財政学通年4単位

原 田 博 夫


講義概要
本講義では「近代経済学」の立場から財政学を論じ、現代財政の諸問題を分析する。こ こでのアプローチの基本は、ケインズ経済学の強い影響下で体系化されたマスタレイブ流 のものであり、より具体的には、財政を資源配分、分配、安定化機能から認識しようとす るものである。また、予算編成過程で顕著なように、予算のもつ政治的側面を重視するブ キャナン流の「公共選択論」にも配慮する。 特定の国や制度を分析対象に限定するわけではないが、主に第二次世界大戦後(特にこ こ20年ほど)の日本の事例を、その他に米国と英国の経験を適宜素材とする。とりあげる テーマは具体的事実に基づくが、単なるその制度的、歴史的解説ではなく、できるだけ経 済理論的検討を中心としたい。


講義計画

前期
1.国民経済と財政
2.現代財政の3機能
3.公共財の理論
4.社会的選択(投票)の理論
5.公共的意思決定をめぐる諸問題
6・公債の(世代間)負担と中立性命題
7.均衡予算乗数と自動安定化装置
8.財政政策と金融政策の比較
9.開放経済下での財政・金融政策の効果
後期
1.租税原別:公平性と中立性
2.所得税制の歴史と現状
3.包括的所得税の理想
4.法人税制の多義性
5.租税の超過負担と転嫁
6.直接税と間接税
7.付加価値税の理論と現状
8.支出税の構想
9.最適課税論からの評価


成績評価の方法
 基本的には学年末試験の評価で決める。ただし、講義内容の理解度をチェックするた め、年2回程度のクイズ(簡単な設問)を、講義時間中に実施する予定である。これは、 最大20%の鞄囲内で最終評価への加算項目とする。


教科書
 貝塚『財政学』(東大出版会、第2版、1996年)、古田『リーディング・やさしい財政 学』(中央経済社、1990年)、肥後編『財政学要論』(有斐閣,第4版、1993)、井堀 『財政』(岩波、1995年)、米原『はじめての財政学』(有斐閣ブックス、1997年)のい ずれか。


参考書
 理論を中心とした百科全書的なものは、マスグレイブ『財政学(全3巻)』(有斐閣、 1983〜4年)とスティグリッツ『公共経済学(上・下)』(東洋経済新報社、1996年)が  日本財政の実態を踏まえたものとして、本間編『ゼミナール現代財政入門』(日経新聞、 1990年)、石・飯野編『現代財政のフロンティア』(東洋経済新報社、1992年)、宮脇『図 解 財政のしくみ』(東洋経済新報杜、1997年)、加藤編『入門公共選択』(三嶺書房、 改訂版、1998年予定)などがある。


受講前提条件
財政学の対象となる事例は、毎年末と年始にかけて大蔵省を中心に繰りひろげられる予 算編成をめぐる攻防や、ここ10年以上の政局の流れを左右してきた税制改革論など、極め て身近なものが多いので、新聞、雑誌には日常的に親しんでもらいたい。 経済学科:経済原論IBの単位を修得していること(すなわち、ミクロ・マクロ経済学 の基碇的事項を理解していること)が望ましい。