特殊講義(前期,2単位)
テーマ:労働市場の国際比較
宮 本 光 晴
講義概要
日本の労働市場および雇用システムの特徴を,アメ、リカ・イギリス・ドイツとの比較を
通じて考察して行く。80年代を通じて日本型雇用システムの分析は著しく進展した。「日
本型」と呼ぶ以上,それは国顔比較の観点を必要とする。その多くはしかし,アメリカ型
の雇用システムとの比較に限られていた。これに対してこの講義では,イギリス型とドイ
ツ型を含めて比較の対象を広げて行く。
むろん比較それ自体が目的ではない。理解すべきはあくまで日本の雇用システムと労働
市場であり,そのためには異質なシステムとの比較を必要とする。ちなみにアメリカ型の
雇用システムは日本と類仮した「内部労働市場」(InternalLabour址arket)として類型
化でき,他方,ドイツとイギリスの雇用システムは「機業労働市場」(Occupatlonal
LabourXarket)として類型化できる。と同時に,興味深いことに,雇用パターンに関して
は日本とドイツの類似性が指摘でき,アメリカはむしろ特異なパターンとみなしうる。
日本・アメリカ・イギリス・ドイツという4つのタイプを取り出すことによって,雇用
システムに関するさまざまな問題点を体系的に論じることが可能となる。そして多様なシ
ステムとの比較を通じて日本型システムの特徴を理解するとともに,その転漁の可能性に
ついても何らかの示唆を見い出したい。既存のシステムの転換の可能性を考えるために
は,現に存在するそれとは異質なシステムを調べることが何よりも肝要である。
講義計画
(1)雇用パターンの比較
(2)賃金パターンの比較
(3)転職パターンの比較
(4)技能形成パターンの比較
(5)内部労働市場
(6)暇業労働市場
成績評価の方法
講義終了後のテストによる。4ないし5問のうち1問選んで回答するという形式をと
る。
教科書・参考書
富永健一・宮本光晴編著『モビリティ社会への展望』(慶応大学出版会,1998)
宮本光晴『企業と組織の経済学』(新世社,1991)
小池和男『仕事の経済学』(東洋経済新報社,1991)
その他,随時指摘する。
受講前提条件
「企業経済学」(後期集中)をあわせて受講することが望ましい。