望月ゼミナールレポート

「日本経済の歴史的転換」 中谷巌著

第六章 企業家精神の発揚についての私見

E07−0736B 佐山浩昭

 

最近、ベンチャービジネスの育成が盛んに言われるようになった。これから高齢化社会が到来する事によって、労働や資本のインプットが減少するため、革新的なイノベーションが必要であるとみられているからであろう。しかし日本では、ベンチャービジネスが育ちにくい環境にある。具体的には、資金調達が難しい、「夢を現金化できない」というように成功報酬が少ない、ベンチャー精神を持つものがほとんどいない、などの理由があげられる。

確かにアメリカのマイクロソフトやネットスケープ社などの例を見ると、ベンチャー企業は革新的イノベーションを推し進める旗手的な存在である。しかし、革新的イノベーションはベンチャー企業の専売特許というわけではない。僕は、大企業こそ革新的イノベーションを積極的に考えていくべきだと思う。ただ大企業といっても、元々はベンチャー企業なのである。ベンチャー企業として成功したからこそ大企業としての地位を確立したのだ。ソニーやホンダは良い例であろう。大企業ならば、ベンチャー企業が頭を悩ませる資金調達も用意であろうし、知名度という武器

もある。それなのに大企業は「保守的」になってしまっている。

原因としてあげられるのはやはり意識である。ある程度企業が成長すれば、ベンチャー企業としての「成功」よりも「存続」に意識が向くのは当然であろう。この事は企業に限らず日本の経済としても同様ではないだろうか。戦後期において世界的にまれに見る高度成長を果たした日本は、現在GDPでもトップクラスの経済大国となった。つまり、アメリカなどに対しての追いつけ追い越せの目標はほとんど達成したのである。そのことが、日本の経済全体を「保守的」なものにしているように思われる。長期的な不況からなかなか抜け出せないでいる今日でも、昔日の栄光にすがるというわけでもないだろうが、必ずまた日本の経済は立ち直ると考えている人が多く存在する。日本の経済が立ち直るということは必ずしも空想ではないであろうが、そのためにこそ「保守的」を変える、つまり「意識」を変える必要があるであろう。この事は単に意欲を持ったベンチャー企業が誕生すればよいというわけではなく、日本のビジネスマン全体の意識改革が重要であると僕は思う。大、中、小、そしてベンチャー企業全体が革新的イノベーション探求へ向けて動きださなければ、これからの経済成長は望めない。

では、意識改革とはどのように進められていくべきなのであろうか。僕は最も根本的なものとして、「問題意識」をビジネスに携わる人々が持つべきだと考える。現状に満足しているだけではなくて、何かしら社会や会社に対して、不平や不満を持ち、その不満、不平が何によるものなのか原因を見極め、その問題を解決しようとする常日頃からの意識が最も大切である。この意識を持っていれば先に述べた大企業の中の「保守性」もそう深刻なものではなくなるのではないだろうか。企業の中の一人一人が、自分の勤める会社をより良いものとするために、努力しあうのならば、その意見交換の中から、革新的イノベーションが生まれるように思える。幸い現代は情報通信の分野が大きく発達してきている。企業内の情報通信網を使えば、自分の意見をすばやく直接的に、社長などの経営陣に伝達することができる。これを利用して企業内の活性化、効率化を図るのである。もちろん、その情報インフラ

を利用するビジネスマン達が活性化しなければならないのは言うまでもない。

97年7月15日の日本経済新聞には、ベンチャーキャピタルの投資額が急増していることが報じられている。ベンチャー企業の環境は徐々に良い方向へと向かってきているのである。これから多くのベンチャー企業が誕生すると思うが、ベンチャー企業に引っ張られる大企業という未来はさほど輝かしいものではないと考える。

上記の通り、すべての企業が現状に甘んじていることなく、より良い企業を作りだそうとする「問題意識」のもとで、更なる発展を遂げ、日本経済を活性化させていかなければ、この不況を乗り切ることはできないであろう。