バブルの原因についての各自の論点 




  湊谷 崇志
 バブルの原因として考えていたのは、やはり85年のプラザ合意による一方的な低金利政策をとらざるをえない状態になった事だと思う。それにより国民の心理面にも日 本の成長期に入ったという考えが生まれ、金融機関や政府も油断が出てしまい、円高=好景気のような考えが日本人に生まれたと思う。また実際にGDPという目に見える 数値があったのも国民の心を揺さ振ってしまったのかもしれない。


  山村直子
 バブルとは、地価、株価などの資産の価格が、(*)基礎的諸条件からは、説明のつかないような上昇、あるいは不落を続け、最後に突然暴落、あるいは、暴騰するこ とである。その原因は、なんなのだろうか。背景として考えられるのが、国際協調のため日本は利上げを行うことが出来ず、日本に永久低金利の神話が登場したとうこ とである。その結果どのようなことが起こったのか、一例を挙げてみる。
銀行において、永久低金利とは、永久融資難を意味し、銀行に貸し焦りをさせる。そうなると、投機的金融といったような、貸し出しの飽和状態をもたらすことなく、 さらなる借入需要を引き起こすというまさに、典型的なバブル経済を引き起こすのである。
すなわち、バブル経済の原因は、国際協調のための国内の政策の限界。また、それによる人間の期待心理といえよう。

(*)資産価格の基礎的諸条件
1:資産保有に伴う予想収益
2:その資産と、裁定関係に立つ金融資産の金利
3:予想収益が外れるリスクに対する主観的評価=リスクプレミアム

  大内 伸哉
 バブルが発生した主な原因は、地価や株価の投機的高騰だが、それを起こさせるきっかけにもなる85年のプラザ合意ではないかと私は考えます。このプラザ合意(他 にもドル暴落の危機)により、日本政府は低金利政策を取らざるなくなってしまったのである。この結果が、財テクや土地への投機などにつながり、実在しない好景気 をつくり上げてしまった。(国民は、実在しない好景気を受け止めてしまった)
他の原因として、プラザ合意以前の政府の政策にも問題があったのは確かである。また、日本人独特の「横並び意識」や「(滅亡しないという)おごり」がバブルを膨 張させた事も重要視しなければならない。

  両角卓馬
 バブルの原因として85年9月のプラザ合意を契機として超金融緩和状況、低金利政策によって企業や家計等の各経済部門における土地取得能力が増大すると共に、投 資対象としての土地の相対的有利性が増大することにより、土地に対する需要が増加し、地価の高騰を招いたことが上げられる。
しかし、それ以前に地価の上昇を招く 要因があった。それが85年5月に国土庁がまとめたリポート、「首都改造計画」である。この中で、オフィスビル床需要が事務用機器の導入、執務環境の向上等により (1985年当時)東京23区で2000年までに床面積約5000ヘクタール(超高層ビル250棟に相当)の需要が発生すると予測している。その当時、情報化国際 化の進展が実需要因として都内商業地の価格を上昇させていたのであるが、そこに低金利政策と改造計画の都心の床需要増加の指針を受けて銀行資本との癒着を強めた 法人企業が実需を離れた投機的な土地取得に走り、バブル経済を生み出していった。また日本の場合、土地投機によって得られた含み益に対しては一切税が課せられな い為、法人企業はその含み資産を担保に金融機関から高額の資金を借入れ、さらに土地を購入すると言う連鎖を繰り返していた。これを防ぐために税制の役割が重要で あるが、固定資産税は実行税率が非常に低く、税率が土地によって異なるうえ、過去の地価の上昇率が大きかった地域ほど実行税率が低いなどの不備があった為に、土 地投機を抑えられなかった点にもバブルを増大させた原因があると考えられる。

