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三洋証券倒産に見る金融業界の今後

バブル時代の過剰投資の影響で97年3月期まで6期連続で赤字を出し、経営難に追い込まれていた、証券準大手の三洋証券が11月3日に倒産した。直接の原因は、自己資本に組み込んでいた劣後ローンの返済期限が来年の10月末に迫っており、(劣後ローンの返済期日が一年未満になると自己資本に計上できなくなる。)その返済延長の申し立てを貸出先である生命保険各社が三洋証券の経営状態悪化を見越して拒否したことである。これにより自己資本率が120%を大幅に下回り、三洋証券は自力再建は無理と判断し証券会社としては初の会社更正法の適用申請で、事実上倒産した。また、大蔵省はほぼ同時に新規の売買取り引きを停止させる業務停止命令を出し、三洋証券は4日以降、顧客の株を変換したり中期国債ファンドの換金などに限って営業を続けることになった。

これが、11月3日に新聞で報道された三洋証券の倒産に関する大筋の内容であるが、この三洋証券の倒産は現在が時代の変わり目であることを如実に表している。それは第一にこれまでの護送船団方式の限界、第二に証券会社も淘汰される時代の到来、ということである。今回は三洋証券倒産にまつわるさまざまな話題の中から、特にこの二つのことについて概観を見ると同時に今後の金融業界を考えてみたい。

 

護送船団方式の限界

では実際、今回の三洋証券倒産までに大蔵省がどのような救済措置を施し、それが他の金融機関にどのような影響を与え、なぜ大蔵省得意の護送船団方式を貫くことができなかったのかその経過を考察してみる。

まず、大蔵省は経営難の三洋証券を国際証券と合併させ、国際ともども都銀のグループ入りさせることを構想し、実際6月末に両証券会社の首脳が懇談して合併を検討することで一致した。また、同じころ、三和銀行が大蔵省からの打診に名乗りを挙げ、当時は「合併により証券業界は野村證券との二社体制になるだろう」と強気に考えていた。しかし、構想は思うようには進まなかった。なぜなら、三洋がバブル崩壊から抱えている系列ノンバンクの不良債権問題や三洋本体が合計460億円の債務保証予約を東京三菱・大和・日本債権信用の主力三行にしていたことがネックとなっていたからである。そこで大蔵省は主力三行に掛け合い、債務保証を三洋の株式に振り替えることでようやく合意に漕ぎ着け、この間に国際の大株主である野村證券が国際株1000億円分を三和に売る根回しも同時に進められた。これにより、問題は丸く収まったに見えた。

しかし一部報道機関が「三洋、国際に営業譲渡、三和の子会社に」という報道があり、これに対し三洋、国際、三和、野村の4社は報道を否定したものの、その波紋の影響は大きく、特に国際の社内情勢を悪化させ合併の動きを硬直させた。この事により、三洋の資金繰りはますます厳しいものとなり、106日には主力三行が合計88億円のつなぎ融資を大蔵省からの要請により実行してしのいだ。

焦点は来年10月末に迎える生保各社との200億円劣後ローンの返済期限引き延ばしに移った。上記にも述べた通り、返済期限が一年を過ぎると自己資本に算入できなくなり自己資本率が著しく低下してしまうからだ。しかし、三洋の経営難に加え、もともと生保各社が大蔵省の強い要請に仕方なく従ってきていることもあり、また過去3回にわたり期限を延長してきているのでこれを拒否した。事実上、この時点で護送船団方式は崩壊した。

 

証券会社も淘汰される時代

このように大蔵省の護送船団方式はもう既に通用しなくなってきている。それは各社が抱える問題もさることながら、ビックバンを控えた今後の国際化に通用しないことを現している。

すでに、10月の東京証券取引所の株式売上高一位にメリンリンチ証券が、二位にはモルカン・スタンレー証券の外資系証券界社が売り上げ一位、二位を占めている。これは、外資系証券会社が東証会員になってから初の出来事である。外資系が国内に比べ、優れている点は大きく3点ばかりある。一つには外資系の持つ財務分析能力がある。それに加え、各銘柄についての「買い」、「保持」、「売り」の客観的意見を投資家に提供する。対照的に国内証券は「売り」の情報を発行企業に遠慮して出したがらない。この点からも一般投資家も含め人気を呼んでいる。第二に売買技術が優れている。バスケット取り引き、デリバティブスなどの新商品に対して海外での経験を生かして相当国内証券とは差をつけている。第三に人材確保である。大手銀行、証券からの引き抜き、母国からの日本への派遣など人材が豊富である。実際の例として、外資系証券の従業員数は平均株価が過去最高だった89年12月末から今年4月までに15%増加した。(証券会社の全体の従業員数は同期間で約26%減少)

このようにビックバンを迎える前にすでに証券会社では外資系の躍進が目立っている。大蔵省は、脆弱企業の手助けなどせずに、今は倒産処理に法的整備などの努力するべきではないだろうか。いつまでも現状を維持することが出来ないのは今回の三洋証券倒産からも明らかである。