世界経済史 通年4単位

毛 利 健 一


講義概要
 ヨーロッパ(ひろく欧米)世界と非ヨーロッパ世界(アジア,アフリカ,ラテンアメリ カ)の相互交流の実態と歴史的意義,ならびに,世界経済の構造と動態の変容を,問題関 心の主軸に据えてメイン・テーマを構成したい。
 まず近代世界成立の序幕となる16世紀以降のアジア貿易とアメリカ大陸貿易の発展なら びに両貿易の主導権争奪と絡みつつ展開するポルトガルとスペインの角逐やスペインの興 亡世界的専権のオランダ・イギリスへの北漸,英砺・英仏の覇権をめぐる激突,などを それらに駈伴する世界勢力圏の変化とともに,序論風に扱う。  ′
 欧米資本主義の確立がともなった世界経済の資本主義的編成替えは,単に垂直的国際分 業体制に非欧米世界を薪入しただけではない。潅運業や貿易・保険・金融業,さらには資 本や労助力や技術の国際移転といった広範な経済活動領域を貫いて重層的な支配一従属関 係の綱の目が濃密におおう世界経済(中心一半周辺一周辺へ分極化された世界)が現出す る。中心部による工業・サービス業独占と基軸国の交代や主要諸国の盛衰,底辺部におけ る非自立的な産業経済の成長と諸形態の植民地支配=従属関係の発展,こうした総体とし ての資本主義世界の成立と発展の具体的態様を国際的要因と国内的要因との夜合的作用に 留意しつつ歴史的・構造的に考えるのが「世界経済史」の課題圏である。


講義計画
前期
1.講義の狙い一課題・対象・方法
2.16,17世紀のヨーロッパ経済
3.西欧における封建制から資本主義への移行
4.18世紀のヨーロッパと世界経済
(1)大西洋経済の発展と「カリブ海域経済革命」
(2)アメリカ独立革命
5.イギリス産業革命
6.後進資本主義諸国における市民的変革と産業革命
後期
7.19世紀の世界経済
  −バックス・ブリタニカ
(1)イギリス資本主義と後進資本主義諸国
(2)周辺資本主義の発展⊥ロシアと日本の登場
(3)植民地世界の発展と欧米資本主義
  −アジア・アフリカ・ラテンアメリカ
8.大不況期における世界資本主義の構造転秩
 一帝国主義列強の世界分割競争へ
(1)アフリカ分封
(2)帝国主義下のアジアーインドと中国
9.両大戦間期における世界経済の変容
(1)ソヴィエト社会主義革命
(2)大恐慄と経済ブロック化の進展
(3)ニューディールとファッシズム
10.第2次世界大戦と戦後世界の展望
    −バックス・アメリカーナ
(1)福祉国家の発展と拡延
(2)IMF体制の構築
(3)冷戦の政治経済学


成績評価の方法
 講義終了後の筆記試験による。


教科書
 使用しない。


参考書
(1)藤瀬浩司「資本主義世界の成立」ミネルヴァ書房,1980年,
(2)E.J.ホプズボウム(浜林正夫・他訳)「産業と帝国」未来社・1984年,
(3)長岡新吉・他「世界経済史入門一欧米とアジアー」ミネルヴァ書房,1992年,
(4)森田桐郎編「世界経済論−《世界システム》アプローチ−」ミネルヴァ書房・1995年・
(5)毛利健三「自由貿易帝国主義−イギリス産業資本の世界展開−」東京大学出版会,1978年


受講前提条件
特になし