天野卒論


抑うつと遂行機能の関連について


天野啓太

 本研究では、感情と遂行機能の関連については様々な見解が得られていて、統一的な見解はいまだにない。しかし、うつ病患者を対象に遂行機能を測定した場合は、遂行機能は低下するとの統一的な意見が得られている。本研究では対象がうつ病患者の場合、遂行機能が低下するという先行研究に基づき、健常者においても抑うつ得点と遂行機能には負の相関関係があると仮説をたててJannsari assessment of executive functionsで求められる遂行機能得点と抑うつ得点の相関関係について検討した。さらにJannsari assessment of executive functionsで求められる遂行機能能力の下位能力と抑うつ得点の相関関係についても検討を行った。
 参加者は正常視力または強制正常視力を有する健常者を対象に実験協力を依頼した。まず実験参加者には抑うつ得点の測定を行った。抑うつの測定には日本語版CES-Dを用いた。その後、遂行機能の測定を行った。遂行機能の測定にはJannsari assessment of executive functionsを用いて測定を行った。抑うつ得点と遂行機能得点、その他の下位項目と抑うつ得点の相関分析を行った。
相関分析の結果、創造的思考と抑うつ得点に中程度の正の相関がみられた。ほかの項目では有意な相関関係は見られなかった。
 抑うつと遂行機能に相関関係は見られず、先行研究とは反する新たな見解となった。非定型うつが増えてくる中で遂行機能に対しても影響が変容について論じた。また創造的思考と抑うつ得点が中程度の正の相関関係にあったことについては、抑うつ傾向が外界の刺激に対して何らかの影響を与えていることについて論じた。本研究で遂行機能の測定に用いたJannsari assessment of executive functionsは感情と遂行機能の関連についての先行研究で使用していた研究は見なかったので、遂行機能検査としてのJannsari assessment of executive functionsについて論じた。