頑張れドリームキャスト!!

                              河合信貴


自分はセガというメーカーが好きである。セガの出すソフトは非常に面白い。今も私の家ではメガドライブが現役で頑張っている。もちろんセガサターンも使用中だ。しかし32ビット機では結果としてソニーに敗れてしまった。そんなセガの未来を一進に背負って登場したドリームキャスト(以下DC)。先ほどソニーはPS2を発表し、また任天堂も新ハード「ドルフィン」を打ち出してきた。これにより次世代機のライバルたちが姿を見せてくる中で、発売から半年が過ぎ、シェア50%の獲得と言う発売当初の目標はおろか、これまでのDCをめぐる流れは予想以上に険しいものになっている。来るべき21世紀のゲーム市場においてDCが生き残るためにはどんな道を進むべきか、いちセガファンとして考えたい。

まずDCの現在までの状況を見る限りここにいたるまでのセガの戦略は、必ずしも成功したとは言いがたい。ハードの需要が非常に高い発売直後に、生産の遅れからハードの供給が間に合わなかったことは、DCのスタートダッシュに急ブレーキをかける結果になってしまった。しかもようやくハードの生産が需要に追いついてくる時期になると、今度はソフトの発売が次々に延期され、ハードはあってもソフトは無いという状況を生み出してしまった。そして3月2日、PS2の発表が行われた。すでにDCを購入したユーザー、さらにこれからDCを購入しようと検討していたゲームファンにとって、PS2の存在は大いに気になるものがある。だがセガはこの時点で、PS2への具体的な対抗策を、一般の目に見える形で打ち出すことは無かった。その結果として、DCに対する不透明感が生まれ、ゲーム市場全体にDCは「待ち」という空気が漂ってしまったのではないだろうか。

 さらに4月末には、セガの99年3月期の連結最終損益が約450億円の赤字となり、それに伴いセガは従業員約1000人の人員削減を含むリストラ策を行うことを発表した。この件に関して、DCの事業が直接的な影響を及ぼしているわけではないが、DCを擁するセガの先行きに対して、ゲームファンが不安を感じてしまったことは否めない。

 その状況を打破すべく,強力な刺激策として打ち出されたのが今回6月24日から実施されたDCの本体価格を29800円から19900円に約1万円引き下げたことである。しかし今回のDC本体の値下げに関しては、昨年11月のDC発売以来、約半年という短期間での価格変更ということで一般マスコミからは早くも「投売り」「セガ惨敗」との声も聞かれる。確かに、この春のDCの売上ははハード、ソフトとも予想以上に低迷していた。だが、ハードの値下げは、メーカー戦略としてこれまでもしばしば行われてきたことである。

 1995年6月から7月にかけて、セガとSCE(PS陣営)はそれぞれ、発売から半年あまりのセガサターン(以下SS)とプレイステーションを互いに一万円ずつ値下げしている。SSはさらに五ヶ月後に5000円キャシュバックキャンペーンを実施し、さらにその4ヶ月後には2万円の廉価版を発表している。もちろんSSとDCでは、ハードをめぐる状況は異なっている。SSの時にはPSという明確なライバル機が存在しており、その相互での価格競争と言う構図になっていた。だが現在のDCでは、世代的に見合うライバル機がまだ市場には登場していない。結果的にDCの価格は、すでに市場に投入されてから数年が経過しているPSやニンテンドー64(以下N64)と比較されてしまったために、ハイスペックの新機種としては苦戦を強いられたというのが実情だろう。そのため、ここでDC本体が2万円をきる価格にまで値下げされたことは、消費者にかなりの割安感を与えてくれるだろう。しかしその一方でいくら本体の値段を下げても、ユーザーのほしがるソフトが無ければ意味が無いのも事実である。今回の値下げ発表以降も、注目作の発売延期が相次ぐなど、DCのソフトの発売時期については、まだまだ不透明な部分も多い。本体価格というひとまずのハードルをこえたDCに対して、次に求められているのは、長期的なソフトラインナップの安定であろう。

 現在のDCの状況は、以前のN64とよく似ている。N64もまた本体価格引き下げによって普及を促進しようとしたが、実際に本体の売れ行きが伸びるには、「ゼルダの伝説」というキラーソフトの登場を待たねばならなかった。本体価格が2万円を切ったことで、DCが普及するための必要条件はそろったと言って良いだろう。あとはその普及を一気に促進するためのパワーを持つソフトがいつ登場するかである。

魅力的なソフトの登場だけがDCの救世主ではない。それ以外にもDCの飛躍の可能性は数多い。まずはTVCM戦略である。これまでにセガは「せがた三四郎」「湯川専務」というキャンペーンキャラクターを世に送り出してきた。しかし「せがた三四郎」はSSのソフト発売自体が減少傾向の中で、DCの発表もありユーザーの多くがSSから離れていった後のキャラクターであった。先の「湯川専務」シリーズでは、DCの知名度は飛躍的にあがったものの、それが商品の購入には直接的に結びつかなかったという問題があった。

