今週の顔 |
Inamine.S
わたしは、沖縄県出身です。沖縄は年中行事の多い島で、家族をはじめ親族が集まってごちそうを食べる機会が多いです。これから紹介していくものはきっと沖縄独特のもので、日本本土にはない(近いものはある)行事だと思います。沖縄の年中行事の最大の特徴は、旧暦(陰暦)を使うことです。ほとんどが今の中国からの影響ですが、その中に琉球の独自の色も入っています。 また、沖縄の行事とひとくくりに言っても、時代や各地域、門中(家族、親戚をあわせた一族のこと)、家庭によってかなりの違いがあるものもあります。このため、今回紹介するものは沖縄本島を中心として一般化、平均的にとり行われているものをまとめてみました。 @ 十三祝い(旧暦の1月2日〜12日の間に祝います) 昔は女の子の「十三祝い」といえば一人前とみなされ、親類や知人を招いて盛大に祝 福されたものだそうです。それには、昔は一般的に15〜16歳と早婚だったため、生家で迎える生年祝いは最初で最後になることが多かったので、親としては娘の十三祝いのため盛大に祝い膳をつくりその日のために晴れ着を着せて娘の成長を祈願したようです。今日では昔のような早婚もあまりなくなりましたがこのしきたりは今でも残っており、女の子の十三祝いは華やかにとり行われ、そのころのわたしも琉球紅型の着物を着けて写真館へ行ったり、家族と親戚と祝い膳を囲んだ思い出があります。 A 十六日祭 旧暦の1月16日は沖縄では、祖先供養を目的とした「十六日祭」があります。これは「後世(グショウ)の正月」といい、特に「ミーサ」と呼ばれる死後1年以内の新仏のある家庭で親類、知人、友人、隣近所が集まって新年のお墓参りをして、家では重詰料理、お餅、盛菓子をお供えして新仏や祖霊の供養を盛大に営みます。 B お彼岸 「暑さ寒さも彼岸まで」といいますがこの彼岸とは仏教行事の一つのようです。これはインドにも中国にもなく日本だけの宗教的なしきたりで、川の向こう岸つまり悟りの世界、理想の世界(浄土)をあらわしていて、この時期が最も浄土を身近にすることができるということからきているのだと思われます。そうしたところからお盆やお彼岸には亡き人が往かれた世界(浄土)をしのび、その人のために供養をささげるようになったようです。彼岸の期日は春分、秋分の中を中日として前後合わせて7日間がお彼岸で、前の3日間を彼岸入り、後の3日間を彼岸明けとし、その7日間のうち都合のよいひを彼岸祭とします。家では仏壇の掃除をして新しい花をいけ、ごちそうを仏前にお供えして家族全員で先祖をはじめ、亡き人の供養をします。 C 浜下り 旧暦の3月3日、沖縄では女の節句としてお菓子やごちそうを神仏にお供えして家族の健康祈願をします。昔は年に1度、天下晴れて女が楽しく遊べる日として浜下りをして歌ったり踊ったりおいしい料理を食べたりしました。そして海水で災厄をはらうために女だけが3月3日に浜に下りて厄払いをとり行います。その起源は、中国での3月上己(上旬の己の日)の祓いに源を発し、農事にたずさわる前に心身の汚れを清める一種の祭抜で農事儀礼のひとつが伝来したようです。 また、「浜下り」には、アカマター(蛇の名前)物語という親が娘を思う気持ちの詰まった伝説もあります。 D 清明祭(シーミー) 旧暦3月吉日に清明祭が行われます。一族が門中のお墓に集まってごちそうをお供えし、そのあとみんなで8畳ほどあるお墓の敷地内でそのごちそうを食べます。この祭りは中国から伝来したものですが、沖縄止まりで本土には伝わらなかったそうです。沖縄には中国から帰化した久米村三十六姓の人々がおり、その方々の行っていた祭りが、1768年ごろから毎年清明の節として「玉陵(タマウドゥン)」(王家の墓陵)に奉祭するようになったといわれています。 今日でもこの清明祭は盛大に行われます。この祭りのために主婦は2〜3日前から重詰料理を準備したり作ったりお菓子や果物をそろえたりしてお正月より忙しい日になります。 E 四日の日(ユッカノヒー) 旧暦の5月4日は「ユッカノヒー」と呼ばれ漁村や港町では豊漁祈願の爬竜船競争が盛大に行われます。またこの日は子供の成長と無病息災を祈る行事でもあります。