著訳書の紹介 |
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2013年11月30日付けで,アンドレ・オルレアン著『価値の帝国――経済学を再生する』
(坂口明義訳,藤原書店,本体価格5500円)が刊行されました。 ■経済学の正統性危機を打開すべく,主流派(新古典派)経済学を その価値論に遡って批判し,コンヴァンシオン(慣行)理論に基づく代替理論を提示。貨幣動機で動 く現実の市場を分析するのに必要な経済学理論とはどのようなものか――読者諸氏に考えていただければ 幸いです。 ■書評:『産経新聞』2014年1月12日付(田村秀男氏),『週刊東洋経済』 2014年1月18日号(橋本努氏),『図書新聞』第3154号(原田裕治氏,2014年4月12日) ■紹介:『朝日新聞』2013年12月7日付,『日本経済新聞』2013年12月7日付。 |
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2012年6月21日付で,M.アグリエッタ・A.オルレアン編著『貨幣主権論』坂口明義監訳、坂口明義・
中野佳宏・中原隆幸訳、藤原書店(本体価格8800円)が刊行されました。 ■ユーロ導入の前夜のフランスで、多分野から集った11名の研究者が、古今東西 の貨幣を比較し、近代貨幣や近代社会の特質を明らかにしようとする学際的共同研究を行った。その成果が本書だ。 当時の「ユーロの賭け」を照らし出すべく練り上げられた本書の「生の債務」仮説は、解体の危険 に直面する今日のユーロを理解する上でも極めて重要と思われる。 ■本書は貨幣論研究のパラダイム転換――交換から債務へ――を告げる書であり、 とりわけ経済学者に対して実体論から関係論へとヴィジョンの転換を迫る内容を含んでいる。経済学を勉強してい ると、社会的分業を物質的相互依存としての面でとらえて事足れりとしてしまいがちである。だがそれではモノ足 りない――そう考える人にはぜひ本書を読んでいただきたい。<社会を解明対象とする経済学>への手がかりが得られるはず である。 ■書評:『日仏経済学会・BULLETIN』第28号(斉藤日出治 氏,2012年12月),『季刊経済理論』第50巻第3号(大田一廣氏,2013年10月) |
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2011年11月5日付で,E.トッド他著『自由貿易という幻想』(藤原書店,本体価格2940円)が刊行されました。 ■第6章に拙訳のJ.L.グレオ著「賃金デフレこそ世界経済危機の根本原因―― ヨーロッパ保護貿易プロジェクト――」が収められています。非常に短いテキスト(論説+Q&A)ですが、どういう条件 の下で自由貿易を採用すべきであり、どういう条件の下で保護貿易を採用すべきかを明快に定式化しています。このような 基本的知識がないままに、日本ではTPP問題の是非が議論されているように見受けられます。 ■紹介:『エコノミスト』2011年12月20日号 |
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2011年5月24日付で,山田鋭夫・坂口明義・原田裕治監訳によるロベール・ボワイエ著『金融資本主義の崩壊――
市場絶対主義を超えて』藤原書店,本体価格5500円)が刊行されました。 ■ サブプライム金融危機を経済史上の世紀的な事件と見るボワイエが、@歴史比較分析による危機の性質の解明、A政治経済 学的分析による危機原因の解明、Bレギュラシオン理論にもとづく危機後の世界経済の展望、という3つのアプローチから 同危機に関する見解を総括的に提示している。世界経済や金融システムの今後のあり方について、また現段階の資本主義経済分 析の課題について関心をもつ読者は、本書から数多くの有用な知見を得ることができるであろう。 ■紹介:日本経済新聞(2011年8月7日付),書評:『エコノミスト』2011年8月30日号 |
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2010年2月7日付で宇仁宏幸・坂口明義・遠山弘徳・鍋島直樹著『入門社会経済学〔第2版〕
――資本主義を理解する――』
(ナカニシヤ出版,本体価格3000円)が刊行されました。 ■ 第6刷まで増刷を重ねた社会経済学理論テキストの改訂版。改訂のポイントは、データや参考文献を新しく したこと。学習の便宜を増した本書が、さらに多くの読者によって有効利用されることを願う。 |
