農業経済論(通年4単位)

松浦 利明


講義概要
農業というのは資本主義体制にとっても,社会主義体制にとっても厄介な,手に負えない部門であった。そのことは例えばウルガイ・ラウンドの交渉経過をみても容易に理解され よう。市場メカニズムでも官僚的統制でもうまく行かない部分を含んでいるが,そうかといって農業なしではすまされない。本講義ではそうした問題性を意識しながら,幾つか の視点から農業問題といわれるものを考えてみたい。第一は,農業問題の本質とは何か,それはどのような形をとって現れているかを,国際比較の視点を重視しながら見ていきた い。ここでは農業保護政策の検討が同時に行われる。次に農業は今日では単独で存在しているわけではなくて,様々な産業関連のなかで機能し,存在しており,そうした関係の側 面から農業を見なおしてみたい。第三に農業を環境との関わりで考察するが,それは今日の農業が環境破壊的存在であったり,環境改善者であったり,さらには被害者であったり と,様々な関係にあるからである。


講義計画
前期
 1.農業問題とは何か
  ガット・ラウンド交渉からの考察
 2.農業問題の形成
  1930年代の国際的な農業保護システム
 3.第二次大戦後の農業問題
 4.価格政策と国際摩擦
 5.小農制と農業構造政策
 6.農業保護と環境問題
 
後期
 1.日本における農業問題
  歴史的概括
 2.農産物価格と価格政策
  米価政策を中心に
 3.農地問題と農地政策
 4.アグリビジネスと農業
 5.農協の組織と機能
 6.農業政策の形成メカニズム
 


成績評価の方法
基本的に学年末試験の成績によるが,聴講者の人数によっては前期テスト(平成9年度は実施),あるいは課題レポートによる評価も加える。


教科書
とくに指定はせず,「講義資料」のプリントを講義の際に配布する。


参考書
講義に際し,随時参考書,参考論文等を指示する。