2008年11月17日 寺尾教養ゼミ発表 W19小堺裕仁:ホラー映画について
◎寺崎:映画全般については人から勧められたものを散発的にみているだけなので、なかなか体系だった疑問を持ったことがないけれど、大学に入る前の鬱々とした時期に2〜3か月ほど部屋にこもって、友達から借りたB級とよばれるホラーやカルトな映画だけを見ていた時期がある。コフィンジョー?ジョンウォーターズ?ヘネンロッター?「ギニーピッグ」?「ロンサムカウボーイ」?「ブラックエマニエル」?…これらの人・作品が有名かどうかは知らないし、いま思い出そうとしても内容が全然クリアに浮かんでこないけれど、あのB級特有の安っぽいセットやバカバカしいストーリー、全然リアルじゃない悲鳴&死体みたいな、この世のダメなものを全部詰め込んでしまえというようなゴテゴテで濃縮されたいかがわしい雰囲気だけが記憶の中に溜まっている。見終わった後は本当にいつも、こんなくだらない映画、世界でみているのは今自分だけなんじゃないかという気持ちになっていた。けれど、その時にはそういうものが必要だったんだ、と思う。B級ホラー映画にはある種の荒んだ精神状態に対して、癒しのような形での強烈な親和性を持つことがある、たぶん。
なぜなんだろう? 考えてみると、それはB級ホラーには最近の映画にあるような感動や前向きさがすっぽりと抜け落ちているからではないか?たとえば主流の映画は人間をまっとうに捉え誠実にその内面を描こうとする。
しかしB級ホラー映画の登場人物たちにそれはない。コーラとホットドック片手に深夜番組を見続けているデブとか、夜のトンネルにドライブにきた大学生グループとか、彼らに内面なんてこれっぽっちもない、これっぽっちも描かれることはない。そういう奴らがただただギャーとかヒャッホーと叫びながらドライブして裸になったり残酷に殺されたりしていく。そこには人間の尊厳なんて存在しない。画面からは延々とあらゆることは無意味なんだというメッセージが発され積みあがっていく。
しかし実はそこが重要なのかもしれない。あらゆるくだらないものをくだらないままそのまま映し出すこと、そこに変な意味づけをして偽善的に物事を歪めないこと。実はそれはとても優しい目線だ。
そういう方法でしか本当の意味で何かを肯定することは不可能だ。B級ホラーにはそれがある。そしてたとえばとんでもなくネガティブでペシミスティックな人間がいたとして、彼らにとってその視線というのはとても大きな癒しとして機能するんだと思う。ダメなものがダメなままで存在を認識される世界。今思い返せばそれってちょっとヤバいけど。(寺尾:B級映画礼賛の感想。世の中、キレイゴトばっかじゃねえんだぞ!とシャウトする感覚と近いのでしょうか。忘れていた若い頃を思い出す。)
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佐藤:「核の落とし子」たる我らが『ゴジラ』はモンスター映画に含まれるのだろうか。『13日の金曜日』『エルム街の悪夢』などは最初の作品以来、サザエさんやちびまるこちゃんの如く「お約束」を含んだ映画となり、遂に『フレディVSジェイソン』なんて映画まで生み出してしまう。また、現在の映画では、ホラー映画に限らず、否、映画に限らず『リメイク』が多い。確かにネタ切れ感が強いような気がしてしまう。
……私はホラー映画は怖くて見られないので、正直何を書いていいのか分からない。ゲームも『バイオハザード』『クロックタワー2』『かまいたちの夜』『弟切草』くらいである(そういえば、『鳥』を今回見て、『バイオハザード』を思い出した……)。洋画だと『エルム街の悪夢(1作目)』と『CUBE』、『羊たちの沈黙』『ES(ホラー?)』にチャッキーシリーズくらいか。チャッキーは正直今でも怖い。私はあれのせいで人形があまり好きではない。日本映画だと『リング』と『呪怨』『着信アリ』『仄暗い水の底から』くらいか。そもそも日本映画のホラー映画で名作と呼ばれる作品があるのか知らない。
あと、昔、ピエロの出ていた映画が怖かったような気がするのだが、作品名が分からない。ただ言えるのは、そのせいでマクドナルドのドナルドが自分にとって恐ろしい存在となったことである。『チャーリーのチョコレート工場』も同様の意味で怖い。ハッピーエンドだが、すっきりしなかった。そういえば『見世物小屋』『サーカス』はよく恐怖の題材に使われるというけれど、そういう映画はあるのだろうか。あんまり見たくは無いけど。小説だと江戸川乱歩や横溝正史(読んだことはない!)、漫画だと丸尾末広なんかが有名らしいけれど……。(寺尾:コワイのはイヤだけど、それなりに見ているし、見たいと思うのは何なのでしょう?好奇心でしょうか?異界や死への本能的なこだわり?ところでサーカスは「見せ物」という意味で、演劇的な核のひとつです。)
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西里:正直に言えばホラー映画は嫌いでしたが、昔の映画はそれほど怖くなくて安心しました。同時に、ホラー映画の演出力の向上ぶり(つまり現代の映画が数倍怖い!)にも驚かされました。今でも積極的に見る気になれませんが、いかに観客を怖がらせるか、という演出の方に目を向けてみるのも面白そうだと思いました。(寺尾:CG合成の技術の進歩は、一見するとリアルさが増したように見えながら、実はヴァーチャルであることの意識をより先鋭にして、かえって嘘くさくしているようにも思えます。)
