西洋経済史通年4単位

八 林 秀 一


講義概要
本年度のこの講義では,「近代化」と「工業化(産業化)」を主として取り扱う対象と して考えている。現在,新しい方法意識に基づく様々な世界史像が産み出されているが, やはり西洋でこの両者がどう経過したかを,現在から見てもまず取り上げるべき「西洋経 済史」の主題としてよい,と思われる。もっともこの両者は広範で多岐にわたる内容を持 っており,それぞれで1年間の講義では不足なほどである。だからといって他方で,逆に 抽象的な概念規定だけを講義で伝達することは,それほど意味あることとは思われない。 この講義の目標は,「過去と現在との対話」としての歴史認識について学ぶ点に置きたい と思う。つまり,例えば「・・・・の基本法別の把握」といった体系的な知識の伝達ではなく て,受講者自身が現在に対する問題関心を深めるために役立つ点に重点がある。この講義 はだから,まずもって問題索出的であることを目指している。本年度は,ひとまずヨーロ ッパとくにイギリスとドイツに視座を定め,最後のまとめで日本との比較にも言及してみ たい。


講義計画
1「西洋経済史」とは?
2「近代化」と「工業化」
3 段階論と類型論 
4 封建制から資本主義への移行
5 イギリス産業革命論 
 5−1産業革命前夜イギリス社会の特質
 5−2主要な技術革新
 5−3国内市場と海外市場
 5−4農業革命の役割
 5−5資本形成
 5−6工場制度の成立
5−7生活水準論争
5−8「自由主義」と政府の役割
5−9「世界の工場」
6 「近代化」と「現代化」
 −ナチスと近代をめぐる諸論争一
6−1「ドイツ特有の道」論争
6−2「歴史家論争」
7 まとめ ヨーロッパと日本


成績評価の方法
 学年末試験のみで評価する。なお出題は,概要の項で述べたように問題索出的であろう とするこの講義の性格から,問題関心の深まりを問うことを中心とする積りである。


教科書
教科書は使用しない。基本的なデータや基本的論点については,適宜担当者がプリント を講義時に配布する。


参考書
必要に応じて,講義の際に基本的な解説を加えつつ紹介する。


受講前提条件
 他の歴史関係の講義をすでに受講したか,現在受講予定が望ましい。これは知識として でなく,考え方としてである。むしろ歴史担当者毎の相違を感得してほしい。