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2008年4月30日に,拙著『貨幣経済学の基礎』
(ナカニシヤ出版,233頁,本体価格2400円,ISBN
978-4-7795-0241-5)が刊行されました。 ■ バブル経済や不良債権問題に象徴されるように、現代経済の動向は、貨幣的もしくは金融的な要因に大きく左右される。 こうした現実を理解するためには、経済に課せられている貨幣的・金融的な制約を重視する「貨幣経済アプローチ」が役 に立つだろう。 本書では、貨幣経済アプローチに基づき、資産市場を頂点とする市場システムの機能メカニズムと、市場システムの不 安定性およびその克服のための条件について平易に解説した。これから金融や現代経済について詳しく学ぼうとする人に 、本書を基礎的な経済学テキストとして活用してもらえたらと思う。(『ニュース専修』2008年6月号の紹介文より) ■ 本書の目次 |
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2006年11月30日に,『環』27号(藤原書店)が刊行されました。 ■『環』27号の特集は「誰のための金融か」。「金融の多様なありようを,歴史 的・領域横断的に捉え直し,『誰のための金融か』を根本から考え」(p32)るという藤原書店の意欲的な企画です。 ■レギュラシオンから見た銀行について書いた拙稿「貨幣の両義性・主権性 と銀行の特殊性」と,フランスの銀行史家A.プレシの講演「近現代フランスにおける経済発展と銀行組織」(拙訳) が掲載されています。 |
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2006年3月30日付で,清水耕一氏との共訳になるジャック・アダ著『経済のグローバル化とは何か』
(ナカニシヤ出版,本体価格2400円,ISBN: 4-7795-0054-0)が刊行されました。 ■ 新書ルペール・シリーズからの翻訳。グローバル化の起源を11世紀までさかのぼって解説するとともに、 現在の世界経済が抱える諸問題を大局的に明らかにしています。K.ポランニーや世界システム論の業績と問題意識を 活かしてグローバル化の過程が叙述されている点、またグローバル化の歴史をその時代時代の経済学理論と関わらせて 「問題史」として描いている点、など類書にはない特色があります。 ■書評:朝日新聞(2006年3月19日付),紹介:日本経済新聞(2006年4月23日付) ■ 本書の目次 |
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2004年6月1日付で宇仁宏幸・坂口明義・遠山弘徳・鍋島直樹著『入門社会経済学
――資本主義を理解する――』
(ナカニシヤ出版,本体価格2800円)が刊行されました。 ■ 新リカード派・マルクス派・ポストケインズ派の最新の知見を基に執筆された,社会経済学理論の 教科書。 ■ 本書の目次 |
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2001年4月10日に拙著『現代貨幣論の構造』
(多賀出版、272頁、本体価格3200円、ISBN
4‐8115‐6111‐2)が刊行されました。 ■ 大学院時代からの研究をまとめた初めての私の単著です。 貨幣論を展開するのに役立つ概念を、先行の研究からできるだけ体系的な形で引き出そうという のが、本書の目的です。まだまだ自分自身の理論体系を構築するには至っていませんが、レギュラ シオニストやベルリン学派を中心とする諸議論がどういう構造をもっているかということは、本書に よってかなり明確になったのではないかと思います。 ■ 本書の目次 |
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2001年6月に,清水和巳氏との共訳になるアンドレ・オルレアン著『金融の権力』
(藤原書店,本体価格3600円、ISBN: 4894342367)が刊行されました。 ■ わが国では,『貨幣の暴力』(M.アグリエッタとの共著)の著者の1人として著名な A.オルレアン。本書においては,コンベンション(共有信念)の概念を軸にして,現代の 金融・資本市場の不安定性とその動態を解き明かしています。ラストの章の「資産個人主義」 に関する議論も,新時代の社会理論として注目すべき内容を含んでいます。 ■ 本書の目次 |
