日本経済の歴史的転換
終章
日本改革のアジェンダ担当 庄子穏行・矢内司
日本経済がキャッチアップを終え、経済大国の仲間入りした今、日本のシステムは時代の要請に応えられなくなっている。そこで、いったい日本の経済体制のどこがどのような意味において時代の要請に応えられなくなっているのか。日本の経済はいかなる理由で成功し、失敗しつつあるのか。日本のシステムを途上国型から先進国型に改革するためにはいかなる視点が必要なのだろうか。こういった視点から日本改革のアジェンダについて考察する。
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これまでの議論>>
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アジェンダ>>1―――グローバル化は透明性を要求する。
市場メカニズムが正しく作動するためには情報開示が不可欠であり、本格的な情報開示
の仕組を作る必要性がある。
2―――イノベーションは周辺から生まれる
イノベーションを生み出すキーファクターは、個人の自立性、実験の自由及び多様な価
値観や組織の存在である。また、革新的イノベーションは周辺から生まれる。
3―――周辺に光が当たる改革を
個人が十分に自由な活動を保証され、リスクに挑戦することが社会的に保証されている
ということがイノベーションの前提である。従って、そのようにするための制度改革が
必要である。
4―――周辺が輝く規制緩和を
日本社会を輝くような社会に変えるための第一歩は規制緩和である。しかし、日本に深
く浸透している平等主義がそれを妨げている。
5―――苦戦する行政改革委員会
規制緩和が既得権に固執する業界が背後に控えていているため本格的に進まない。そこ
で、規制緩和を促進するためには民意の盛り上がりが必要であり、またそうなれば政治
的リーダーシップも発揮される。
6―――重要な社会的盛り上がり
規制緩和を促進するためには企業家精神の発揚による社会的ニーズの充足が必要である。
また、規制は社会の諸勢力のバランスが生み出す内省的制度であり、社会情勢の変化と
ともに内在的・進化的に変化していくものである。
7―――改革推進のための第三者機関
外圧の存在は規制緩和を促進する要因である。
規制緩和への国民世論が喚起されるには、規制緩和がどの程度の社会的便益をもたらす
のかに関する客観性のある情報が必要であり、その情報を提供できる中立機関を設立す
るべきである。
8―――封建制度はなぜ崩壊したか
硬直的なシステムは、既得権を守ろうとする勢力からの抵抗もあって社会的ニーズの変
化に対応できない。しかし、十分な社会的ニーズの高まりは硬直的なシステムをある時
一気に葬り去る力を持っている。
9―――大増税は目前に迫っている
高齢化、少子化の問題もあり、増税は避けられないだろう。
増税が国民の支持を得るために行政・企業も新しいあり方が問われる。
10――制度的補完性の問題
日本型システムの全体はいくつかの部品からできあがっており、制度と制度の間には補完性があるため改革を行う場合は一斉に行う必要がある。
11――おわりに−それでも改革は進む
歴史は静止しない。弁証法的な矛盾の積み重ねが耐え難い環境変化を作り出し、社会は
必ずそういった大きな環境変化に適応する時期がくる。時が来れば必ず日本社会は大き
く変わる。
改革の担い手は我々自信であり、現代日本が直面している歴史的転換の意味を正しく理
解し、変化に対して保守的になるのではなく、前向きの発想でいくべきである。
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結論>>イノベーションは周辺から生まれるため、周辺に光があたるシステムを創るひつようがある。
経済のグローバル化に見合った透明性のある、そしてグローバルに広がりのある仕組を作り上げる必要がある。
民意の盛り上がりや企業家精神の高揚こそ日本社会を変える原動力になる。