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永井:以前、日本の有名なホラー映画を、ハリウッドがリメイクした作品を観た際に思ったことは、日本と欧米の霊に対する概念は異なっているのではないかということです。一般的に、日本のホラー映画に登場する霊は、怨念を持つ怨霊であり、物理的な制限は一切受けず、浄化するにはその霊の哀しみを拭い去るなどの願いを叶えてあげるのが成仏させ、危険を免れるほぼ唯一の方法とされていると思います。実際、私が観たその日本の映画も前述のような手段で解決するストーリーだったのですが、リメイク版はどういうわけかそのターゲットを銃で撃ち、閉じこめるだけで解決してしまったのです。このことから欧米では怨念という概念が理解できず、結果霊をモンスターとして解釈するほかになかったのではないかと思います。この概念の垣根がなくならない限り、日本のホラー映画をハリウッドがリメイクするのは難しいのではないかと思いました。(寺尾:怨念の対象が日欧で異なる・・・との指摘はおもしろいです。「ハムレット」でも、亡霊は自分では何もできません。キリスト教のバイアスがかかっている影響でしょうか。)
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田所:ホラー映画はあまり見たことがなかったので、今回はいい経験になりました。「サイコ」のようなホラー映画ならまだ見れますが、スプラッター映画は見る気になれません。「羊達の沈黙」ですら、残酷なシーンで目を背けたくなりました。(寺尾:もちろん無理に見る必要はないのだが、例えば・・・イラクではスプラッターが「現実」では?)
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高木:ホラー映画好きなので聞いていて飽きなかったです。名前忘れてしまったんですけど(シャワーシーンの女の人の)、あれは本当に今や王道ですね。血もそのまま映すんじゃなくて水と一緒に流れるとか、襲われているとこを全部映すような直接的じゃなくて連想させる感じですごいなって思いました。(寺尾:高木さん、文章が少々雑です。)
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小堺:今回、ホラー映画を調べてみて新たな発見がたくさんありました。今までは何気なく見ていたホラー映画のモンスターたちとその時代の背景です。一昔前であれば、未開のまだ見ぬ化け物、そして戦争のときは相手国が作り出した生物兵器、そして、戦後は戦争の傷跡がもたらした放射能などの影響を受けて突然変異した生物、世紀末は地球の滅亡、最近は人間の内面の恐ろしさ、これは最近の異常で不条理な猟奇的事件の多さからも垣間見ることができると思います。そんな時代背景を合わせてみるとホラー映画に限らず、他の映画からも読み取れると思います。そんな事を頭に入れながらこれから映画を楽しみたいなと思いました。(寺尾:芸術は(も?)時代の鏡です。)
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金野:私の実家ではWOWOWを見ることが可能なので(、)退屈な時は映画を観ていました。その中でもホラーというジャンルは高校生になり(、)興味を持ち始めたのですが、親がグロテスクなものを嫌っているせいで(、)あまり観ることができなかったので(、)ゼミで色々と観れて嬉しかったですし(、)興奮しました。昔の技術が今でも使われているという点には(、)かなり驚かされました。カメラアングルや音楽(BGM)を消し(、)映像による恐怖の与え方といったものです。白黒の映像という事で(、)怖さが増したりしたのも味があって良いなぁ、と思ったので(、)個人的にDVD等を借りて見てみたいと思います。(寺尾:「、」を補助的に入れてみました。参考にして!)
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大出:今回見た「羊たちの沈黙」など、現在主流の演出をよりリアルにし、恐怖を前面にだしたスプラッター映画は何回も見たことがありましたが、それ以前のホラーはまったく知りませんでした。人間らしきものがよくわからない空間で人間らしきものを殺すというシーンがありましたが、結局よくわからないままでした。ホラーという言葉は恐怖という意味なので、ホラー映画として呼んでいいものだったのか疑問が残ります。
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鈴木:今回はホラーということでどんな怖いものを見せられるのだろうと思ったが、意外に大丈夫であった。ホラーにもスプラッター系、生物パニック系などいろいろあって、「JAWS」がホラーだったのは意外であった。僕はスプラッター系っぽいのを一回見たことがあるけど、ああいうのは自分にあわないと思います。
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宇和島:ホラーについてだったが、ホラーもその時代背景が大きく影響しているのだなと感じた。羊たちの沈黙を見たが、この映画では実際の事件をモチーフにした場面が数多くあり、その事がこの映画をより一層、観客にスリルを与えているのだと思う。また、悪魔のいけにえは以前見たことがあるが、あまり恐怖を感じることは出来なかった。むしろ笑えてしまう場面も多々あった。しかしながら、ラストのシーン、レザーマスク(加害者の一人)がチェーンソーを手に持って踊り狂ってるシーンは息を呑むものがあった。
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名波:映画でもホラーというジャンルに焦点をあてた歴史は、なかなか面白いと思いました。ヒッチコックの作品は、やはり観客の恐怖感をあおるようなアングルや音楽効果が印象的でした。僕は、もともとホラー作品が苦手なので最近の作品でも見たことのないものがたくさんあったので少しずつ見ていきたいと思います。