新人戦の報告
国民生活の向上
第1章
財政望月ゼミの主張
「財政構造改革法」は、公共事業を温存し、社会保障費の削減を優先的に行うとするものである。この政策は、将来に対する不安を国民に抱かせるものであり、社会的弱者に対し負担をもたらすものである。これは、国民生活の向上という観点から逸脱したものである。したがって、望月ゼミでは、この点に問題点を抱き、国民生活を向上させるために次のような主張をした。
経済波及効果の少ない公共事業を削減し、高齢化社会に備え社会保障費を充実させる。また、現在の不況を脱却するために恒久減税を行い、景気を回復させる。
正村ゼミの主張
増税を行い、それを財源として公共事業を行う。公共事業の内容は、高齢化社会に備え老人ホームなどの社会保障インフラを整備することである。増税を行って公共投資を行うことによる乗数効果を期待し景気回復を図る。
吉家ゼミの主張
公共事業を見直し、歳出削減に努める。増税か減税については全く触れていない。
鶴田ゼミの主張
公共事業を見直し、減税を行う。消費税率を上げることによって、減税による歳入不足を補う。
徳田ゼミの主張
公共事業を見直し、増税を行う。
討論の内容
正村ゼミから望月ゼミへの質問
望月ゼミは、恒久減税を行うと主張しているが、その財源はどうするのか。また、減税を行うことによって、赤字は増大しないのか。恒久減税を行うことは、財政改革を行うことと矛盾しないのか。
望月ゼミの回答
赤字国債を発行することによって、恒久減税の財源とする。赤字は増大しないのかという質問については、恒久減税を行うことによって消費の拡大を図る。これは、乗数効果が働き、企業の収益が増大し、家計にもその効果が波及し、景気が刺激され、国民所得が増加する。このようになれば、税収の増加が見込まれるので赤字は増大しない。また、景気が刺激されることによって財政改革も行いやすくなる。それに加えて、日本は世界に比べて法人税率が高いので、世界の水準に合わせるという意味でも法人税を下げるメリットは大きい。恒久減税は財政改革に矛盾するのではないかという指摘については、短期的に見れば一見矛盾しているように見えるが、中長期的に見ると、恒久減税によって景気を回復させてから財政改革を行えば、改革がスムーズに進むと考えられる。逆に言えば、景気を回復させることなしに財政改革を行うことは困難である。
望月ゼミから正村ゼミへの質問
正村ゼミは、増税を行って公共事業を行うと主張しているが、建設業界にしか経済波及効果が及ばず、無駄が多い公共事業をしても、景気回復にはつながらないのではないか。
正村ゼミの回答
増税を行って公共事業を行えば、確実に乗数効果が生まれるので、景気回復につながる。無駄の多い公共事業というが、正村ゼミでは、公共事業の対象を老人ホームの建設などの高齢化社会に対応したことを行うので、決して無駄にはならない。また、将来的にも需要が伸びることが予想されるので、建設業界にしか経済効果が及ばないということはない。
正村ゼミの回答に対する反論
増税を行って公共事業が行われれば確実に乗数効果が生まれるというが、これは、国民が政府に信頼を置いている場合にのみ通用することであって、現在のように国民が政府に対しあまり信頼をしていない状況のもとでは、乗数効果は期待できないのではないか。また、公共事業の対象を福祉インフラの整備に当てるというが、確実に福祉インフラの整備だけに公共事業が行われるという保証はないのではないか。
反論に対する正村ゼミの回答
国民が政府を信頼できるような社会になればいいのではないか。
正村ゼミから吉家ゼミへの質問
歳出削減をするというが具体的にどの分野を削減するのか。また、歳出を削減することによって景気回復は硬直化しないのか。
吉家ゼミの回答
社会保障費の無駄な部分を削減する。歳出を削減すれば、赤字が減りそのうち景気が回復する。
吉家ゼミの回答に対する望月ゼミの質問
社会保障費の中の無駄な部分を削減するとは、具体的にどの部分を削減するのか。社会保障費を削減すれば、社会的弱者に金銭面においても精神面においても負担が生じるのではないか。また、歳出を削減することによって、さらに景気が悪化するのではないか。現在の不況の一要因は、昨年の急激な歳出削減にあるのではないか。
吉家ゼミの回答
具体的な回答がありませんでした。
