公共選択のフロンティア(ポスターセッション)のご案内アンナイ  
   
   
  7月1日(日)11:00〜13:00  会場カイジョウ:207教室キョウシツ  
   
   
   ホン大会タイカイでは、公共選択のフロンティアとダイしまして、ポスターセッションを開催カイサイイタします。大勢オオゼイミナさまのご来場ライジョウをおイタしております。  
   
 
  ロン ダイ   報告者ホウコクシャ    
  分権化/広域化のなかの介護保険制度   神山英紀   帝京大学   
  報道立場の相違に関する公共選択論的分析   庵原さおり   沖縄国際大学   
  国・地方自治体の震災対応に対する仙台市民の評価   河村和徳   東北大学   
  東日本大震災後の節電行動における他者行動認知の効果   吉良洋輔   東北大学(大学院生) 
  被災地自治体間の注目度の差異   阿部史郎    高崎経済大学   
 
   
    分権化/広域化のなかの介護保険制度    
    帝京大学 神山英紀    
     
   地方分権化は、表裏一体の「広域化」ももたらした。将来の介護保険制度の再構築を考えるなら、この分権化/広域化の議論をふまえ、行政の規模の観点から方向を見出すべきである。
 介護保険は、協力ゲーム論でいう「提携」の2つの組である。「保険」提携は、大数法則を利用した約束をすることでリスクを減らす。「扶助」提携は、必要(価値財)を満たす規範を共有することで安定的に効用を高める。ゆえに、「保険」は規模が小さいほど不安定となり,実際,小規模の市町村ほど財政安定化基金の貸付を受けている。「扶助」は規模が大きいほど不安定となり、実際、大規模の市町村ほど「低所得者に対する単独減免」の施策に多様性がみられる。
 ここから今後の制度の見直しで注意すべきは、「保険が分権的に・扶助が広域的に」運営されている点といえる。この解決には、人口1?3万の行政主体に権限・財源を集中する方向、あるいは国が保険を市町村が扶助を行う方向もありうるが、まずは、今後提示される改革案に上記の観点から検討してゆくことが求められよう。
 
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
     
    報道立場の相違に関する公共選択論的分析    
    沖縄国際大学 庵原さおり    
     
   各新聞の報道立場(もしくは論調、報道姿勢)に注目するとき、程度の差はあれ違いが観察できる。そこで本稿では、公共選択論の分析手法を用いた理論モデルを構築することで、各新聞が選ぶ報道立場について考察する。具体的なモデルとしては、2大新聞が報道立場と質を順に選ぶ2段階ゲームを考える。分析は、第1段階で選ばれる報道立場を所与とする各新聞が、第2段階で選ぶ質についての検討から行う。そしてこのとき、(ある条件を満たす場合には)第1段階で各新聞が選んだ報道立場の差が小さいほど、第2段階では比較的高い質を選ぶことになることを示す。本稿では次に、第1段階にある各新聞が、第2段階で選ぶ質を考慮しつつ、報道立場を選ぶ状況を検討する。そして、相手と異なる報道立場を選ぶ状況が均衡の結果として生じることを示す。なお、この結果が得られる主な理由は、各新聞が第2段階で選ぶことになる質を考慮するとき、質を上げるためにかかる費用をできるだけ削減できるよう報道立場で差をつけておこうとするためである。  
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
    国・地方自治体の震災対応に対する仙台市民の評価      
    東北大学 河村和徳    
     
   東日本大震災は、被災地に多くの爪痕を残し、また被災地の住民の心にも様々なものを残した。震災後、数多くの研究者が被災地に入り、被災者の意識に ついての聞き取りを行い、記録として残そうとしている。聞き取りによって記録を残すことは、今後予想される東海・東南海地震の対策をたて る上で重要な作業であり、その成果の公開が今後待たれることになろう。ただ、被災者の意識を収集する方法は、聞き取り調査だけではない。 社会調査の手法に則ったサーヴェィ調査を実施することも可能である。そこで、筆者ら東北大学情報科学研究科政治情報学研究室では、立教大 学社会学部と共同で、仙台市民を対象に「生活と防災についての市民意識調査」を実施した。本報告では、ここで行った調査のうち、国および 地方自治体の震災対応に被災地である仙台市民がどのような評価をしていたかについて紹介する。なお、国に対する評価の方が、県市のそれよ りも厳しくなる傾向がみられることが本調査からわかっている。仙台市民からみれば、「動きが見えやすい県市と動きが見えにくい国」という 対比が仕事ぶりの評価の違いになったと予想される。  
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
    東日本大震災後の節電行動における他者行動認知の効果    
    東北大学(大学院生) 吉良洋輔    
     
   選挙や社会運動などの集合行為において、他者協力の認知と本人の協力行動の間に関連が発生する「バンドワゴン効果」や「アンダードッグ効果」が知られている。本報告では、このような現象が東日本大震災後の節電行動においても見られたことを、質問紙調査データにより確認する。データは、東日本大震災後の夏期の節電行動について尋ねたインターネットパネル調査である。当時の東北地方では、電力需給が極度に逼迫し、一般家庭の節電が必要とされた。本報告ではこれを集合行為と捉え、他者協力の認知と本人協力との間の相関関係を分析する。具体的には以下のように分析を行う。まず他者協力の認知は、「東北地方全体で、何割の人びとが節電に協力していると思うか」という質問で測定した。この変数を独立変数として、節電行動を従属変数とする重回帰分析またはロジット回帰分析を行う。  
   
   
   
   
   
   
   
   
   
 
    被災地自治体間の注目度の差異    
    高崎経済大学 阿部史郎     
 
     災害が発生し、被災地が複数の自治体に跨る場合、自治体間への人々の注目度は等しいとは言えず、人々に被災地であると認識してもらえる自治体と被災地であることが認識されにくい自治体に分かれる。2011年、東日本大震災が発生した。人的被害は13都道県におよび、被災者生活再建支援法の適用地域も7県になっている。しかし、被害の甚大さ、津波、原発を理由としているのか岩手県、宮城県、福島県が被災地としての露出が高く、中でも津波の被害を受けた特定の自治体ばかりが露出している。注目度の差異は復興の差異に関係があるのではないかと思われる。
 被災地に対する支援として義援金と寄付金を寄せる行為がある。義援金は大きく分けると、日本赤十字社、中央共同募金会、日本放送協会、NHK厚生文化事業団の4団体に寄せられる義援金と被災地の自治体に直接寄せられる義援金の2つに分けられる。寄付金を寄せる側の行動として、特定の地域に関係なく被災者を支援したい人は4団体に義援金を送る。そして、特定の地域の被災者に支援をしたい人は特定の自治体に義援金を送ると考えられる。そのため、被災地の自治体に寄せられた義援金と寄付金は被災地への注目度の指標として見ることが可能であると考えた。今回は、義援金と寄付金から被災地自治体間の注目度の差異を報告する。
 被害状況は自治体間に差異がある。被害が甚大である自治体は寄付金、義援金が相対的に多い場合でも、不足感は否めないため、基準化が必要である。4団体の義援金は地域に関係なく被災者に公平に配分されていることから、4団体の義援金の配分を基準とした。
 結果は、注目度が高い自治体はマスメディアなどでよく耳にする自治体ではなく、また、相対的に被害が小さい自治体が多い。しかし、注目度が低い自治体にも同様のことが言える。寄付金と義援金を分けると、どちらかだけが多い自治体も多く、被災者に関心があるのか被災地域に関心があるのかの傾向も見えた。