今週の顔 |
Kabuyane.S
最近、日本経済新聞などを読んでいると日本人とネット(主にインターネット)の親和性が高まったと声高に言われています。これは特にiモードの普及をさしていて、現在契約数は600万人を越えて増え続けている状況をもとに、従来の議論では、一般家庭へのアメリカでのインターネットの普及率と日本のインターネットの普及率を比較して「日本人はネットに対する親和性が低い。」と言われていたのですが、これがiモードなどの携帯情報端末の普及から一気に逆転し、日本はインターネットの普及率が高まった、とされています。 携帯情報端末によって、パソコンで見ることができるインターネットと同質のものを享受出来るか、ということは別として、少なくともE-mailを見ることが出来る端末を多くの人が持つようになったことは間違いありません。 新聞などをみるかぎりでは、要約すると「次世代のネットの主導権を日本が握る、そしてこれが景気回復の切り札である。」という論旨が多いようですが個人的には疑問を感じつつ、、、さておきiモードなどの携帯情報端末の普及が日本や世界のネット事情をどう変えていくのかを、iモードが日本にネットの普及を促し、日本人はその普及に適合していたと仮定して、一体それは一体どういうことなのかを、考えて行きたいと思います。 まず前提条件として欧米の現在の状況を見ると、日本の携帯電話事情が世界で一番進んでいるのは間違いありません。しかしその状況は次世代のIMT-2000をにらんでNTT DocomoとJ-PHONE(日本テレコム)がW-CDMAを採用し、KDDI(DDI/IDOとTu-ka)が一旦はW-CDMAの採用に動いたのですが、結局cdma2000を採用したということで実際はまだまだ混沌としているという状況です。アメリカで主流となると見られているcdma2000のサービスがはじまるのはまだ先のことなので、アメリカ主導の規格であるのに日本でのサービスインの方が早いということになります。iモードサービスをするNTT Docomoは同時にWAPフォーラムのメンバーでもあるし、どの規格とどのサービスが主導権を握るのか、不確定ですが探りながら、上記の疑問を追ってみたいと思います。 消費者側の視点からするとiモードはE-mailなどのインターネットに対応した端末、という見方が一般的だと思いますが、携帯電話の歴史からするとこれはかなり大きな変化だと思います。その意味する所は、従来のショートメールなどのサービスとは一線を画するものだということです。 最初のショルダーフォンやTACSなどの名称でサービスが行われていた第1世代にあたるアナログ携帯電話が帯域不足などの理由から現在の主流であるPDC方式(第2世代)に置き換わったところから携帯電話の普及は始まります。普及を促した特に大きな要因として、保証金の廃止、新規加入料の値下げ、そして買い切り制度の実施を挙げることができます。買い切り制度により端末の値段は劇的に下がり、これが携帯電話普及におけるブレイクスルー(簡単に言えば、たくさん売れるための要素のようなもの)となりました。何かしらの製品、サービスが普及するとき、特に通信などのハイテク分野ではその傾向が強いと思うのですが、ブレイクスルーが見うけられます。一度臨界点を突破するとあとはネットワークの外部性(簡単に言えば、たくさんの人が使えば、今やみんなが持っているから使えるよね〜ってこと)が働き加速度的に利便が増します。ハイテク産業が一人勝ちの様相が強いのもこうしたところに理由があると思われます。携帯電話の場合ブレイクスルーは価格の低下であり日本のインターネットの普及におけるブレイクスルーはiモードであったと言われようになるかもしれませんね。近い将来には。まぁ、このあたりの評価は現状では確定できませんけど、、、 そんな話もありつつ、その後PDC方式も急激な利用者増加の帯域不足から、フルレート方式からハーフレート方式への移行を余儀なくされて、このあたりから特にPHSと比較して音質の悪さが言われるようになり、デジタルホン(現J-PHONE)はフルレート方式を固持した為、音質のよさをセールスポイントにしていました。(この音質問題を改善するためにNTT Docomoは[208と502シリーズ以降]ハイパートークシステムの導入をしました)また2.5世代といわれるcdmaOneは音声品質の良さを売りにして登場しました。 iモードの利点を主にcdmaOneと比較してみると、iモードは携帯電話としてみれば基本的には800MHz帯を使用するPDC方式の機体で、それにiモードサービスというパケット課金によるインターネットサービスを付け加えたものといえます。例えばパソコンと繋いで通信するという用途に関してはcdmaOneの64kbps(65,536bps)には遠く及ばず9,600bpsに過ぎません。このことから、非常に独立性の高い自己完結したインターネットサービスと言えるでしょう。ここで重要なのは、ユーザーが求めていたのは速い通信速度よりも、いつでもどこでもメールが受け取れて気軽にネットを見ることができる、という環境だったということが明らかになったということです。