●津ヶ原 正博 ●堀容子 「空洞化」に対して、このままでは、日本経済の衰退を導くとされていますが、逆に、高齢化する日本社会にとっ て、産業の海外移転はむしろ、望ましいと考える見方もあるらしい。「空洞化」も、産業構造の調整にすぎなく、現 在の日本の経済の自然な転換であるということです。私も、単純労働などは、海外に任せて、日本では、質の高い、 高度な技術を使った高級な製品の生産に力を注ぐべきだ思います。高齢化社会に向けて、新たな高齢者向けのビジネ スも開拓していくことも、日本の弱い産業からの転換に必要なのではないかと思います。 ●金子 渉 この6章で取り上げられている産業の空洞化の問題に、日本はかなり前から直面していた。海外直接投資の増加によ って、内外価格差が増加の一途をたどっていることは、以前から叫ばれており、実際に、貿易は取引先の国を次々と 変え、今ではアジアで、また同じ事をやろうとしている。しかし、かつては海外の技術と投資を受け、それらを駆 使、応用して発展を遂げた日本が、今度は逆に投資する側に回るようになたとき、安価な海外製品に押されて、内外 価格差がさらに広がっていることは皮肉な結果である。 現在、アジア各国は通貨危機に陥ってはいるものの、日本の貿易相手国全体のうち、アジアの占める割合は、減少し つつも依然高い比率を占めている。経済的にみた「先進国」から見れば、アジアの安い労働力は魅力であり、投資し た方の国はそれを使って大きな利益を上げることが出来る。さらに海外直接投資による相手国の雇用の増加と、経済 的な波及は大きく、純粋に経済的に見た場合、経済に大きく発展の余地を残す国々に対して、直接投資は歓迎される ものであろう。 しかし、実際は安い海外からの輸入部品により、日本国内の中小企業群は危機に直面させられ、日本の産業の基盤と して多くの大企業の下で下請けをしてきた中小企業は、親会社にも見放され、倒産や縮小に追いやられる結果となっ た。日本は自分で自分の家の土台を崩したのだ。また、直接投資先の環境の破壊や、現地人作業員の不当な待遇など も目立ち、経済的側面以外からは疎まれているのが現状でもあろう。 やはり、経済はバランスが大切で、そのバランスを崩した結果が、貿易摩擦と産業の空洞化という、2つの方面から の圧迫であったのだと感じた。 ●山村直子 現在、対等合併、救済合併など世界的な規模で産業間の再編成が、行われているが、今後も更なる活発化が望まれる し予想される。企業活動の拡大のためには、先行き不透明さを早急に拭い去ることが求められる。拡大された企業 は、さまざまな分野においてより良い供給を生み出すように努めるであろうし、不透明さを取り払えば、買い渋りも 少しずつ緩和されるのではないか。日本国民は、ストックがないわけではないので、それを引っ張る立場である政 府・企業は、具体的には、どう立ち回るのが効果的か考えてみたいと思う。 ●両角卓馬 日本経済の更なる空洞化を避けるためには、段階的な規制緩和を実行しなければならない。そうすることで、中長期 的には内外価格差の縮小につながり、親企業と下請企業とのネットワークを再構築することが出来るとともに、対日 投資の増加によって経済が活性化され、労働需要も増える可能性がある。しかし、対日投資を増加させるには様々な 規制撤廃などの社会、経済構造の改革が求められる。そのためには国に頼らない民間の自助努力が必要である。ま た、小子化が進む中での貯蓄率の低下に関しては、高齢者の労働と、就業時間の短縮や業務を2展開にするなどし て、若年中年層の労働人口とを増加させ、現在の貯蓄率を保ち、技術革新を進めるべきだと思う。その結果、更なる 労働力需要が得られるだろう。だが、政府は数的対策しか提案しておらず、対応の遅れが懸念される。このままでは 世界的なグローバライゼーションの中、日本経済は孤立、空洞化が進んでしまうだろう。 ●湊谷 崇志 日本経済は今8月の急激な円安から11月現在で25円ほどの円高に成長した。そ れだけに国内の輸出企業は大きな貿易黒字になっている。しかし、それは名目上の ことで国内の景気が回復したわけではない。逆をいえば、国内産業はこの円高によ って打撃をうけたことになる。円安になれば、国内の物価も輸入された物価と同じ かそれよりも安く需要できるはずなので、国民の消費問題に大いに関係のあると思 う。そこでヘッジファンドの監視や金融システムを強化すべきだと思う。また、ア ジアの中でもトップクラスの産業を持つ日本ではあるが、内外価格差によるコスト 問題があるので、それらを規制温和などで削減すべきだと思う。 ●吉沢裕典 市場として魅力のない日本は、投資の対象にならない。このことは同時に、日本の投資家も、海外に投資を向けて行 くと言うことをも、意味する。海外に投資対象が移って行くと、産業の空洞化が起こってしまう。この空洞化を埋め るためには、目覚しい技術革新、新しい分野の産業を開拓して行かねばならないが、空洞化があまりにも進行してし まうと、技術革新を進めて行く力も日本には無くなってしまうだろう。 魅力がない理由は多々あるだろうが、著書に挙げられている、「コスト高」というものが最大の物だろうと思う。大き な中間マージンも含まれた日本の「高くて最良の物」は、グローバリゼーションのなかで、「海外の安くて良いもの」 に、取って代わられてしまったのだ。このために、「高くて、最良の物」を作る町工場は消えていってしまったので はないか。こうなると、技術力は降下していってしまい、これも技術革新を押し進めていく力を失わせてしまう。 高齢化による労働生産性も降下して行けば、これも技術革新を推し進めて行く力を失わせる。 早急な、産業構造の改革、と言うよりも、改造を行い、合理化、効率化を図ってい行かなければ、日本に将来はない だろう。 |