  白木 学
バブルの原因について
ここに挙げた要因は単独ではなく、どれもがバブル発生と存続に関与していた。
国際協調政策
 1980年代の前半に米国のとったドル高・高金利政策は米国の赤字拡大をもたらし、国際収支の不均衡を是正するために1985年にG5が開かれ、協調介入によるドル高是 正と日独の内需拡大、公定歩合の引き下げを各国が協調して行うという「プラザ合意」がなされた。公定歩合は1983年10月より2年ほどは5%であったが、1987年2月には 2.5%にまで引き下げられた。
金融自由化
 1979年に譲渡性預金が導入され1980年代には大口預金金利の自由化が進められ、これにより企業が「財テク」へのインセンティブを高めたことがあげられる。また一 方で日本では未成熟であった株式市場(直接市場)が整備され、企業が銀行を介さずに低利で資金調達が可能になった。つまり、企業は株式や社債の発行により資金を調 達し、これを金融商品の購入にあて差益により収益を増加させていた。
金融機関のモラルハザード
 融資先を利益率が高い対象にシフトさせることにより、大企業よりも不動産業業への貸付が上昇した。このこととエクイティファイナンスが容易になったことが大企 業の銀行離れを促進し、銀行は業績悪化を防ぐため多少危険な物件に対しても融資を行うことになった。
その他の要因
 誰もが日本の高成長を期待し、マスコミが財テクを煽り、為替レートの変動による世界との比較における一人あたりGNPが大きくなったことは、多くの錯覚を抱かせ た。日本の教育機関や研究機関が未熟で影響力を持たなかっため、景気のゆき過ぎに対して警鐘を鳴らすこともできなかった。

  庄子穏行
バブル経済の原因
<定義>
バブルとは一概に定義はできないが、経済のファンダメンタルズ(成長率や金利、インフレ率などの経済的要因)で説明できる以上に株価や地価などが上がる状況を指 す。
<特徴>
・大きな投機は歴史上何回も繰り返されてきている。
・投機のきっかけは、世の中が変わったとか金融上の革新があったとかいうことである。
・投機が進むと人々は、陶酔的な熱病(ユーフォリア)にかかったようになり、どんな規制、警告、経済学的な知識にも耳を貸さず、投機は行き着くところまで突き進 む。
・やがて投機は急激に崩壊するが、それに参加した人々の責任が問われることはなく、またすぐに忘れられてしまう。
<責任>
バブル経済の責任は果たして誰にあるのだろうか。
結論から言うと、私はすべての人にあると考えている。まず、日銀、大蔵省、政治家のプラザ合意以降の低金利政策、超金融緩和、内需拡大政策。次に、経済学者がバ ブルを見抜けなかったこと。都銀の横並びの業務拡大競争。チェック機能の欠如、そして、なによりも私たちの心理。
<メカニズム>
あがるから買う、買うからあがるという自己増殖メカニズムがビルトインされた。
株価・地価の上昇→株や土地の担保価値上昇→銀行の貸し出し増加→株・地価の上昇。
株価の上昇→エクイティファイナンス→企業の株式運用増加→株化の上昇。
<考察>
私たちが生きているこの世の中に絶対的な真理は存在しないのだろうか。こうすれば、こうなる。こうやれば、こうなるという明確な答えみたいなものがあったら、楽 かもしれないが面白みに欠ける世の中になるだろう。しかし、絶対的ではないにしろ、確率的にある程度説明できるパラダイムというものが存在する。バブルの原因も 実際にその時代の中でバブルに酔っていた人にはわからないものだが、バブルが崩壊した今、バブルという原因を後知恵ではあるが、追求することは大いに意義がある ことだろう。その原因を客観的に広い視野の中で経済学というツールを使って、そのパラダイムで冷静に捉えなおしてみたい。
物事には原因があり、結果がある。その結果も必然的なものと偶然的なものとの両方からなるのだろう。理論では正しいことも、偶然という要素が絡むと現実は説明で きなくなる。要するに、現実は理論を超越しているのである。では、バブルはどのようにして起こったのだろうか。必然だったのだろうか。偶然だったのだろうか。い や、その両方なのだろう。以上のことを人間を基本にして考えていく。
バブルの絶頂期、日本人には驕りというものがあった。日本は世界でナンバーワン。そんなうぬぼれや傲慢があった。日本のシステムはもう完成されている。アメリカ も抜いた。そんな驕りがあったのだろう。諸行無常の響きあり、盛者必衰の理をあらわす。平家物語の冒頭の書き出しだが、この驕りこそ人間を滅ぼすものになり兼ね ない。この世の中に完成された普遍的なシステムなんか存在しない。常に、変化の中で変わりつづけることこそが、普遍的なシステムなのだから。日本人はその変化に 対して、自己革新していくのを忘れたのではないだろうか。現在の不況は自己革新を、前に進みつづけることを止めた日本の当然の結果といえる。前に進みつづけるこ とは終わりなき旅であるのに…。

