参考図書
■進化経済学基礎
2010年にやっと出た進化経済学の体系的教科書。主体能力の有限性と時間の不可逆性を出発点として、完全にボトムアップに経済学の体系を構築する。最適化行動と市場均衡という経済学伝統の作法に真っ向勝負。もうすぐ応用編がでる予定。
■経済思想1「経済学の現在1」
全11巻からなる経済思想シリーズの1巻目。第5章「マルチ・エージェント・ベースの経済学」で進化経済学の基本的な考え方や設計について説明しています。
■疑似科学と科学の哲学
伊勢田哲治著
科学じゃないものと科学の線引き問題を通じて、科学とは何か、きわめて平明に論じています。科学哲学の第一歩にぜひ。2010年度テキスト
−−−−−以下は2000年頃に書いたものです。
■経営システムのモデリング学習:STELLAによるシステム思考
森田道也編著 牧野書店
Stellaを使ってみるには、もちろん、マニュアルを読むのが一番ですが、経済学や経営学のモデルをStellaで組み立てて動かしてみようというとき、この本はわかりやすくて便利です。
いったんStellaになれてしまえば、あとは皆さんの関心とアイディア次第。
■MATHEMATICA 複雑系のシミュレーション;物理学と生物学の探求
R.J.ゲイロード、P.R.ウェリン著、 荒井隆訳 シュプリンガーフェアラーク東京
Mathematicaも、とにかく使い方になれてしまえば、とてもとても強い武器になります。だって(解けるものであれば)微分方程式のややこしいのだってチョチョイと答が出てしまう魔法の杖みたいなもんですから。数値解法だって当然ながらお手のもの。綺麗なグラフィックとともに、鮮やかに答えてくれます。
そんなMathematicaですが、問題はとっかかり。
Mathematica ビギナーズガイド T.グレイ、J.グリン著、榊原進訳 トッパン
もいいのですが、もう少し複雑系と関連があるほうがいいかと思ってこの本を挙げました。自然科学系の複雑系のトピックスそれぞれのモデルの仕組みがどうなっているのか、おさえながら読んで下さい。
■進化ゲームの理論 J.W.ウェイブル著 大和瀬達二監訳 文化書房博文社
不可逆的な時間構造をもっていないと実システムを扱う経済学なんてできないと思う私には、合理的なプレイヤーという想定を外しても、ゲームの構造が繰り返し保持されるのはとても気持ち悪くて、あまり進化ゲームに肩入れしたくないのですけど、何にも知らないのも困るということで分かりやすい解説書がこれ。数学は出てくるけど、毛嫌いせずに第6章の解説などを手がかりに挑んでみてください。
■教えてほしい数学の疑問1・2 数学セミナー編集部編 日本評論社
上の本の紹介で数学を毛嫌いせずに、といいましたが、そうは願ってもなかなか数学のほうがこっちを嫌いなんじゃないかという気にさせてしまうのが数学。そこをうまく橋渡ししてくれそうなのがこの2冊です。ほぅ、そうゆうことだったのかぁ、なんて調子で私も読みました^^;
■イノベーションと組織選択; マネジメントからフォーラムへ 田中政光著 東洋経済新報社
経済学の外に出てみたら、企業の意思決定の捉え方はずいぶん違うことに気づかされます。組織を目的合理的なものなんて考えるのがマチガイのモト。ルーズ・カップリングとゴミ箱モデルの解説もあります。
同じ著者の「ルース・カップリングの理論」『組織科学』vol.15No.2もどうぞ。
■システム知の探求1 決定するシステム 木嶋恭一・出口弘 編 日科技連
■マルチメディア時代の人間と社会 ポリエージェントソサエティ 高木・木嶋・出口ほか 日科技連
複雑系のことを考えるのにシステム論をおさえずにやるのは無謀というもの。ポリエージェント・システムということで、システム論のフロンティアとしての複雑系を探求しておられる出口さんの本も読んでみてください。
■貨幣をかんがえよう
1冊の本ではありませんが、私たちの経済社会にどうして貨幣というものがあるのか、考えてみませんか。そのための素材となるものをいくつかあげておきます。
まず貨幣がどう話題になっているのか把握しましょう。