昔は子供たちにとって年に1回のおもちゃ市が建ち並ぶ楽しい「子供の日」でもあったようです。その日は母親の手作りの「チンビン」、「ポーポー」も神仏にお供えして、子供の成長を祈りました。この「チンビン」、「ポーポー」はクレープの中身が無いようなもので、黒砂糖などが原料のとてもおいしいおやつです。わたしも大好きなおやつです。 F お盆 沖縄ではお盆の行事は旧暦7月13日から15日まで祖霊祭として各家庭で盛大に行います。お年寄りたちに言わせれば、お正月は生きた人の行事、お盆はご先祖様のための行事として沖縄の年中行事の中でも最も大きな祭りといえます。 (1) お盆の準備 先祖の霊をお迎えするため、13日までに仏壇はきれいに拭き清め、生花や堤燈などを飾り、日持ちのよい果物(青いバナナ、なし、りんご、みかん、スイカ、パイン、ぶどう)等もお供えし、グーサンウージ(サトウキビの杖)を仏壇の両側に立て、祖霊のお迎えの準備を整えます。その他に、ウチカビ(紙銭)も用意します。ウチカビとは、ワラ紙を3枚または5枚を4ッ折にし、銭型を縦7行、横5行を35打って作ったあの世のお金のことです。祖霊があの世でお金に困らないように仏壇にお供えして、ウークイ(精霊送り)の最後の日に焼いてお届けします。 (2) ウンケー(お迎え) 13日の夕刻から先祖の霊がお帰りになるといわれており、その時刻になると家族で迎え火を持って家の門に並びます。家の入り口には、水を入れたタライやメドハギ(ソーロバーシの葉の部分)を5〜7本ほうきのように束ねたものを用意します。これは、先祖の旅のほこりと足の汚れを洗い落としてもらうという意味をこめて準備するものです。 (3) 14日 14日は冷やしソーメンをお供えして、家族も同じ物を食べます。14日の夕食は早めにお供えします。なぜなら里帰りした祖霊たちが日ごろお世話になっているお寺にお礼参りに行かれるといういわれがあるからです。 (4) ウークイ(精霊送り) 15日の朝食は家族と同じ料理をお供えし、夕食は最後の晩餐ですので故人の好物を備えて供養します。ウークイの時刻(午後10時〜午前零時ごろ)がきたらウチカビ(あの世のお金)を燃やし、仏壇にお供えしてある料理や果物、生花をすべて取り下げます。その中から果物、料理の一部と生花を門前まで運んで祖霊を合掌してお送りします。これですべての盆の行事は終わります。 G カジマヤー(風車)のお祝い 旧暦9月7日は、97歳の長寿の祝いがあります。その日は祝い座に「風車」をいっぱい飾って、親、知人、友人を招待して盛大なお祝いが催されます。沖縄では日本でも1、2位を争う長寿県で97歳のカジマヤーのお祝いを迎える方もとても多いです。その日の縁起物の飾りに、タライに米をいっぱい盛り、そこに風車をつき立てます。風車を持って童心にかえるという意味です。そして招かれた客はこの風車を1本ずつもらって長寿にあやかることになるわけです。 H トゥンジー(冬至) 冬至は1年の中で最も昼が短く、また、このころから「トゥンジービーサ(冬至寒さ)」といって寒波が襲来する季節になります。沖縄ではその日は「トゥンジージューシー」といって、豚肉、田芋、ジイキ(田芋の茎)等を入れた雑炊を作って祖霊にお供えして一家の健康と子孫繁栄の祈願をします。 I ムーチー 旧暦12月8日は、鬼餅(ムーチー)の日です。これは1年間の厄を払う物忌みの儀式で、今日でも各地で悪霊や悪疫などを払いのける民俗行事として行われております。この日のために2〜3日前から、ムーチーを包むためのサンニン(月桃の葉)が市場に出まわり、各家庭ではムーチーの準備にとりかかります。出来上がったムーチーのお初は必ず仏壇にお供えして、家族の健康と悪魔払いを祈願します。子供のいる家庭では、ムーチーをその子供の年の数だけとって縄で両端を縛り、天井からつるして無病息災を祈願します。 今回沖縄の年中行事の代表的なものを10個紹介しました。 今回の今週の顔ではお祭り好きで、ごちそうをよく食べ、先祖の供養を大事にするといった沖縄の顔の一部分が紹介できたと思います。沖縄は他にもいろんな特徴(言葉とか)を持った島なので、またいつか機会があれば他も紹介します。 ここまで読んでくれた方、にへーでーびる!! |