労働経済論通年4単位

高橋 祐吉


講義概要
 学生諸君のほとんどは,4年間の大学生活ののちに企業に就職する。就職協定が廃止さ れたために長期化した就職活動を経て,会社人となり本格的に労働の世界に足を踏み入れ ることになる。学生時代の気ままな世界とは趣を異にした労働の世界は,一方では企業が 営む利潤追求のための諸活動に強く規定されるが,しかし他方では,労働する人々が人間 であるがゆえに,企業の活動は制約を被らざるをえない。労働の世界のメカニズムを知る ことは,これからの40年近くにも及ぶ長い労働生涯を有意義なものとするためにも必要で あるが,もちろんそれだけではない。「ジャパン・モデル」として世界からも注目を集め るにいたったわが国企業の経営と生産のシステムをより深く認識し,ひいては過剰なまで の競争と効率に彩られたわが国経済の「優秀性」や「先進性」を相対化していくためにも 必要なのである。わが国だけではなく世界的にも,今日労働の世界は大きく変容しつつあ る。講義では,主に現代日本のさまざまな労働問題を素材としながら,労働の世界を貫い ている論理を探り,これからの新しい労働のあり方を考えてみたい。


講義計画
前期
 1.労働経済論で何を学ぶのか
 2.労働市場論(1)−労働力の供給と需要−
 3.労働市場論(2)−労働移動と失業−
 4.労働市場論(3)−労働市場と女性差別−
 5.労働市場論(4)−ホワイトカラーの労働問題−
 6.労働市場論(5)−規制緩和と雇用−
 7.労働過程論(1)−労務管理と労働−
 8.労働過程論(2)−長時間労働と過労死−
 9.賃 金 論(1)−斉金水準と賃金格差−
 10.賃 金 論(2)−日本の賃金−
 11.労使関係論(1)−労働組合と経営者−
 12.労使関係論(2)−戦後日本の労使関係−
 13.労使関係論(3)−国際化と労働問題−


成績評価の方法
学年末試験とレポートで評価します。


教科書
講義用のテキストがあるので,受講者は専大書房にて事前に購入しておいて下さい。な お講義の際に資料としてプリントを配布します。


参考書
参考書として拙著 『企業社会と労働組合』,『企業社会と労働者』,『労働者のライフ サイクルと企業社会』(いずれも労働科学研究所出版部刊)をあげておきます。


受講前提条件
受講に際して必要と思われる情報はすべてここに記載されているので,ガイダンス授業 はおこないません。なお蛇足ながら,講義中の私語は叱責の対象となります。