次に、投資と投機の違いからバブル経済についてアプローチしていく。
投資とは利益を見込んで事業に資本を出すこと。出資。 投機とは物価の変動を予想し、多くの利益を得ようとするための取引。いちかばちかの仕事。 本来、健全な経済に必要なのは投資である。しかし、バブルの時代、なぜ人々は投機に向かってしまったのだろうか。長期的な視野に立って、自分の利益を考えること は目先の利益を追いかけるのに比べてはるかに難しいこと。短期間で莫大な利益が手に入る可能性が目の前にあるとき、人はその誘惑に勝てるだろうか。少なくとも、 多くの人々はその誘惑に抗しきれないものだ。お金は地道な生産活動や、思慮深い投資よりは、どうしても投機に走ってしまうのだ。なぜなら、地道な手段でお金をも うけるには、多大な労力と技術、そして時間がかかる。だから、それよりも短期間でもうかる「投機」にお金が流れるのは、ある意味では必然なのだろう。人間の弱 さ。楽なほうに楽なほうに行くのが人間の心理ではないだろうか。周りの価値観に合わせて、みんなそうしてるから、みんなと同じようにする。このことにバブルが潜 んでいるように思えてならない。

  <参考文献>
ゼミナール日本経済入門 日本経済新聞社

  吉沢裕典
 バブルの原因は後になってみれば、あれやこれや言うことができるが、やはり一番大きいのは心理面の事だろう。具体的には「投資から投機」といった儲け方のシフト が原因だと思う。世界では何度かバブルが起きている。やはり、歴史から学んでいても、目の前の儲け話には人は簡単に乗りがちだと思う。

  堀容子
 バブルが発生した原因は、金融自由化によって「財テク」指向が高まったことや、ドル暴落の危険性を考慮して、長期に及ぶ低金利政策をし、国際協調を優先にしたこ とにあったのは確かであるが、原因はそれだけではない。
まず、投資のポイントが、目先の利益(投機)に走ってしまったことである。また、株式が上がるという“時のムード”に流され、資金の運用方法を間違ってしまった。
需要よりも先に供給がなされていったことが挙げられる。次に、日本の金融システム自体遅れており、誰もそれに気づかなかった。それにもかかわらず、銀行競争によ る不確証な貸出視野土地に対する過大評価がバブルを膨らませていったのである。
日本は客観的に事の真髄を見ようとせず、ただただ株式の値上がりにうかれていた。今後の教訓として、自分にとっての価値を冷静に考え、投機・投資をすることが大 切であるとわかった。

  Wataru Kaneko
 バブル経済の原因となったものとして、株や土地への投機による実 体のない株価、地価の値上がりが結局は破綻を招いたことだが、それ まで日本政府に低金利政策をとらざるを得なくした根本的な原因は8 5年のプラザ合意にあるのではなかろうか。
アメリカが行った、自国 企業の競争力を高めようとする、円の対ドルレートを切り上げるとい う円高を狙った政策は、結局は日本企業の円高対策の前にさしたる効 果はなかったものの、バブル直前の日本不景気の原因を作った原因の ひとつであった。そこで日本政府は金利を引き下げ、景気を維持する 政策をとらざるをを得なかったのだ。
その結果、企業が財テクや土地 への投機に周り、高騰を招き、実体のない空洞的なこう景気は破綻し 、その後の深刻な不況を招いていった。その影響は現在でも国民生活 のみにととまらず、日本政府の取る政策にも大きく関わっている。そ れは、その後の日本政府の非効果的な政策とあいまって、日本がいま だかつてない長期の不況期を抜けられない直接的な原因となっている。