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新ボストン便り 第5回〜9月13日便〜

被害の状況が次第に明らかになるにつれ、悲しみとともにこうした悲劇を引き起こしたテロリストを徹底的に叩くべきだとする風潮が高まり、
疑惑をかけられているOsama bin Ladenの背景が報道され始めました。

このテログループは莫大な資金を持ち、最新の通信技術を擁している事がわかってきました。

注意すべき点は、軍事、テロ情報の傍受機関の中心組織であるNSA(National Security Agency)が
今回のこれだけ大掛かりな活動に関して、一つも情報が取れなかったという事実であり、その背景が重要です。
Ladenはその膨大な資金を使い、最新の技術を取り入れた通信技術をもっていることは明らかで、通常の通信システムの中にencryption(暗号のように形を変えてある信号を埋め込む技術)されたcode(信号の体系)を巧みに使って通信しているようです。

そのため、通常の形ではほとんど傍受は不可能であると思われます。アメリカの技術がそれに追いついていないということもまた事実であるようで、通信技術戦争ですでに負けているとNSAが認めているという点が大いに気になるところです。
また、Ladenの血縁者がハーバード大学に多額の寄付をして冠講座を持っているとも言われており、この事実にも唖然としました。

さて、アメリカ国内のハーバード大学での楽しみの一つは、世界中から様々な人が日々訪れて、シンポジウム、研究会が開かれ、それに自由に参加できることです。
その中でも良く知られているものの一つにARCO Forumがあります。これはJ. F. Kennedy School of Government (ケネディ行政学大学院)の一階から四階まで吹き抜けのアトリウムで開かれる公開のシンポジウムで、

毎週、政治、経済、公共政策、防衛などを中心にしたテーマで各界の識者を招き公開討論会が開かれます。
今日は新学期の最初で、テーマは下記のように中国のWTO加盟問題でした。中国のWTO加盟は今月中にも承認される見通しですが、その影響についてやはり一番論ぜられたことは中国経済における、外資、私企業と政府との関係でした。

中国では私企業は“HOPE”(総合機械、電気機器製造)などごく一部の成功した企業もありますが、ほとんどは政府の厳しい規制の中で充分に発達していないほか、外資についてもたびたび変わる政府の姿勢と規制に翻弄されており、
今回の加盟に伴い法整備、規制緩和が進むことによって環境が整えられるのではないかとの期待が寄せられました。
ただし、社会保障制度などの整備は主として都市部の勤労者に恩恵があるものの80パーセントを超える農業には期待薄で、
ますます地域の所得格差が広まるのではないかという懸念もフロアから上がっていました。
これに対して現在の居住地を制限する法律は5年以内に撤廃されるとのことでした。

いずれにしても長期的な観点から見れば、ここ20年間高い成長を維持できた中国経済ではありましたが(最近時は5パーセント程度に低下)、これは先進国へのキャッチアップ余力が大きかったためであり、
キャッチアップが進むにつれて鈍化しながらも先進国への歩みを目指すものと思われます。
そのためにもWTOへの加入は必要で避けて通れないステップである点ではフロアも納得していました。日増しに世界経済に与える影響力を増す中国に対する関心が高いことから、数多くの参加者があったことも印象的でした。

"China and the WTO: The Financial Challenge." (ARCO Forum) Anthony Saich, KSG; Jeffrey Sachs, director, CID; and Yasheng Huang, HBS; Zuo Xuejin, vice president,
Shanghai Academy of Social Sciences; and Joseph Stiglitz, Columbia University.



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