真野 翼
「タイにおける自動車産業と日本の企業の関わりあいについて」
タイはASEAN最大の自動車生産国である。タイの産業は経済の基盤と言われるものがほとんどない状態で自動車産業が開始された為、日本の企業や海外の企業が技術供与を促し、現地調達を広げる事で発展させようとしてきた。80年代までは国産化政策を推し進め、90年代には市場拡大を見込んだ新工場の建設や、消費者ニーズの変化に対応した新モデルの投入など企業が競争力を高めようとしていったのだ。更には部品メーカーも参入し、GMやフォードといった大企業も生産拠点を設置した事で米国のメーカーも進出して行く事となるのだが、この様な工業化には政府の果たした役割も大きい。インフラの整備により道路や空港、港といった運輸手段も便利になり、新工場建設を検討していた企業を招き入れる事が出来たからである。タイはASEANの自動車産業においての優位性を高めているが、まだ外資系企業の生産拠点が多数集まったと言う段階である。しかし各社のASEAN戦略はタイを軸に組み立てて行こうと考えられているのだ。
話は変わるが、日タイ合弁企業はタイの自動車産業保護政策の下、タイ国内市場を志向として事業を展開してきたのだが、先進国市場と比べるとタイの自動車産業は小規模な生産体制であり、高度な技術・安全性・多額な投資を要する為、設計開発機能を持つ企業は少ない。この理由からタイの自動車産業は加工・組み立て機能を主とする事業として人材育成に力を注いでいる。しかし経済や社会・文化的制度など様々な環境の違いがある為、まだまだ多くの問題を抱えているのだ。
2001年11月6日火曜日、中国とASEANとの間で自由貿易協定(FTA)を目指し交渉を開始する事を正式に合意し、10年以内にこれを達成させようとし調印した。もしこれが達成されたら、相互の域内での総生産量が昇る。そうなると日本や世界の経済にも少なからず何らかの影響を与えていく事になるだろう。今後の経済の動向に注目していきたいと思う。