経済人類学
(後期,2単位)
室 井 義 雄
講義概要
「経済人類学」はその名称からして、「未開社会」の経済活動を分析する人類学の一 分野などと考えられがちである。しかしそうではなく、「経済人類学」の課題は,くeconomy〉 の多義性を認識し、その本義・本源的意味を問い直すことにある。すなわち 人間の社会的行為 の土台と動因を考察し・社会の全体構造との関連において,社会の物質的必要を満たす 経済制度・経済活動を研究する学問領域である。
より具体的にいえば・本講義では・社会を統合する諸原理(互酬・再配分・市場交換) や経済制度としての貨幣・交易・市場など・社会システムに関する基礎的範疇の考察 市 場社会と非市場社会との比較分析・および異人論や贈与論などが考察される。これらを通 して・広く「人間の経済」の何たるかを考えてみたい。
講義計画
T.はじめに−−一経済人類学の課題
1.カール・ポランニーの問題提起
2.現代社会の病理
U.社会統合の諸原理
1.自己調整的市場と擬制商品
2.ヤコ族における我族関係と交扱
3.ティヴ族における交放と貨幣
U.経済制度としての貨幣・交易・市場
1.貨幣の起源と本質
2.幕末期のヨコハマ・ゴールドラッシュ
3.異人と沈黙交易
W.むすびにかえて
1.「人間の顔をした経済」に向けて
2.日本社会を見る眼
成績評価の方法
後期試験の成績を最終評価とするが・出席状況も多少考慮する.
教科書
使用しない(講義ごとに関連する資料などのプリントを配布する).
参考書
栗本慎一郎幡済人類学一東洋経済新報杜,1979年.
栗本慎一郎著「経済人類学を学ぶ」有斐閣選書,1995年.
山内昶「経済人類学への招待」ちくま新書,1994年.
湯浅赳男「経済人類学序説」新評論,1984年。
山崎カヲル編訳「マルクス主義と虚済人顛学」柘植書房,1980年。
メイスヤー(川田・原口訳)「家族制共同体の理論−経済人類学の課題」筑摩書房
ポランニー(玉野井・平野編訳)「経済の文明史」日本経済新聞社,1975年.
赤坂憲雄「異人論序説」ちくま学芸文庫,1992年。
今村仁司「貨幣とは何だろうか」ちくま新書,1994年.
受講前提条件
「アフリカの経済」(後期・2単位)と併せて受講することが望ましい。なお,およそ の出席状況の把握を兼ねて・講義中に数回のアンケートを実施する。