古谷卒論


映画の予告編による感情への影響

古谷夢芽

 現代社会はストレスが増大する一方である。ストレスを低減させる方法として、音楽療法が最も容易に行えるため、広い範囲で使用されている。また、音楽と映像を合わせて、ストレス低減を行っている研究もある。そのため、音楽と映像は感情に同じような心理学的効果をもたらすと考えられる。また、映像のストーリーも感情喚起に影響があると示唆する研究もある(金, 2014)。
 そこで本研究は、音楽と映像が使用されている映画の予告編を用いて、感情の喚起が行われるのかを検討する。明るい映像作品を鑑賞した時にはプラスな感情が上がり、重い映像作品を鑑賞した時はマイナスの感情が下がるという仮説を立てた。本研究では、映画の予告編鑑賞前と後で感情状態を測定し、予告編が感情に影響しているかを検討することを目的とした。
 大学生20名を対象に、参加者の感情状態を測定するものとして多面的感情状態尺度短縮版(MMS)、使用刺激映像の感情価を測定する尺度としてAVSMを使用した。参加者には5作品分の映像を鑑賞してもらいそれぞれの質問紙に回答してもらった。その結果、刺激映像の感情価についての検討では、作品1は刺激的で明るい作品、作品2は刺激的で軽い作品、作品3は厳かで明るい作品、作品4は刺激的で親和な作品、作品5は親和で明るい作品であることがわかった。また、映像観賞前と後の感情の変化についての検討では、作品1,2,5では落ち着いた気分を喚起させ、作品3は不安を減少させ、作品4は不安を喚起させるとわかった。
 結果から、本研究で使用した刺激映像は、感情喚起をさせる作品であることがわかったが、明るい映像がポジティブな感情を喚起し、重い映像がネガティブな感情を喚起する結果には至らなかった。これは、映像の影響だけでなく、音楽やストーリーの影響も大きかったと考えられる。そのため、今後の同様のような研究を行う場合は、映像と音楽を分けてそれぞれの感情価を測定し、刺激映像の感情価を測定することで、感情喚起の要因をより正確に検討できる可能性が高い。また、既知の映像を用いることで感情状態に影響があったと考えられるため、有名でないマイナーな映像を使うとより仮説に近い結果が得られると考えられる。さらに、今回質問した質問項目に加え、参加者自身の映画鑑賞状況について質問することで、感情喚起の要因について詳しく検討できると考えらえる。