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1998年2月に,翻訳書,ミシェル・アグリエッタ著『成長に反する金融システム――
パフォーマンスと今後の課題――』
(新評論,本体価格2200円,ISBN: 4794803907)が刊行されました。 ■ レギュラシオン学派の代表的理論家であるアグリエッタが,80年代以降の先進国の金融シ ステムにおける激動を,マクロ的・長期的に総括した書。本書によってアグリエッタは 『ヌーベル・エコノミスト』誌の「1995年のエコノミスト」賞を受賞しました。バブル経済 とバブル破裂後のデフレ経済についての理論的説明を求めている人には,ぜひ一読をお勧め します。 ■ 本書の目次 |
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1996年5月に,翻訳書,ハンスイェルク・ヘル著『国際通貨の政治経済学――
貨幣・通貨間競争・通貨システム――』
(多賀出版,本体価格3800円,ISBN: 4811541618)が刊行されました。 ■ 著者は,ベルリン経済大学教授。ハジョ・リーゼを総帥とするベルリン学派の主要論客として 精力的に活躍している。本書は,同学派による「貨幣重視のケインズ主義 (Monetär-Keynesianismus)」理論(MK理論)のエッセンスをわかり易く 体系的に解説した上で,新しい重商主義,通貨間競争についての理論的考察を行い,今後の通 貨システムの展望に至っている。扱われている材料だけでなく, この分野のテキストとして数式利用が少ないことも貴重。 ■ 本書の目次 |
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1991年3月に,清水和巳氏とともに翻訳した,D.クレール/A.リピエッツ/J.サートル=
ビュイソン著『現代の経済危機――レギュラシオン理論による総括――』
(新評論,本体価格2000円,ISBN:4794800843)を刊行。 ■ 緑の党の欧州議員リピエッツ,オルタナティブ経済のクレールと,まさにラディカルなレギュラシオ ニストたちによるレギュラシオン理論入門書。本書を読んでいると, レギュラシオン理論が誕生した頃の,フランスにおける社会的・政治的雰囲気が伝わってくる。 既にレギュラシオン理論を知る人にも,原点に立ち返るためにぜひ読んでほしい。 ■ 本書の目次 |
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『国際通貨の政治経済学』目次 |
はじめに 第1章 貨幣経済の基礎理論 第2章 国際貨幣経済の基礎理論 第3章 世界経済の中の国家 第4章 通貨間競争と通貨システム 第5章 歴史上に現れた通貨システム |
『現代の経済危機』目次 |
日本語版によせて(アラン・リピエッツ) まえがき(ミシェル・ロラン) 第1章 「危機」と呼ばれてきたもの 第2章 黄金期から暴走へ 1.フォーディズム 2.国際化 3.フォーディズムの機能麻痺 4.通貨危機 5.石油危機 第3章 どこへ向かっているのか 結論 そして,われわれは? |
「序」より(1.本書の目的) |
1.本書の目的 「貨幣は物ではなく,社会関係である」ということ(命題1)がしばしば強調される。 その場合,前半の「貨幣は物ではない」という表現には批判的意図が込められている。 すなわち,<ある貨幣媒体がその機能を果たすのはあたかもその媒体の自然的属性によってで あるかのように見えるが,実はそうではない>という認識批判が意図されている。これは間接的には, 貨幣を交換効率化の道具と見なす学説(例えば,A.スミス)への批判でもある。他方,後半の 「貨幣は社会関係である」という言い方は,<貨幣の存在はそれに対応する独自な社会関係の存在と 不可分だ>という実証的主張を意図している。それに対応しているのは例えば,物々交換と商品流通と は全く別種の社会関係であるという学説的主張(例えば,H.‐G.バックハウスによる「貨幣以前的 価値論」批判)である。 命題1自体に関してわれわれには異存はない。本書全体はそのようなことを前提にしている。 しかし,本書の問題意識は命題1を擁護することにあるのではない。われわれの関心はむしろ, 貨幣が「どのような」社会関係なのか,ということにある。