オランダは1982年に「ワッセナーの合意」を政労使間で締結。この合意に至るまでオランダはその名の通り「オランダ病」に悩まされていた経済不況への打開策であった。その「オランダ病」の経緯を紹介しよう。1960年代に北海で天然ガスを発掘してから天然ガスの輸出が拡大した。その輸出によって通貨(ギルダー)は高くなりその好景気の影響で賃金は高くなった。しかしながら輸出が対GDPの約60%以上を占めるオランダでは企業は圧迫され収益が減っていった。すると必然的に失業率は上昇し、当時手厚い社会保障を行っていたためにその給付が急増し、この影響によって財政赤字が急増。経済の立て直しを図るためにオランダでは政労使間での合意の下この合意が結ばれたのだ。
具体的には政府は減税と財政赤字の削減を目指し、賃金交渉には基本的に干渉しないこと。 経営者は短労働時間の労働者の受け入れに同意すること。労働組合は企業利益をあげるために賃金の著しい上昇は要求しないこととした。そして雇用者の増加は84年から98年にかけた15年間で32%の増加を示したのである。ここで機能したのがワークシェアリングだ。
ワークシェアリングには大きく3つに分類することが出来る。雇用維持型・雇用創出型就業多様型である。日本は雇用維持型、オランダは雇用創出型および就業多様型に属することを頭に入れておいて頂きたい。
オランダ病を経て確立されたオランダのワークシェアリングを我々は安心・政策・基盤という三つの柱に支えられ成り立っていると考えている。
<オランダのワークシェアリング>
オランダの就業体系としては主にフルタイム労働、大パート、中パートというようにおもにパートタイム労働を採用している。日本で言う正社員がフルタイム労働に当てはまるのだがパートとフルタイムの賃金格差は5%ほどしかない。このようにパートタイム、つまり時間的に余裕を持って仕事をしたいという労働者をうまく使いオランダはワークシェアリングを行っている。
<日本のワークシェアリング>
一方日本の就業体系は正社員と非正社員に大きく分けられるが、賃金にしろ待遇にしろその違いは歴然としている。オランダと比べ日本での正社員とパートとの賃金格差は実に30%にもなる。そんな中、日本が実施しているワークシェアリングは現在ある雇用の中で従業員を解雇する代わりにそれぞれ時間と給与を減らしそれを防いでいる状態、すなわち痛みの分かち合いである。
オランダでは社会保障が実に充実している。国民負担率がその分大きいのだが、国民はそのために生活を保障されている。 ・失業保険→最長で2年半の保険がつく。モラルハザードが生まれやすい為対策として、職業訓練を受けなければ段階的に支給金額と期間が減っていくという工夫もある
・年金→基本的にシステム的には日本と変わりはないが、社会保障の充実の為日本のような財政困難などはまだおきていない このようなワークシェアリングを実現させたことによるオランダの成果としてはやはりあれほど高かった10%を越す失業率が3%未満にまで回復し、また女性の就業機会を増やしまさに雇用創出・就業の多様化を実現したのである。
さて、ここでは日本における政労使を見ていこう。日本では政=政府、労=労働組合、使=日経連が当てはまるであろう。昨年三者の話し合いが持たれたが、それはお互いの主張で終わったようである。政府は構造改革をすすめていく中での雇用対策として数々の対策を述べているが未だ実効段階には至っていないようである。労組は雇用改革なくして景気回復なしとして雇用確保を主張している。経営者側である日経連は、時間当たりの賃金は変えずに人件費の総コスト抑制を目的とする。いずれにしても雇用対策の策定・実行に当たっては三者が十分に話し合う必要があるのは言うまでもない。
日本では広義の意味のワークシェアリングを残業などによってまかなってきたといえることができるかもしれない。しかし現状では賃金、労働時間ともに減少をたどっている。そして雇用形態もパートタイム労働者が増えてきているのである。今後、いかにして雇用を維持すべきなのだろうか。
我々は日本に対しオランダの例をあげてそれを日本にあったワークシェアリングとして導入する為の政策として派遣労働者の拡大に伴う雇用創出をあげようと思う。しかし日本の現状としては労使ともの意見とし、雇用創出ではなく現段階では雇用維持としている。また派遣労働者の実態は労働時間、賃金ともにオランダのような格差の小さいものではなく正社員とはかなりの差がある。
オランダと全く同じワークシェアリングを展開していくのは現段階において日本では問題が多く実現は困難であるといえよう。しかし派遣・嘱託を増加、充実化させ、労働市場のスラックスを打開していくことが最優先される課題であると考える。
|