竹内卒論


顔と名前の一致についての再認実験 

竹内愛彩

 実験1では、顔と名前に関する記憶障害を持つ人の心理的なストレスを軽減するために、顔の記銘の際に印象評定を行う群と行わない群を設定して顔と名前の記銘に関しての実験を健常者に行い、偶発学習と意図学習のどちらが顔と名前を一致させて記憶しやすくなるのか検討することを目的として実験を行った。
その結果、顔刺激に名字という情報を加えても顔刺激の再認実験の先行研究と同様に笑顔と真顔は怒り顔よりも記憶に残りやすいことが分かった。表情の違いがどのように正答率に関係しているかを調べるために印象評定の重回帰分析を行った。真顔に関しての正答率は魅力と信頼度が関係していることが分かった。笑顔と怒り顔に関しては、今回行った印象評定は関係していないということが分かった。
 偶発学習と意図学習には差が出なかった。印象評定をしてもしなくても直後に行う再認課題の定着度には差がないということが分かったが、1週間後に同じ再認課題を行ったら定着度が変わってくるという可能性がある。また、強制選択法だったため、まぐれの可能性があり、しっかり記憶できているのかは確かめられていない。
 そこで実験2では、実験1で推測された限界点を基に、回答方法を再認課題である強制選択法から自由再生法に変更することと1週間後にも自由再生課題をすることを加え、長期記憶への定着率を検討することを目的として実験を行った。
その結果、自由再生と学習条件の交互作用は有意になった。このことから実験群は名字を自由再生では1週間後まで保持することが出来るが、統制群は保持することが出来ないことが分かった。
 また、表情の主効果は有意にならず、実験1とは異なる結果が得られた。表情の主効果が出なかった理由として、自由再生では課題が難しすぎてもともとの正答率が低いことが考えられる。
直後と1週間後で同じ苗字を書いて誤答している人がいた。自由再生課題1で誤ったままだった回答はきちんとフィードバックして正しい名字を伝えることができればより臨床場面に近い実験になった。