改正された年金改革法では、従来以上に高齢化と少子化が進んでいるために更なる見直しの必要性があり、支給開始年齢の再引き上げや給付水準の引き下げが考えられる。このような場合、定年制の延長や、高齢者雇用が可能となるような賃金や雇用慣行の見直し、労働者市場のミスマッチを減らすための情報提供や職業紹介機能の強化など支給開始以前の年齢層に対する雇用機会の確保が課題となるだろう。また、国民年金の財源不足を考えると厚生年金部分は廃止して、基礎年金部分だけにするべきである。そして今後 政府に老後の保障を全面的に依存することは無理があるため、厚生年金は民営化するか私的年金化することで、個人の貯蓄や民間の年金による自助努力をするべきではないだろうか。
医療保険制度も財政危機が深刻化し、患者負担の増加を中心とする改正法が可決されたが根本的な制度の見直しが必要である。現状は、患者と医師の間に著しい情報の非対称制があり、患者には情報判断能力がないため、医師の一方的判断、つまり供給がそのまま需要とされるので、市場による自立的な調整による適正な価格と医療サービスの供給が決定されていない。また、現行の薬価基準を廃止し、診療報酬体系は出来高払い制から定額支払い制にすれば過剰投薬・過剰診療は減少し適切な医療費の水準になるだろう。さらに、償還払い制度を導入することで、医療を受ける患者にコスト意識を持たせることが重要である。
高齢化に伴い、長期間にわたる介護を必要とする人が増えているため「社会的入院」という現象が生まれ、医療保険の収支を著しく悪化させている。介護保険の導入はこれまでの福祉介護の欠点を克服する利点があるが、公費で半額負担しているためコストも安いと勘違いされるという問題点も含んでいる。そこで、介護サービスは基本的に公共と民間の区別を無くし、民間が全面的に参入できるようにし、その上で消費者が官民どこからでも自由に選択できるようにすれば良い。また、サービスの質に対する要介護者側からのクレームを受け付けたり、サービスの充実を測る機関を設ける必要がある。
以上のような見直しとともに、現在縦割りに細分化されている年金・医療・介護などの社会保障を、それぞれつながりあえるように統合することが必要ではないだろうか。
金融
テーマ
金融規制緩和以降の金融システムのあり方第1節
金融システムの効率的市場形成への構造転換日本版ビックバンの導入によって、間接金融偏重の金融市場から間接金融・直接金融を兼ねた市場へ転換される。そこで、効率的な市場の形成という観点から、資金運用規制の緩和、証券市場の改革、業務の組織形態の自由化、そして金融インフラの整備についての必要性を考察した。
不良債権処理問題について
望月ゼミの主張 アメリカの不良債権処理の証券化に習って日本でも証券化によって処理をする。そのために証券化市場の整備として、SPCの法、税的制約の改革に、倒産リスクを軽減させるための民法の改正を早急に進めるべきである。しかし、キャッシュフローを生まない担保不動産も多々あり、それは証券化するには難しいため、公的資金で処理されるべきである。すべての不良債権を公的資金で処理するのは、最終的に国民負担の増加につながるので、国民生活の向上に反する。そのため、公的資金を最小限にとどめ、今後の日本の金融にとって証券化は重要であり、この金融緩和により証券化市場の創設をするべきである。
徳田ゼミの主張
受け皿銀行のみで処理する。正村ゼミの主張
受け皿銀行のみで処理する。鶴田ゼミの主張
受け皿銀行のみで処理する。吉家ゼミの主張
証券化により処理する。最終的には、不良債権処理において望月ゼミの主張が結論になりましたが、吉家ゼミ以外は証券化についてあまり調べていなかったのが残念に思いました。
効率的な市場において金融機関は、ROEの極代化の目的の下に、バランスシートの適切な運営を迫られる事になる。また、ROEの極代化を図る経営とは、自己資本をどのようなリスクに配分するかを考える経営ともいえる。そこで今後資金をリスクのある顧客にどのように対応し、リスクをいかに回避するかが問題となる。それには、証券化によるリスク回避や、先物などのデリバティブ市場を活用するべきである。また金融機関が顧客のニーズを満たすために創意工夫を生かす業務の自由度が大幅に高まる。そこで販売方法が多様化される中、テレホンバンキングや金融取引の電子化が必要不可欠になる。しかし、これらの金融技術は一部の銀行で行われているが、既に海外でこのような技術を用いた競争に馴染んでいる外資系金融機関に日本の金融機関は太刀打ちできないであろう。そこで、商品開発力や資本運用力の面で、外資系との合弁会社の設立や業務提携の形での協力は免れないであろう。また、今後生き残るためにはせざるを得ない選択といえる。
