2008年10月20日 教養ゼミ発表 「ミュージカルについて」 名波勇貴

 

◎寺崎:前々回の講義の中野さんの感想を読んでショックを受けた。中野さんの書いているとおりだと思う、マジで。 僕は基本的なことを忘れていた。そう、スタンダードがあるからサブがあるんだ。それを知らなければ、そのカウンターとして出てきたものの価値はわからない。まったくそのとおりだと思う。 僕たちの世代は物心ついたころには古典的なものが崩れていた、そういうところからスタートした、という認識が、たぶんそれが主流な見解だと思うけど、僕にもあって、サブ的なものがスタンダードになった逆転した時代の中で、もともとスタンダードであったものに新鮮な感動を覚えていけるなら、そっちの方が、創造的なあり方だと思った。超反省した。
 
 で、そういう視点で発表を聞こうと決意しました。
 
 オペラ、バレエ、ミュージカルとルネサンス的な所を起源に持つ芸術を見てきて、たぶんクラシック音楽もルネサンス期に大きく影響を受けているし、単純にやっぱルネサンス期ってはんぱないと思ったのと、現代にいたるまでの流れを見てどの芸術も、貴族大衆・難解わかりやすいラジカル、というような流れを踏襲していて、その相似関係に不思議な気持ちになりました。
 
 また、講義中、佐藤さんの質問に対する回答として、先生のおっしゃっていた、ミュージカルの歴史としてはこのレジュメのとおりだけど、各時代ごとに各地域でそれぞれの音楽劇が開催されていたし、そういった状況の中で、めぼしいところをピックアップしていったものがこうして歴史として現れているという視点に、また、あーそうだ確かにそうだ、と中野さんの感想を読んだときのような衝撃を受けました。音楽だって、今現在までもアフリカでは独自の音の世界が存在しているし、電子音楽だってもともと正統な音楽の歴史外からテクノロジーとして現れたものだ、と。 世界とか、そうはいわないまでも、なにかを理解するって果てしないですね。そんなことを考えた講義でした。(寺尾:まとまった「講義」ではないので、寺尾の補強的な説明は、いつも話しながらアッチコッチに飛びがちですが、聞いている側が適宜、取捨選択しているようで安心です。何?講義も似たようなものだ?う〜む、そうかも。)

 

          佐藤:ミュージカルというものに関して、全くと言っていいほど知識がなかったので、とても勉強になりました。日本でミュージカルというと劇団四季くらいしか知らないので、日本でミュージカルがどのような展開をしてきたのか、またどのような現状にあるのかに興味を持ちました。キャッツ・ライオンキング・オズの魔法使いくらいしか聞いたことないのですが……
 今まで見たミュージカル映画って、ウエストサイドストーリーと、ジーザスクライストスーパースター、スウィーニー・トッドフリート街の悪魔の理髪師くらいなんですけど、もっといろんな作品を見てみたいような気がしています。そう言って、行動に移さないのが大抵なんですが……。ドラマやアニメなどの作品での「挿入歌」って、なんとなくミュージカルチックな感覚で取り入れられているような気がします。「ゲド戦記」なんかで、ヒロインが歌ったりするようなのが。(寺尾:いつも言ってることですが、演劇と音楽は切り離せない。ついでに言えば、ダンスや建築や美術や文学や経済や法律や飲食や交通や・・・その他モロモロとの相互関係の総合性(頭韻だ)こそが演劇というパフォーマンスの命です。ちなみに前期にライオンキングの演出家ジュリー・テイモアのインタビューを見たと思うが。)

 

◎中野:ミュージカルには映画化される作品が数多くあるという話から「ウエストサイドストーリー」や「サウンドオブミュージック」をみたが、舞台とは違うおもしろさがあってこっちもいいなぁと思った。「ウエスト〜」にはカメラアングルがどんどん切り替わるシーンがあったけど、ダンサーを上から見下ろしたすぐあとに横から彼らにズームアップしていくなんてこと、客席に座っている舞台では無理だ。でもそのかわり、映画では作り手に見方をコントロールされる。舞台では自分の好きなように(ダンスシーンに踊っていない端っこの人をみたり)できる。それぞれにいいところ、そうでないところがあるけれど、それぞれ違っておもしろい。生の舞台の、舞台上の人たちの身体や声の迫力は感じられないけれど、映画の「第三者の目をかりてものをみてる感じ」を舞台にとりこむのもいいのかな、と思った。ミュージカルはとくにショー的要素が強いから、カメラを通して普段では絶対見られないところからものを見たりするのは、非現実感を助長していいのかもしれない。

それと前から、ヨーロッパの音楽劇とミュージカルの違いが気になっていた。ミュージカルではダンスが大きなウエイトを占める、ということはオペラとの決定的な違いだろうけど、それだけじゃない気がする。イタリアにもフランスにも、イギリスにもオペラはあったのに、どうしてアメリカだけでミュージカルという形に姿を変えてこんなに発展したのだろうか。

ロンドンでもミュージカルは盛んなようだけど、アメリカのブロードウェイがやはりミュージカルの本場と言われるようになったのは、大衆芸能における土壌の違いがあったからではないか。ヨーロッパとは異なる、アメリカのそれがどういうものなのか気になります。(寺尾:ミュージカルを語ることは、アメリカを語ることでもあります。そしてそれは「現代」を語ることでもあります。プラスとマイナスと、光と影の両面を見据えることでもありますから、問題意識を鍛えるには良いでしょうね。)

 

          塩田:音楽劇のオペラから発展していき出来上がった一つの芸術作品かと思います。私も過去に劇団四季の「CATS」と「ライオンキング」を見たことがありますが、「CATS」の時は中学生だったので演劇感覚だったような目で見ていましたが、「ライオンキング」の時は舞台下のオーケストラの演奏と演出に印象を受けた覚えがあります。人気のある作品を繰り返し開演しても、人気が落ちないのはやはり舞台側の工夫が大きいものかと感じました。(寺尾:実際に見たときのことを思い出すとどうでしょう?)

