日本経済の歴史的転換を読み終えて

E08−0678K 小野 公樹

 

今回ゼミで一冊の本を取り上げ各章毎レジュメを作成し、そしてそれについて討論をしてきたわけだが、その結果、日本経済が今後さらなる発展をするには何が必要かということが少しではあるが掴めきたように思える。

またゼミの新人戦では、日本経済の安定成長というテーマに基づき論文作成と討論会を行ったこともあり、理解の助けとなった。

そこでこのレポートでは、二つの活動でのテーマが酷似していることもあるので、自分なりの分析と意見を簡単にまとめ、さらに新人戦で触れることができなかった部分(自由化など)を補うことも含め前期の活動を締めくくりたいと考えている。

終戦直後、日本は焦土と化し、無論国内の経済も壊滅状態だった。そこで政府は経済の

回復と安定成長を優先させるべく、金融機関の保護・育成を目的とした政策を打ち出した。

例えば、普通銀行と信託銀行の分離・銀行と証券会社の分離・金利の横並びなど、現存す

る多くの規制はこの頃生まれたものである。

こうした国の手厚い庇護政策、後に言われるようになる護送船団方式の中で銀行は順調

に育っていった。ところが85年のプラザ合意がきっかけとなりバブルが急浮上し、銀行の乱脈経営・企業の財テクブームが起こり、その結果92年に政府が公定歩合の引き上げと不動産融資の規制を実施すると同時にバブルが崩壊してしまった。この上辺だけの景気のおかげで経済は大打撃を受け、とくに乱脈経営を行っていた銀行は多額の不良債権を抱えることとなった。

現在大手銀行は不良債権の償却を徐々に進めているが、中小銀行には倒産寸前のところ

もある。なかには経営が行き詰まっている企業に不正に融資するといったケースも現れた。

しかしいずれにせよ銀行はこの不良債権を清算しない限り、今後の円滑な活動は困難であ

る。しかも金融の自由化が本格的に行われようとしている今、以前のような国の保護を受

けられなくなり、より一層困難になる可能性がある。

長い間日本には銀行の不倒神話があったが、今後銀行の業務停止・解散・倒産が起こる

場合もありえる。しかし確実に銀行の淘汰というものが必要になってきている。

金融の自由化によるメリットとして大きく2つある。一つは金利の自由化である。日本

銀行と海外の銀行を比較しながら述べると、金利は本来需要と供給によって決まるべきものである。借り手が多く、貸し手が少ない時は金利が高くなる。このような具合に金利が決定されることを自由金利といい、海外の銀行の大半はこの仕組みである。

一方日本の銀行は日銀が決めたガイドラインにそって金利を決めていた。これを規制金利というが、これは護送船団以外のなにものでもない。当然批判が強まり、94年から完全自由化が始まったので今後の金利の動向にある程度期待できるようになると思われる。

もう一つは業務の拡大。これまでは銀行・証券・保険などそれぞれの業務には垣根があり

「業態別子会社方式」をとらないと参入できず、しかもその方式をとっても不十分な状態だった。そこで「金融持株会社方式」を取り入れることにより、相互参入の本格化を促進し、更なる競争の活性化につなげられる見込みが出てきた。

金融の自由化はメリットばかりではない。デメリットも存在する。例えば、競争激化による経営不振。これは様々な規制が緩和され業務の多角化が起これば当然のことでもある。

そして新しい金融商品開発の苦労。より多くの顧客を集めるためにはかかすことのできないものだ。さらには国外からの圧力。これにより日本の銀行より金利・サービスともに良質の海外の銀行が進出してくるで、手強い存在になるだろう。いずれにせよ、金融の自由化はもはや避けることはできない。

金融の自由化を実行するに当たって一番重要なことは、銀行にそれに耐えることのでき

る体力があるかどうかいうことだ。とくに中小銀行にとっては厳しい状況に違いない。しかし腐敗した金融業界の再編を行うにはもう他に術はない。国内はもとより世界に通用する銀行まで高めなければならない。銀行はお金だけでなく信用も取り扱わなければならないことを認識し、金融業界を先導する存在であるべきなのだ。

銀行を含め金融業界は日本の経済の根底を成すものだと思うので、今回の二つの活動を通じ、一番重要なのは金融業界の再編ではないかと考えるに至った。また、歴史的転換にもあったように、国民の意識改革というのも大切なのではないだろうか。