岩井克人「貨幣とは何か」、『経済集志』(日大)59巻4号、1990.1
(もちろん、岩井『貨幣論』、筑摩書房、1993を読んでもかまいません)
次に、経済学は貨幣をどう扱っているのか知りましょう。
清滝信宏「貨幣と信用の理論」、岩井・伊藤編『現代の経済理論』第V章、東大出版会
(この中で紹介されている論文は基本ですから、経済学の中で貨幣を話題にしたいのなら目ぐらい通しておかないといけません)
そして、それらの基本的な問題とはなにか考えてみましょう。
安冨歩「貨幣の生成と自壊」、『数理科学』No.368、pp.48−52
安冨歩「均衡の経済学から生成と崩壊のダイナミクスへ」、『数理科学』No.396、pp.39−43
これは在庫を扱っていますが、貨幣を考えるヒントになります。
森岡真史「投入産出構造・販売予測・緩衝在庫」、『経済論叢』(京大)161巻1号、1998
■ニューラルネットの勉強をしよう
ゼミのHPの複雑系関連文献の紹介コーナーに『複雑系のカオス的シナリオ』が載っていましたが、ある程度ニューラルネットの仕組みがわかっていないと賞味できないと思います。そこでニューラルネットの参考書を挙げておきましょう。
教科書と言えばこれでしょう。でも難しいよ。
甘利俊一、『神経回路網の数理』産業図書、1978
もう少しやさしく書いてくれているのがこれ。
中野馨編『ニューロコンピュータの基礎』コロナ社、1990
でもね、ちゃんと数学やってないと、モデルも展開できないしどうも気持ちが悪いと思う人(君はエライ!)はとりあえずこの辺からはじめますか。
都筑卓司、『なっとくする物理数学』講談社、1995
都筑卓司、『なっとくする統計力学』講談社、1993
もっと基礎の微分方程式のところから強化したいのなら、
石村園子、『すぐわかる微分方程式』東京図書、1995
「すぐわかる」シリーズはじつによくわかるように書いてあると思います。
さて、話しは元に戻って、プログラミングしながら、ニューラルネットの仕組みを理解する本。
難しい数学は出てきません。
平野広美、『Cでつくるニューラルネットワーク』パーソナルメディア、1991
■日々の食事を見直そう
はっはっは、紹介書いててちょっと疲れちゃいました。(みんな、ちゃんと読んでるかー?)日々の食事、ごく簡単なのでもいいんです。たとえばお茶漬けについて、じっくり考えてみるのはいかがでしょうか。
北大路魯山人『料理王国』、出版社忘れちゃった。箱入りの本です。
私、前から上手に焼いた甘塩の鮭と美味しい煎茶の絡んだお茶漬けはいいなぁと思っていたのですが、その煎茶のこともありました。たまには心静かに豪華なお茶漬けなんていかがでしょうか。本の内容とは関係無いけど、お茶漬けといえば、鮒鮨のお茶漬け(ふたのあるどんぶりに炊き立てのごはんを盛り、鮒鮨を3、4切れおき、その上に軽くごはんをおき、熱湯を注いでふたを閉め3分くらい。あ、鮒鮨は大津阪本屋の子なしお得用がいいですね。頭のところだってとろけるようになってます。)はいいですよ。胃の疲れ気味のときなんかには最高。
湯木貞一『吉兆味ばなし』1〜4、暮らしの手帳社
高級料亭吉兆の先代の本。日々の下宿の料理とはかけ離れているかもしれないけれど、食べ物に季節を大切にする心は残しておきたいですね。そういう目をもっていると、スーパーの買い物も楽しくなるかも。
研究室に、料理本、いくつかおいてありますから、面白そうなのがあったら自由に読んでください。
■ セルオートマトン法 複雑系の自己組織化と超並列処理、加藤・光成・築山著、森北出版
話がそれてしまいました。もとに戻しましょう。サンタフェ研のシリーズに格子ガスオートマトンなんてタイトルのがありますが、なにこれ?関係ないや、なんて飛ばしてませんか。(その前にシリーズを見てもいなかったら困るんですけど。本棚に並んでいる赤色のペーパーバックです) この本は、セルオートマトンの歴史、基本原理からその発展形である格子ガスオートマトン法、格子ボルツマン法のわかりやすい説明、自己組織化シミュレーションの例などあって、結構よい手引きになると思います。