さて今回のキャンペーンキャラクター「後藤喜男」がこの問題をどう解決するかが、非常に楽しみである。

 次はDCがもつネットワーク通信機能を利用した様々な可能性である。まずは見知らぬ相手とのゲームの通信対戦である。これはすでに行われており、約20万人のユーザーが利用している。アメリカ及びヨーロッパ諸国では通信機能を利用したゲームはかなり盛んに行われている。例えば「ディアブロ」といったゲームは日本でも多くゲームファンをとりこにした。しかしネットワークゲームはその数、質ともにまだまだであり、これから伸びてゆく分野である。この分野にに日本の優秀なソフトメーカーが多く参入すれば、多くのハイレベルのソフトが生み出され、またパソコンとは違いもともとゲーム機のDCの方がコストパフォーマンスにはすぐれているためネットワークゲームのプラットホームにDCがなることは決して夢ではない。もちろんリアルタイム対戦だけが通信の利用法ではない。例えばインターネットを利用してデータを交換することで、他人の作ったキャラクターを自分のゲームに登場させたり、各ソフトからそのゲームの専用ホームページに直接アクセスできるようにすることで、ユーザーとメーカー、あるいはユーザー同士の情報交換を可能にできる。通信によってゲームの楽しみ方は確実に広がって行くことになる。

 さらにこの4月にセガは、米国のアイオメガ社と共同して、DC用の外部記憶装置となるZipドライブを開発していると発表した。このドライブにZipディスクを挿入することで、DCは最大100MBもの大容量を読み書きできるようになる。現在のところDCの記憶媒体として使用されているビジュアルメモリは、携帯ゲーム機としても使用できるなど応用性が高い反面、記憶容量の少なさが指摘されてきた。Zipドライブが登場することで、大容量のセーブデータを必要とするシミュレーションゲームなどのプレイがより快適になるほか、ユーザーの行動に応じて世界のものが変わるような、個性的なソフトの登場も可能になるはずだ。だが、このZipドライブが真に威力を発揮するのは、先ほど説明したDCのもつネットワーク通信機能においてである。現在のDCでは、モデムを通じてインターネットに接続できると言っても、その機能はホームページの閲覧などに限られていた。しかしこのドライブを利用すれば、電子メールやホームページの画像を保存したり、インターネットを通じて音楽データやゲームソフトの追加データをダウンロードしたりといった、現在のパソコンと同様のネットワーク機能が実現可能となるのである。

ところで、大容量の記憶媒体と言うと日本ではMOディスクのイメージが強い。だが海外のパソコンユーザーの間では、このZipディスクが広く普及しているのである。今回、DCの外部記憶装置にZipが選ばれた背景には、アクセススピードの速さや衝撃への強さと言ったスペック的な点ももさる事ながら、通信機能の需要のより高い、海外ユーザーへの馴染みやすさという事もあげられ、セガは海外市場にメガドライブ時代の強固な地位の回復を目指してもいるのだろう。

最後にセガのもつユーザー層のかたさもあげられる。もともとメガドライブ時代からそのユーザーはゲーム市場のコア層が多くを占めていた。そしてそれはSSにも引き継がれ、ゲーム人口のコアをなす熱狂的ファン、つまり主要ゲーム購入者はほとんどSSを持っていた。(ゲーム市場における「コア」層とは、PS,SS,N64の内2機種以上を持ち、1ヶ月にソフトを2本以上購入する人をここではそう呼ばせてもらう。)そしてそのコア層は日本全体で100万人はいるといわれている。まずはそのコア層をすべて取り込むことができるかがDC発展のカギを握っている。コア層の取り込みはソフト売上の安定化をもたらし、サードパーティーの参入を促し、ソフト自体の販売数をアップさせることになる。また質の高いソフトをコアユーザーは求めるため、DCのソフト自体の質も向上する。消費者はゲーム機の性能で本体は購入しない。いかに面白いソフトが数多くそろっているか、発売されるかで買うのである。現在のところDCはコアユーザーが求める質の高いソフトはあまりそろえられていないのが実情である。しかし今後発売されるソフトには期待が十分に持てる。コナミの「バイオハザードCODEVeronica」、セガの「バーチャロン オラトリオ タングラム」、レッドカンパニーの「さくら大戦3」、ナムコの「ソウルキャリバー」、ゲームアーツの「グランディア2」などいずれもミリオンを十分狙える良質なゲームである。これらの一刻も早い発売がDCには望まれる。

現在DCの発売台数は値下げ前で約68万台である。この数値は決して低くは無い。PSは約5ヶ月で100万台出荷、N64は約10ヶ月、SSは約6ヶ月である。これらの数値と比較してもDCの伸びはまずまずと言ったところであろう。そして今回の値下げとソフトの発売で今年中に100万台は突破するだろう。そして今年末には次世代PSの発売も迫っている。そのころにDCはどうなっているか非常に楽しみである。まとめとしてDCには数多くの可能性があり、それを十分に生かし、ゲーム機という本質を見失わなければ、今後のDCの未来は明るいものになるだろう。私も前期試験が終わり次第DCを購入するつもりである。(まだ買っとらんかったんかい!!)