寡占経済論(通年、4単位)

(前期)水川 侑
(後期)吉家 清次


講義概要
寡占(OLIGOPOLY)とは,ラテン語で「小数の(oligo)+売り手(polion)」に由来し, したがって寡占経済とは,現代の先進諸国経済に等しく認められるような産業構造,すな わち財貨・サービスの過半が「小数の(Fewness)巨大な(Bigness)企業ないしは組織」群 によって寡頭支配的に供給されている産業経済の現実をいう。たとえば,日米経済にあっ てはその国内総生産額(GDP)の約40%が全企業のわずか0.1%を占めるに過ぎないこれら 小数の巨大企業群(BigBusiness)によって,またその約20%が(中央と地方)の政府組 織体(BigGovernments)によって,公私混合経済的に供給されている(欧州諸国ではこの 合計額は約80%)。こうした寡占経済の実体は,通常の経済学がその分析の前提としてい る「無数の小企業群による自由競争的な市場経済」の仮定とは大きく異なっており,現代 の先進資本主義経済の構造とその機能の総体像を現実的かつ原理的に説明するためには, 通念的な経済学の組立と体系性とを「修正」した『寡占経済論』が必要となっている。


講義計画
前期 
1.「寡占経済」とはいかなる租実か 
2.先進諸国における「寡占経済」の現実
3.米国における寡占産業(鉄鋼,自動車)
4.日本における寡占産業 
        (鉄綱,自動車,ビール)
後期
  1.寡占的混合経済体制の動態過程
  2.寡占的経済動態のミクロ的基礎
  3.寡占的経済のマクロ動学像
  4.寡占的経済の国際経済学(序説)
  5.寡占的混合経済体制の政策体系
 


成績評価の方法
原則として学年末試験の達成度をもって最終的な評価とする予定であるが,講義の進行 過程で理解度の確認を兼ねた小テストを行い,最終評価の参考とする場合もありうる。


教科書
いわゆる「教科書」は使用しないが,講義のなかで適宜参考文献を提示するとともに, 必要と思われる限り,講義資料(プリント類)を配布する予定である。


参考書
「経済原論・B」系統の知識ないしは,いわゆるミクロ経済学とマクロ経済学の基礎原 理の習得が最大の「参考書」である。


受講前提条件
前期では,寡占経済の「実態」と通説的な「経済学」の基本命題とのズレを系統的に明 らかにする「批判的考察」をおこない,後期では,寡占経済,したがって現代先進経済の説 明原理としての体系化を探る「積極的展開」にあてる予定。いずれも,講義はpolimical (論争的)でsystematic(体系志向的)となるであろうから,受講生諸君が講義の「面白 さ(=経済学的な思考の楽しさ)」を味わうためには,維続的な受講が必要となろう。