経済学基礎演習前期2単位
野口 真
講義概要
知識詰め込み型の勉強に慣れ親しんできた新入生には,1冊の書物を読み通すのは,も
しかすると骨の折れる作業であるかもしれない。だが,これからの大学生活4年間を.お
仕着せの知識を身にまとうことにのみ費やすのは,実にもったいない話である。書物との
出会いはいわば新たな発見の旅であり,また読むことをとおして,私たちは自らの経験を
認識にまで高めることができる。この演習では,参加者にそのような読む楽しさを知って
もらうことをまず第一のねらいとしたい。だが同時に,演習という形式で輪読をおこなう
のには,もうひとつのねらいがある。読んで得たものを整理し,自分の言葉で他人に語っ
て示し,他人の疑問や批判を受けとめるという作業が,いかに自己の認識を深めることに
役立つのかを,学生諸君に体験してもらいたいのである。それは2年次に本格的に開始さ
れるゼミナールの疑似体験にもなる。演習の素材には,私たちにとって比較的身近な現代
的なテーマを扱った,一般向けの読み物を選んだ。
講義計画
輪読の最適速度がどのくらいであるのかを探りながら演習を進めることになるが,差し
当たり,テキストとして,佐和隆光『地球温暖化を防ぐ−20世紀型経済システムの転換
−』(岩波新書),および熊沢誠『能力主義と企業社会一(岩波新書)の2冊を予定して
いる。地球環境と日本的経営という全く異なる題材だが,こうした問題について深く考え
てみようという意欲ある学生の参加をもとめる。
成績評価の方法
出席および報告を重視する。また、演習で扱ったテーマについてのレポートを最後に提
出してもらうが,それも評価の基礎とする。
教科書
上記に記載。
参考書
環境問題については,植田和弘編『地球環境キーワード』(有斐閣),米本昌平『地球
環境問題とは何か』(岩波新書),季刊『経済と社会』第3巻特集『地球環境問題を考え
る』(創風杜)を挙げておく。日本的経営については,大野耐一『トヨタ生産方式』(ダ
イヤモンド社),加藤哲郎・R.スティーヴン編『国際論争:日本型経営はポスト・フオ
ーディズムか』(窓社),奥村宏『会社本位主義は崩れるか』(岩波新書)などを参考に
するとよい。
受講前提条件
演習では参加者すべてに少なくとも1回は報告してもらう。報告者は,割り当てられた
節あるいは章を要約し,それについての疑問点や問題点を書き記したレジュメを必ず用意
する。事前に決めた討論者に問題点を提起してもらうことも考えている。同じ箇所につい
て同時に複数の人に報告してもらうこともあるかもしれない。報告者,討論者以外の者
も・あらかじめテキストに目を通してから演習に参加し,積極的に疑問や意見を出し合
い,互いに議論するよう心かけるようにしてもらいたい。