当然異なってくる。つまり、成長が高ければ負担率は低くなるし、成長が低ければ負担率は高まる。そこで現在の日本の現状を考えると、負担率が低くなることは考えられないだろう。今後の日本経済に4,5%といった経済成長率は期待できない。だから、相当な改革を進めても負担率はかなり高いものになる可能性が大きい。負担率の高さは経済成長に逆に影響を及ぼす可能性がある。つまり、労働供給や投資のインセンティブを阻害して経済成長を抑制する効果があり、今後改革を進めていく上で考慮に入れる必要があるだろう。 2 年金制度の現状と問題点 問題点@ 年金の財政と負担の問題 当初、積み立て方式として制度は設計されたが、発足当初の拠出水準の低さと拠出率の引き上げが進まなかった一方、給付水準は着実に引き上げられ高齢化の進展にともなって給付総額は累増した。したがって、積立金は事実上、取り崩される形になり、実質的に現役世代が受給世代の給付をまかなう賦課方式へ移行した。しかし、さらなる高齢化が進展し、積立金の取り崩しが進み、財政危機のおそれが強まってきた。 改革 80年代から90年代については年金制度の改革は高齢化への対応に主眼が置かれるようになってきた。85年には大改正が行われ、現行の2階建て方式がつくられた。まず基礎年金制度が導入され全国民共通の基礎年金として一階部分の共通化が行われ、その上に被用者年金を二階上乗せ部分として再編成した。また、94年にも大改正が行われた。支給開始年齢の引き上げ、部分年金の導入(2001年から)、また雇用保険との給付調整、つまり、二重受給をなくし、働くことで総収入が増えるというインセンティブを確保する制度改革が行われた。また、厚生年金のネット所得スライド゙制も導入された。これは長期的には給付を減少、抑制していく効果がある。それから、厚生年金保険料、国民年金保険料の引き上げなどが行われた。しかし、問題もある。保険料の引き上げによりどんどん国民負担は大きくなり、それに耐えられるかが心配である。 問題点A 制度的不公平 まず、世代間の不公平がある。年金給付と負担の倍率が、60歳代では2倍をこえるが、40歳代でほぼ1となりそれより若い世代では負担よりも給付が少なくなることが示されている。要するに、若い世代が拠出にあった給付が将来得られないと言うことであり、年金制度がシステムとして急速な高齢化社会に対応できていないことを示している。 次に、現役勤労者年齢層と年金受給者年齢層との不公平である。現役勤労者層に比べ、年金受給層が事実上優遇されているということである。年金受給者層は所得水準やストックが高い人が多く、ゆとりが多くある。しかし、現役勤労者年齢層は、ローンに追われ子育てなどに費用がかかり、優遇措置もない。したがって、年金以上に生活の格差は大きいと思われる。これらの不公平は、勤労意欲や、育児などの活動に悪影響をもたらすおそれがある。 次に、世代内の不公平がある。サラリーマンの奥さん(年収130万円未満)は、保険料を拠出しなくても受給年齢がくれば給付が受けられる。これは、働く女性(年収130万円以上)との間に不公平をよんでいる。この給付財源は、他の人が負うわけで、これはシステム矛盾といえる。さらに国民年金の滞納者の問題がある。この問題は、所得のない人や不明な人々に納付を強制しているシステムに無理があるといえる。最後に制度間の不公平の問題もあるようだ。 今後の年金制度の課題 高齢化社会の社会的費用を節約しつつ、合理的で公平なシステムを再構築することである。年金給付水準については、長期的に合理的な水準に引き下げていくことである。その場合に既得権にどう切り込むか、また、公平で合理的なシステムが必要だが、それらの制度改革について、国民の理解と合意をいかに確保するかということが重大な問題となるのである。 3 国民医療費の現状と問題点 これからの経済はますます成熟化し、長期的に成長が鈍化していく。他方、人口は高齢化していく。このままでは医療費増大の傾向が加速することは明らかである。したがってそうした事態を克服するために、医療サービスの質を落とさずに、コストを削減していくにはどうするか。このためには医療システムの根本的改革、再設計が求められる。 近年医療保険システムの財政危機が深刻化している。