発展途上国経済論   (平成7年度以前入学者)(通年,4単位)

室 井 義 雄


講義概要
 アジア・アフリカ・ラテンアメリカなど,今日の第三世界諸国は,貧困・債務累積・構 造訴整・農業変容・工業化・民族対立・環境汚染などの多様な問題を抱えている.こうし た複雑な第三世界の歴史と現状を理解するためには,経済発展の基盤集件を欧米の経験か ら一般的に抽出することではなく・第三世界に固有の社会経済横造とその変容過程を歴史 的に解明することが必要である。本講義では,「世界システムの中の第三世界」という視 座を大切にしながら・第三世界に関する〈横造分析〉と〈歴史分析〉を試みる.前者では そうした諸問題が如何なる世界史的状況下で醸成され,また変容を受けてきたのかという 卓を考察する。実態分析を中心にして講義を進めるが,第三世界分析に関する諸理論の検 討も若干行なう予定である.


講義計画
前期
T.はじめに  課題と方法
 1.発展途上国経済論の成立と斉潮流
 2.くEconomy〉の多義牲について
U.アジアにおける近代化の光と啓
 1.農業の近代化−「緑の革命」
 2.国家建設と工業化戦略の展開
 3.アジアNIESと新国際分業
U.ラテンアメリカにおける債務危機と構造調整
 1.債務危機の発生と国家肘政の破綻
 2.IMF世銀による構造調整計画
 3.「経済の自由化」の意味するもの
W.第三世界と経済学
後期
X.く中心=周辺〉横造の形成
 1.ベルリン会義と植民地体制の成立
 2.文明化の使命論
 3.植民地化への争い Y.アフリカにおける植民地横造の形成
 1.アフリカの伝統的社会
 2.植民地化と国際分業体制への統合
 3.伝統的社会の変容
Z.アメリカの独立と国家建設
 1.沸き上がる独立運動
 2.政治的独立と植民地遭産
 3.民族と国家の対立
 1.新従属理論
 2.世界システム論
 3.生真横式接合論
Z.むすびにかえて
 1.非市場社会の構造
 2.第三世界と日本と私たち


成績評価の方法
学年末試験の成績を最終評価とするが,出席状況も多少考慮する。


教科書
使用しない(講義ごとに統計資料・用語解説などのプリントを配布する)。


参考書
 川田・石井編「l発展途上国の政治経済学」東京書籍,1987年.
 森田桐郎(室井義雄編)「世界経済論の構図」有斐閣1997年.
 室井義雄「南北・南南問題」(世界史リプレット56)山川出版社,1997年.
 林・日野・小田篇「アフリカの21世紀」全3巻,勃草書房,1991〜92年。
 板垣・荒不編「新アジア学」 亜紀書房,1987年.
 細野・恒川編「ラテンアメリカ危機の構造」 有斐閣,1986年。


受講前提条件
 受講に際しての特別な前提条件はないが,およその出席状況の把握を兼ねて,講義中に 数回のアンケートを実施する。特に4年次生は,よく考えて受講すること。 関連科目は・国際経済論・国際金融論・国際関係論,アジア経済論,資源エネルギー論, 文化人顆学など.