日本の金融機関の外資系金融機関との合併については、各ゼミとも同じ意見でした。
鶴田ゼミの自由討論
金融持株会社の解禁金融持株会社の解禁について規制緩和をするのにファイアウォール(業務隔壁)設定しなければならないということについてどう思うか
結論
インサイダー取引がされない程度にファイアウォールを設定するべきであり、規制緩和による規制強化の必要という矛盾した格好になりました。
正村ゼミの自由討論
保険機構今後の保険機構についてどう思うかについて
結論
まず不良債権を処理し、望月ゼミで述べた日本の金融機関の取るべき針路における外資系金融機関との合併を行い、いかにサービスを良くして競争に勝ち残っていくかが大事である。残りの2つのゼミでは自由討論が特にありませんでした。
全体のまとめ
金融規制緩和により、金融システムが改革され金融機関の競争が激化する。そうした中、消費者はより高度な金融サービス、高い金利を付けた金融商品の恩恵にあずかることが出来るようになる。しかし、消費者は取引先の金融機関や金融商品、サービスの選択とその結果に関して、厳しく自己責任を求められるようになる。しかし、国民生活の向上のためには、金融機関の経営内容開示に金融商品、サービス提供に伴う情報開示や説明の充実、いわゆるディスクロージャーが必要であることに各ゼミとも一致した。
第2節の自由討論では、各ゼミともバラバラの事をテーマにあげたため、討論がまとまりませんでしたので、自由討論は今後要らないのではないかと思いました。
新人戦を終えて
須賀
雅美討論はほとんど望月ゼミと正村ゼミだけで行われました。他のゼミももっと活発な討論をしてほしかったと思います。そうすればもっとたくさんの意見が出されて、より建設的な討論ができたのではないでしょうか。また、討論の時間が足りなかったので、充分に意見を発言できなかったことが残念に思います。
大滋彌
ゆう子社会保障については、どのゼミも似たり寄ったりで、大差のない主張だったため、特別論争にはならなかった。
個人的感想としては、討論する時間が短かったと思う。そのため、各テーマとも明確な答えが出ないまま終わってしまった。これはテーマを
3つも設定してしまったからだと思われるので、これからはテーマを2つにしぼって深く討論した方が、実りあるものになるのではないかと思う。また、準備期間中は授業、ゼミ、レジメ作成と毎日大変だったが頑張ったかいがあったと思う。
松木
弥来新人戦についてまず思ったのが、テーマ設定が広すぎたという事です。特に金融に関していうと、不良債権処理において証券化を調べていないゼミもあり、討論になりませんでした。今後、議長団はある程度のルール設定をしたほうがいいと思いました。しかし、新人戦に参加して、いろいろな事を学びました。日本経済について今まで以上に知識がつき、自分自身についても論理的に話し、相手を納得させる発言力がまだまだ足りないと実感しました。相手を納得させられなかった原因は裏付け
(資料)が不足していたからだと思いました。新人戦で得たこれらの自分にとってのマイナス面は、新人戦に参加してわかったので、参加してよかったと思います。そして、次のインナー大会に向けて、その弱点を克服していこうと思いました。
白木
学新人戦について実際終わって思うことは期間が短すぎてとても忙しかったこと
が一番に上げられる。しかし今は充実感にあふれている自分がいる。新人戦まで
は本当にやるせない気持ちだったが、試行錯誤しながら思ったことは先輩たちも
通ってきたわけであり、避けられない道であると割り切ってひたすら頑張ろうと
いうことだった。ほかのゼミの人に聞いてみても新人戦が終わるまでは本当に忙
しかったけれど、新人戦を終えて今まで頑張ってきて本当によかったと言ってい
た。新人戦によってゼミの皆と結束力を高めることができ、またほかのゼミの人
とのコミュニケーションを図ることが出来た点において、とても良かったと思う。