高齢化の進展にともなう医療費の支出が増大し、とりわけ政官健保、組合健保、国民健保、など各保険制度から老人保険制度への拠出金が増大して、各保険の支出増大を膨らませている。一方、不況が続き各保険への拠出収入が伸び悩んだ。その結果、各保険で収支差(赤字)が急増したのである。 そこで健康保険財政危機を回避するには、一方では保険料を引き上げて収入を増やすこと、あるいは患者負担を増やして、保険料からの支出を削減することの二つが考えられている。その結果、サラリーマンの自己負担が一割から二割へ、高齢者(70歳以上)外来自己負担、月1200円を一回500円(4回まで)、薬の自己負担を一定程度増やし、政官健保保険料率が月収の8.2%から8.5%に引き上げられることになった。しかし、これは一時的な効果であり本当の改革にはならないようである。なぜなら現行の医療システムでは、矛盾とむだがあまりにも大きいからである。したがってこれらの問題を回避するには抜本的なシステム改革が求 められる。 今後の対策 医療システムには健全な市場が機能していないのが現状である。したがって公正な競争が行われていない。その結果、供給側が需要を強制的に創出するという現状になっている。そこで、市場の原理を導入してこうした現象を改善し効率的な需給のバランスが公正に達成されるような医療システムを構築することが急務である。 4 福祉・介護の現状と問題点 社会的入院の大きな問題がある。本来長期療養者は福祉施設で介護を受けるべきだが、本人負担が少なく、コストの高い病院に長期入院している事例が多い。そのため、医療保険に多大な負担になっている。これらの矛盾と問題を緩和・克服するために政府当局は介護保険システムの導入を提案した。それは、被保険者というのは40歳以上の人で、被保険者であれば介護給付を受ける権利がある。これが第1号と第2号被保険者に分かれる。総費用のうち、国が25%、都道府県が12.5%市町村が12.5%ずつ負担する。すなわち、費用の半分は公費負担である。被保険者は、各種の介護サービスを受けられる。ただし、サービスを受けるには市町村が要介護者であることを認定し、ケア・プランを作成しそれにしたがって介護サービスが提供されるという仕掛けになっている。 今後の対策 介護保険制度の下では、保険制度の成熟化にともない、保険料による介護費用負担が徐々に増大していくことが見込まれる。したがってその分、医療保険負担が減り医療保険負担の減少になると予想されている。しかし、費用の半分が公費負担になっているため公費負担への依存度が高くなり、誰が払っているか分からないことがコストの意識を希薄にさせる可能性がある。だから、いまからコスト意識を高め効率化を促進する要素を促進する要素を組み込んでおく必要がある。 まとめ 高齢化に伴う財政危機の中で、社会保障システムの変化が求められてきているが、そこで弱者を無視した改革は行ってはならないと思う。公平に社会保障を受けられるシステムを創るべきであると思う。 また、今後高齢化に伴う費用増大で負担が増えると思われるが、いかに、合理的にかつ効率よく負担するか一人一人の意識改革も必要になってくるのではないだろうか。 以上が今度のゼミでの5章の内容です。読んでおいて下さい。<市川 明子>
1997.11.26少子化、高齢化の対策は、日本のみならず諸外国にとっても深刻な問題になっている。日本の場合、海外に比べると人口比としてはそれほどでもないが、平成8年の厚生省幹部汚職事件など社会保障制度を見直す今でさえ日本の行政に対する不信感は拭えない。国民の監視が必要である今、高齢化対策の立法から実施にいたるまで情報開示がもっと行われるべきである。定年まじかサラリーマンの6割が65歳まで働きたいと言うように、退職年齢の選択性、もしくは延長、再雇用制を設けたらどうだろうか?それによって年金は最小限の援助にすぎず、働くインセンティブが損なわれないと思う。
<田辺 健太>
1997.11.26年金など社会保障の現状と問題点については本を読んでよくわかりました。ゼミではこれを踏まえて今後のあり方(公的年金はどうあるべきか、賦課制か、積み立て制か、掛け金制か。介護保険はどうあるべきかなど)について話し合えればと思います。