もちろん現時点でも速い通信速度に対する需要がないわけではありません。その点においてPHSの安価で速い通信速度という優位性は保たれています。現在のiモードはインターネットを身近にした、インターネットということを特に意識しないでも使えるようにした、という点では革新的ですが、逆にいえばそれ以上の発展性はないとも言えます。 次に次世代携帯電話規格であるIMT-2000ですが、世界的な規格統一を狙っていたものの調整がつかず結局その中にふたつの規格が並立することになりました。アメリカが主導するcdma2000と日欧が主導するW-CDMAです。特に欧州は現行のGSM方式(ヨーロッパに旅行に行った人はみたことがあるかもしれませんがICカードを挿すやつです)を更新するだけでよいW-CDMA方式を押しています。もともとW-CDMAはDocomoが提案した規格ですが、日本ではW-CDMA網をイチから構築しなおす必要があります。基本的な性能にはほとんど差はなく単純に方式の違いなのですが両者に互換性はありません。 説明はこの位にして、話を元に戻しますと、、、 まず携帯電話が日本に爆発的に普及した要因を探ると、ひとつに携帯電話製造におけるアドバンテージ。とかく小型化に関しては日本のメーカーは非常に得意です。そしてそれに伴う価格の低下。またキャリア間(Docomoとか、J-phoneとか)の競争がキックバック(販売促進費:10ヶ月使わないとダメとかの「シバリ契約」ってやつのおお烽ニ)などの複雑な販売方式を生み出し、見た目上の価格がほとんど無料というところまで下がったことがあると思います。 文化的な背景にまで話を広げるなら良くも悪くも古くからいわれている中産階級意識の高さがあります。誰でも毎月の電話料を払って携帯電話を維持することが出来る財力と、またプライベートで携帯電話を持とうという意識があります。いつでも気軽に繋がっていたい、伝統的に個より和という意識がここでも現れているのかもしれませんね。ここでは「個」の薄さを指摘したいのですが、逆説的にいうと携帯によるコミュニケーションは他のコミュニティとの接触を容易にする、そうすると今までより遥かに多い人との繋がりを持つことが出来る。必要以上の接触を持たないドライな関係が生まれる可能性が多分に増える、そしてこの状況はたった今、考えているより早い速度で先へ進んでいると思われます。陳腐な言葉でいえば欧米型の「個」を重視する文化が生まれる可能性もあるのではないでしょうか。(本質的にそれと日本のそれは異なっていると思いますけど) iモードがもたらしたインターネット化を上記の考えにあてはめると、まず便宜上iモードユーザーとパソコンと電話回線などを使ってインターネットに繋いでいる人を区別して考えます。iモードはインターネットのオープン性を取り入れたクローズドな環境で、インターネットで提供されている機能の一部を"持ち歩ける"という形で再構成したものにすぎないのです。“すぎない”といってもこのことは重要な点で、今までもモバイルという考えやノートパソコン、PDA(ザウルス等)などそれこそ数え切れないほどありましたが、一般的といえるところまで普及はしませんでした。あくまでiモードという標準的な端末に機能が盛り込まれていて、それをみんなが持っているということが非常に重要なことなのです(以前に書いたネットワークの外部性)。インターネットという便利なものは結局収斂されて、一部のところへ情報は蓄積されていく、オープンの中のマスという奇妙なような実に巧妙な仕組みがあると私は考えます。簡単に言うと、インターネットっていうオープンな世界な世界のはずなのに、iモードってほとんどの人はDocomo公認の決まったサイトぐらいしか行くことができなくて、それってオープンなインターネットにアクセスしているようで実は決められた情報しかみてないわけで、そういうことを、知っていて使うなら便利なものだけど知らないで使うことは全体として恐いことなのではないかと私は考えます。 iモードが日本にインターネットをもたらした、という言い方をするならそれはあまり喜ばしいことではないと私は思います。インターネットという文化は日本人にとって(総体として)無用のものであったということになってしまいます。もちろんインターネットは私たちの生活に浸透しつつあり、コンピューターに対する意識も変化しています。そしてこれからはネットが商売になる時代が来ようとしています。今はその過渡期といえる時期であり、日本人とネットについて考え直す時期なのではないかと私は考えます。 最後まで読んで下さった方、、、ありがとうございます。お粗末な文章で申し訳ございません。ここでは、iモードが現在(2000年6月現在)使えないという事を前提として書いていますが、来年度か、再来年度からパソコン通信対応の端末が発売されるという事を小耳に挟みましたので、その続報もできたら皆さんに発表したいと思います。 どういう形で発表するかはまだ決めていませんが、また、発表された作品を何処かで見かけたら読んでみて下さいね。 では、またいつか何処かで、、、 最後の、最後に、、、 もし宜しければ感想をお聞かせ下さい。 eメールは w100263@isc.senshu-u.ac.jpまで。 |