今週の顔 |
長谷川 義之
日本は現在、デフレスパイラルの中で長期不況にみまわれている。 消費者の購買意欲の低下、過度な価格競争、雇用問題と国内経済全体では暗いムード続きである。 しかし、そんな中で不況知らずの産業がある。 海外有名ブランド関連市場である。 巷でおなじみの「ブランド」、ルイ・ヴィトン・ジャパンの2000年度国内売上げは1000億円を超えるのは確実な見通しだそうだ。 ここ数年、同社は対前年比で約10%増の伸び率を続けている。 シャネルは対前年比12%増の売上げ、カルティエは昨年の売上げが前年の1.5倍を記録し、ティファニーは昨年8−10月期の売上げが前年比15%増であった。 そんなわけで、今回のテーマは私が以前から考えていた「ブランド」についてです。 「ブランド」と聞くと、皆さんはどんなモノを想像しますか? いろいろあがるとは思いますが、その中にはヴィトン、プラダ、グッチなど(私はこの分野に関して疎い方なので、これくらいが限界です)の海外高級ブランドもあるのではないでしょうか。 「日本人はブランド志向が高い」とよく言われる。 確かにルイ・ヴィトンの世界での売上高の約3分の1を日本が占めるという。 不況続きの日本の中で、売上げを右肩上がりに伸ばす「ブランド」とはそもそも一体何なのだろう。 例えば、全く同一の製品が二つあり、一方にはブランドのロゴをつけ、もう一方には何もつけない。 価格を同一で販売したら一体どうなるのだろう。 そこに質的な差はないはずである。 しかし、もし売上げに差が出るとすれば、そこに何が働いているのだろう。 何もこのテーマはファッションのことだけに関係したことではありません(この分野については私自身も全く詳しくないのでこのくらいにしておきます)。 ブランドは他産業にも存在します。 電化製品ならソニー、自動車ならベンツ、牛肉なら松坂、コメならコシヒカリといった例があげられます。 ここで一つ、参考までに自分の考えを述べておきたい。 私はもちろんブランドとは基本的に高価でなければならないとは考えていない。 ブランドとはもともと、"商標、銘柄"を意味するのだから、ユニクロも勿論ブランドといえる。 しかし、ユニクロはこれまで安価で高品質な製品を提供しつづけていて、今後もそのブランド方針はおそらく変わらないと思う。 その反面、今回取り上げるのは海外高級ブランドのような「ブランド」であって、両者のブランドという成り立ち、認識の間に質的な差を感じるので、ここでは区別して考えている。 そこで、今回これをテーマに書くにあたっていろいろ浮かんできた「ブランド」についての疑問を挙げてみた。 ∴「ブランド」の歴史的変遷、成り立ち ∴各企業のブランドによる成功例、失敗例 ∴企業の「ブランド」利用術 ∴「ブランド」のメリット、デメリット ∴「ブランド」の賞味期限は? ∴新たに「ブランド」を起こし、根付かせるには、マーケット戦略は? ∴「ブランド」の有無による価格差異、消費者イメージの差 など・・・。 いかがだったでしょうか? 以上のように、掘り下げていくと想像以上に深い分野です。 とても一朝一夕には書けません。 そんなわけで皆さんに提案です。 論文やコラムのテーマ探しにお困りの方、この方向で考えてみてはいかがでしょうか? きっといいモノができあがると思いますよ。 あとがき いつのことだったか、ニュースの特番でイタリアの特集をしていた。 そこでは長らく続いた国の財政赤字を克服し、現在の景気の活力を取り戻した要因を探るといった内容だ。 その中で、イタリアのいわゆる「ブランド」産業の隆盛について、ベネトンの社長だったと思うが「イタリアには、先人が古くから培ってきた文化・歴史・伝統というバックボーンが隅々まで浸透しており、それが強く影響しているのだろう」と分析していた。 それなら我々日本だって負けないはずだ。 日本の製品に対する外国評といえば、品質的な面の評価がとかくクローズアップされている。 勿論それは素晴らしいことだ。 これはあくまでも私の個人的な意見ですが、イタリアのような「ブランド」を日本で形成するには、品質などに裏打ちされた信頼や企業イメージなどもさることながら、それに関する「物語」、「ヒストリー」、「哲学」が必要なのではないでしょうか。 私は日本にもイタリアのような「物語」、「ヒストリー」、「哲学」のある「ブランド」企業がもっとあっていいと思う。 イタリアで行なわれるF1グランプリのサーキットには、毎年たくさんのフェラーリファンが跳ね馬のロゴが入った深紅のフラッグをたなびかせている。 観客スタンドを真っ赤に染めるその光景たるやとても壮観であるし、そこには消費者と生産者といった単なる一企業に対する想いとは全く異なる、特別な思いがあるように感じた。 そんな愛される企業が日本に沢山できることを深く望んでやまない。 |