地方財政論(通年,4単位)

原 田 博 夫


講義概要
 地方財政をとりまく問題点は多岐にわたるが,本講義では,その複雑な諸関係をできるだけ理論的側面から検討したい。
 具体的には,第1に,地方財政におけるミクロ・マクロ的側面を区別する。すなわち,個別自治体の財政問題と,全国的な地方財政問題を区別し,相互の関連牲を認識することである。第2に,地方公共部門内の意思決定,地方公共財の給付と負担,住民の「足による投票」行動,スピルオーバー効果,一般・特定補助金,国と地方の財政関係などを検討する。第3に,シャウプ勧告の意義,地域経済の発展・成長との関連,社会福祉政策における役割,分権論,首都移転論の動向なども,議論の対象とする。
 主にわが国の制度を前提するが,適宜,米国・英国の事例なども言及する。


講義計画
前期
1.国民経済と地方財政
2.地方財政の国際比較
3.地方自治の法制度論
4.集権制と分権制,最適規模論
5.住民の「足による投票」行動と人口移動
6.スピルオーバー現象
7.一般補助金と特定補助金
8.シャウプ勧告と地方財政
後期
1.固定資産税
2.住民税
3.事業税
4.地方交付税
5.国庫支出金
6.地方債
7.地域振興と地方財政
8.社会福祉と地方財政
9.地方公営企業
10.日本型分権制の可能性


成績評価の方法
 基本的には学年末試験の評価で決定する。ただし,講義内容の理解度をチェックするため,年2回程度のクイズ(簡単な設問)を,講義時間中に実施する予定である。これは,最大20%の範囲内で最終評価への加算項目とする。


教科書
 原田博夫『地域主権の財政学』勁草書房,1998年予定


参考書
 石弘光・飯野靖四編F現代財政のフロンティア』東洋経済新報社,1992年。
 田島義介『地方分権事始め』岩波新書,1996年。
 並河信乃『図解 行政改革のしくみ』東洋経済新報社,1997年。


受講前提条件
 地方財政論の対象となる事例は,毎年末と年始にかけて大蔵省・自治省を中心に繰りひろげられる予算編成をめぐる攻防や,日常の市民生活に関わりのあるものが多いので,平常から新聞・雑誌などには親しんでもらいたい。
 経済原論IBの単位を修得していること(すなわち,ミクロ・マクロ経済学の基礎的事項を理解していること)と,財政学が履修済みであることが望ましい。