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新ボストン便り 第四回 〜9月12日便〜

本日より、ハーバード大学の学部、研究大学院が秋学期の授業を開始しました。
観光客が多かったキャンパスに、今日は授業の間に忙しく教科書を抱えて歩き回る学生が戻り、真っ青な空に白いMemorial Church(注)の尖塔が美しく聳え立つ様を見ると、まるで昨日の悲劇は、たった一夜の悪夢ではなかったのかと錯覚する気持ちに襲われました。

さっそくHolyoke Centerで身分証明書を作ってもらい、晴れてHarvardの膨大なresourceにアクセスが可能になりました。
コンピューター化の進む図書館、情報センター、医療、運動施設などあらゆる施設を利用する上での身分証明になるほか、コンピューターの教育目的限定のソフトの購入などに絶大な威力を発揮します。

nationality、人種、宗教、職業、社会階層の違う国において、自分が何者であるかを証明することは、証明書なしには難しいものがあります。パスポートは最低限であり、それだけでは不十分です。
社会保障番号(Social Security Number)、保険番号などがないとこの国で暮らす上で多くの支障が生じます。

この身分証明書を使って、この1年間出来るだけ大学のresourceを利用しようと思い、秋に行われるフットボールのIvy League戦、MozartのRequiemコンサートのチケット、プール、体操器具などスポーツ施設の利用権を購入しました。
大学内の駐車場も申し込みに行きましたがこのところ建物の取り壊しが進み、駐車スペースが極端に減っているため数年先まで空き待ちがあるとのことで、これはあきらめざるを得ませんでした。

さて、明日からは研究に関連する講義を中心に、興味のある講義、シンポジウム、研究会などに積極的に参加することとします。
そのための基本的な資料である分厚い講義要綱(Courses of Instruction)がようやく手に入り、時間割を検討中です。

さて、昨日のAttack on Americaにつきまして日本でも様々の報道がされていることと思います。
連絡の取れない日本の方が未だ20人近くいることはネット上で知りました。World Trade Centerには主要金融機関が集中しており、例えばMorgan Stanleyなどでは数百人の規模で連絡が取れていないと報道されています。
建物の崩壊よりも、こうした金融のexpertを失ったことのほうが大きな損失だという人もいます。World Trade CenterのcomplexにはNASDAQの本社ビルがありますが、これも崩壊寸前だということで、数ブロックしか離れていないWall Streetでの株式市場の再開のめどが立たないことを含め、世界経済の金融の中枢部分に大きな被害が及びました。

テロリストの特定化には全力が注がれており、各地でsuspectの逮捕者が出ていますが、ボストンでもCopley Placeとよばれる高級ショッピングセンターに建つWestin Hotelでも容疑者を捕らえることに成功しました。ブッシュ大統領はterrorismは民主主義の敵だとしてNATOの協力を得て報復措置を近々講ずるはずです。 これに関連して、気になる情報がCBSで報道されました。

最大の疑惑をもたれているOsama bin Ladenの直近が数ヶ月前にCBSのレポーターに「アメリカは自由な国であるから、これほどvulnerableな国は無い。ペンタゴンでもホワイトハウスでも簡単に攻撃可能である。アメリカは遠くからロケットを打ち込むしか能の無い腰抜けである。我々には自分の命をかけて突入する覚悟を持つものはいくらでもいる」と答えていることでした。
今回のAttackに直接の関連性を強く示唆する内容で、イスラムが宿敵アメリカをいかに敵視しているかが良くわかります。

それと同時に今回のテロの背景にある政治、さらにその背景にはイスラエルを巡る根深い宗教対立があり、私たち日本人には知識として考察できても、本当に深く理解することは難しい問題ではないかと感じています。
しかし、アメリカはブッシュ大統領の度重なる声明文に強く現れているように、いかなる状況下にあっても民主主義は守り通すという姿勢を崩しておりません。国を挙げて未曾有の事態に立ち向かう人々の姿がテレビに映し出されています。

献血の列、数多くの追悼ミサ、ボランティアとして働く医師、看護婦、rescue隊の姿が大きな救いとなっています。


望月宏

(注)第1次,第2次世界大戦、およびベトナム戦争で亡くなった卒業生の冥福を祈って建てられたもの



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