■ Simulation for the Social Scientist,
Nigel Gilbert & Klaus G.Troitzch. Open
University Press
去年出た社会科学のためのシミュレーション入門書。そう深くはないけれど、たまには英語でどう?巻末の関連ウエブサイトの一覧も便利です。
■ 聖の青春 大崎善生著 講談社
まだ読んでないんですけど(ロンドンの本屋までは流れ着いてなくて)、一昨年の夏、将棋の村山八段(贈九段)が亡くなり、その秋に放映された特番を見て思わずうるうるしてしまいました。きっと、『きけわだつみのこえ』くらいのインパクトがあると思います。
(帰ってきた次の日、本屋で入手。睡眠不足も忘れて4時間くらいで一気に読みました。難病と背中あわせという秒読み状況もさることながら、ものすごい密度の思考は鬼気迫るものがあります。将棋を知っている人ならば、なおさらオススメ。)
■ 複雑性のキーワード 田口・三井・高木著 共立出版
『bit』別冊の『インターネット時代の数学』の好評に付き各章大幅増補分割展開シリーズの3。複雑系研究とは何か、でとても明解な章を書かれた田口さんによるPart1・複雑性オーバービューは結構いけてる。
■ シャウト! 金髪先生 ドリアン助川のロックで講義 テレビ朝日
97年に出て、あまりに面白いので勧めるあまりひとにあげてしまって、やっぱり手元にほしいなぁと思っていたところ、まだ入手可能なことを知って早速注文。やっぱり楽しい本です。70、80年代ロックの歌詞を題材にした英語の講義なんですが、いやー授業はココロやねぇ。学説史もこんなふうにやれたらいいのだけれど。
英語、ダメだと思っている人、在庫のあるうちに走れ!
■数学を何とかしたいっ!
と思っているけれど、なかなか何とかならないのが数学ですね。そんなあなたに心強い味方。指示された手順でいくら式を追ってもイメージがつかめなくてなんだかなぁな状態から脱出するための本を2冊。1冊目は、いろんなところで評判が高い、
物理数学の直観的方法 第2版 長沼伸一郎著 通商産業研究社。
あー、あれってそういうことしてたんだ、とちょっと気持ちが明るくなります。RBC(に必要な変分法)の勉強なんかで壁に当たっていたらお試しを。だけどもう一回り親切な味方をもう一冊。
道具としての物理数学 一石賢著 日本実業出版社
一石というのはペンネーム(たぶんドイツ語にしたときのやつからきてるんでしょうね)。高校数学から先に進めず困っている人、やっぱこれですぜ。
まあ、とにかく、なんでこんな変形やってるんや、とか、なんでこんな定義やねん、ってこと、知ると知らんとはえらいちがいです。
■将棋が強くなりたい
どこがまずかったか、どんな手順がうまい手順なのか、実戦から効率的な学習ができたらいいでしょうね。だけどどんなふうに指したのか、覚えてない−手順を再現できないものだから、学習もしようがない。そこを突破する決め手はたぶんこれでしょう。
脳内将棋盤
まさに脳内革命!
■ 進化経済学って何でしょう?
気づいたらこのページ、4年塩漬けにしてしまった。ゼミ募集の時期になって更新再開。というわけでまずこれから。
進化経済学ハンドブック 進化経済学会編 共立出版
冒頭でかなりのページを割いて進化経済学の考え方・ものの見方について書かれているので、読み物としても薦められます。事例編も面白いです。
■ 社会を<モデル>でみる (日本数理社会学会編)
2006年度のテキストとして使っています。経済学のモデルだけじゃつまらないから、社会学の人たち社会についての様々な数理モデルを紹介した本を読むことにしたのですが、解説が潰れているところが割とあるのが難。間違い探しの練習によいかも。経済学じゃない章の方が面白いかも。
■ 行動経済学 経済は「感情」で動いている 友野典男著 光文社新書
プロスペクト理論など、上の本で説明がイマイチなところを含めてわかりやすいです。経済学の基本想定と違うことがほれこんなにあるといいつつ経済学には背かず、既存の経済学の上に、というのは不自然な感じ。実験経済学でもそうだけど、なんでだろう。