 

          高木:オペラやオペレッタ、レビューくらいは言葉を聞いたことがありますがまったく知らなかったので少しわかりました。あとサウンドオブミュージックを中学の英語でやったのを思い出しました。確かその時に授業で初めて見ました。ドレミの歌は単純だけど耳に残る曲ですね。音楽でもやったのかドミミ・ミソソ・レファファ〜とか覚えてました。軽快でわかりやすい曲なので現代でも子供に聞かせたら喜んで歌って踊りそう。話が違うかもしれないんですが、万人にうける名曲とかって意外に単純な歌詞だったり、シンプルなメロディーだったりするなと思いました。上を向いて歩こうとか。ドレミの歌もシンプルな歌詞や曲だけどだからこそすんなり受け入れられるのかなと思いました。(寺尾:「ダンサー・イン・ザ・ダーク」を図書館で 探したら、何故か本編のみ欠落していました。残念。)

 

          大出:ミュージカルの歴史的な流れは理解できました。新しく生まれたものの方が踊りなどの要素を取り入れ、より視覚的になっていると感じました。オペラやレビューなどは知っているのですが、ミンストレルというものは知らなかったので調べたところ、人種差別などの強い風刺のものであることがわかりました。日本でも安保闘争の時に演劇に変化が表れていたので、演劇はどの国でもその時の社会情勢に影響されるものだと思いました。(寺尾:現在は娯楽性ばかりが強調されていますが、もともとは社会批判的要素も強かったようです。商業化の光と影です。)

 

          永井:バーンスタイン作曲のウエストサイドストーリーは聞き覚えのある曲が多 く耳に馴染みやすかったです。指揮だけでなく、作曲まで手がけるバーンスタインの音楽性を改めて知ることができました。バーンスタインから多大な影響を受けている小沢征爾の音楽も聞いてみたいと思いました。(寺尾:ドラマ的にはシェイクスピアが土台です。)

 

          金野:ミュージカルの歴史というものは奥が深すぎるのであまりよく分かりませんでした。しかしながら興味を持つきっかけにはなりました。発表の後にレーザーディスクで見た2本に関してですが感動しました。画面で見てもこのように感じるなら、舞台のを見に行ったら言葉を無くすかもしれません()。いつか見に行ってみたいです!(寺尾:行きなさい!)

 

          黒岩:ミュージカルについて、オペラのところでも書いたが「何故歌うのか」という疑問がある。大体の、というかこれまで私がみてきたミュージカルは明るくてとにかく歌っているイメージだった。しかし映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のようにどうにもならない苦しさ、悲しみを歌に表現し叫びとして伝える作品もある。とすれば、明るくて楽しい歌は場面場面の楽しさを伝える工夫をしているのではないかと思えてくる。
 例えば劇団四季のライオンキングであれば、楽しいシーンは明るく歌い、悲劇的なシーンでは叫びとして訴える。また、集団の歌や動きは雰囲気を作るのにも有効だ。ライオンキングではジャングルの感じが出ていた。
 最後に、やはり『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』のことを書きたいと思う。この作品はロック音楽を使ったミュージカルで、その内容は孤独な主人公の叫びそのものである。
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』はビョークの歌唱力がそのまま叫びとなったが、この作品ではロックの持つ破壊力が悲しみを表現している。音楽のジャンルで内容を伝える工夫が出来ることはミュージカルの幅を広げていると思った。(寺尾:1970年代以降、演劇に大きな転換がありました。ロック・ミュージカルも、そのような流れの中に位置づけられるでしょう。)

 

          宇和島:ランキングの上位に入っているミュージカルの多くが映画化されていることを知り、現代のミュージカルは映画と強いつながりがあるのだなと感じた。大成功を収めているミュージカルは当然観客を魅了する物なわけで、映画会社からすればそれを下敷きとして使えるミュージカル映画は製作が楽で、だから手を出すのだろうか?と思った。そこそこヒットするのは最初から分かっているような物なので。(寺尾:その通りです。舞台ヒット作を映画が取り込んだわけです。)

 

          鈴木:今回ので初めてサウンドオブミュージックを見ました。ドレミの歌のシーンでは広大な自然の中で歌っているかと思えば、馬車に乗って歌ったりと何回も場所が変わったのが面白いと思いました。ミュージカルは四季のをずっと観たいと思ってるんですがやっぱり値段が高いです。良い席を選ばなければ良いんですが、C席やD席だと遠すぎるらしいのでやっぱりA席とかで観たいです。というか3000円とかで観れるミュージカルができてほしいです。(寺尾:確かに値段の高いのが難点。ドイツだと「立ち見」があって、何百円の席です。)

 

          渡辺:ミュージカル、といえば個人的にはやっぱり劇団四季のイメージが強い。年中やっているし、CMやら電車の広告やらの宣伝にもお金をかけている。そうしたイメージのあるミュージカルだが、今回の発表で特に気になったのは、やはりブロードウェイの件だろうか。正直言ってしまうと、ミュージカルの前史の部分はオペラの回とだいぶ重複してしまっていて残念であった。その分、アメリカの歴代の公演回数などの話のほうが興味をそそられた。ちょっとした疑問だが、公演回数のカウントはどうやってされているのだろうか。あの回数は再演に次ぐ再演で8000回以上なんだろうか。だとしたら年間ですごい回数行われていることになってなんだか驚きである。(寺尾:繰り返しますが、「音楽劇」としての演劇研究自体が、まだ始まったばかりです。)