そこでわれわれは,「貨幣とは,貨幣が 物であることを要求する社会関係である」という命題(命題2)を本書の出発点としたい。命題2が 言おうとするのは,貨幣を介して結ばれる社会関係(貨幣的社会関係)が成り立つためには,人々の 間で貨幣が機能物(自然的属性として貨幣機能を果たす物)として通用していなければならない, ということである。K.マルクスはこのような事態を「物神崇拝(Fetischismus)」と呼んだが, われわれの関心は物神崇拝を批判することにではなく,物神崇拝が要求されることから生起する 諸問題に向けられるのである。要するに,「貨幣は物ではない」ということからではなく,「貨幣は 物でなければならない」ということからわれわれは出発する。 人々が安んじて貨幣を使用することができるには,その媒体があたかも自然属性として貨幣機能を 果たすように見えねばならない。つまり,貨幣は常に物として扱われることを要求するのである。 したがって,貨幣は一般の物と同様に,所有の対象とならねばならないし,発行者によって「生産」 されるものでなければならない。さらには,所有や発行を独占した者が権力の手段として利用できる ものでなければならない。逆にそのように扱えないのであれば,貨幣は「物でない」ことになる。 このように貨幣は物であることを要求するが,実は他面において,物として貨幣を扱う行為が 物としての貨幣の存在を掘り崩すことがありうる(K.ポランニーの論点)。貨幣の過剰発行によって 発生するインフレーションのケースがそれだ。インフレーションが極端にまで進行するとき,人々は 貨幣の機能が物の自然属性に由来するものでないことに気づいてしまう。貨幣媒体の自然属性は 不変なのに,その機能が低下するからである。インフレーション阻止の政策(これ自体,貨幣を 操作可能な物として扱うという側面を含む)がとられるのは,貨幣機能の自然的自明性を確立する ことが,社会関係安定のために重要だからである。 このインフレーションのケースが示唆するように,「貨幣は物でなければならない」という要求が 満たされないときに社会関係は損なわれるし,そのような要求を満たすべく実際に様々な方策が 行使されるのである。「貨幣は物でなければならない」という要求に関連して発生する諸問題, およびその解決に向けた諸行動は,明らかに1つの独自な問題圏を形成しており,経済学(または 社会科学)はその解明を迫られざるをえない。われわれは,このような研究領域を「貨幣論」と 呼ぶことにしたい。貨幣とは「どのような」社会関係か,という問いは貨幣論の展開の中で自ずと 解答を与えられるはずである。 本書は,貨幣論を展開するための基礎研究であり,貨幣論を展開する上で有用だと思われる 諸概念を先行研究からできるだけ体系的な形で引き出すことを目的としている。以下では本書の 構成を述べていくが,その前に3点注意しておきたい。 第一に,誤解を避けるために注意しておくならば,「貨幣は物でなければならない」ということは, 貨幣が商品貨幣(例えば金)であることを要求するということではない。言われているのは,支払の 手段として人々の間を移転したり,特定の人間に保有されたりするものでなければならないという こと,そしてそのためには,自然的属性として貨幣機能を果たしていると人々が思い込めるような 媒体の存在が必要だということである。そのような媒体に要求される「自然的」属性があるとすれば, 基本的にはそれは,他の諸物と区別されて認知される示差的特徴(salience)をもつということ だけである(J.カルトゥリエ,A.オルレアンの論点)。 第二に,本書ではしばしば「貨幣の安定性」に言及するが,特に断わりがない場合でも,われわれは 常に「安定性」の最深の基準として,「貨幣が物である」ことに疑いをもたれない状態を想定して いる。 第三に,本書で取り上げるのは,いずれも執拗とも言えるほどに貨幣にこだわってきた論者である。 本書の研究動機の1つは,彼らがなぜ貨幣にこだわるのか,そしてその関心を持続できるのかを 知りたいということにあった。そのためには,彼らの議論の批判的側面(他の学説への批判と しての側面)に着目するのではなく(あるいはそれを無視して),その積極的な(positive; 実証的な)側面に着目するという方法をとることが必要であった。上記の「貨幣論」という言葉は, その中で浮かび上がってきた彼ら共通の議論モチーフを仮説的に要約したものである。 |