坂本卒論


モデルの体型の影響による痩身願望の変化

坂本花菜

 本研究においての目的は、ふくよかさの魅力を表すモデルの画像をファッション雑誌に掲載することで、若年女性がもつ痩せている体型は美しいという価値観は変化し、痩身願望は緩和されるのかを検討することであった。
 参加者は、痩身願望を持ちやすいとされる女子大学生40名であった。質問紙は、参加者の理想体型を調査するContour Drawing Rating Scale、痩せたいという意識の強さを測る痩身願望尺度、身体における不満を測る身体像不満足感尺度の第1因子「全身のふくよかさ不満足感因子」、第2因子「身体に関する他者評価不満足感因子」を用いた。また、提示したモデル画像を注視させるため、画像を見て感じたことを自由に記述する自由記述欄を設けた。
 実験は、参加者を肥満体型群の画像を提示する実験群20名と、痩せ型体型群の画像を提示する統制群に、それぞれ20名ずつ、ランダムに振り分けて行った。まず、参加者に質問紙への回答を求め、その後に教示を行い、画像を提示した。画像は1枚ずつ、それぞれ20秒間提示し、記入時間にて画像を見て感じた印象を自由記述欄への回答を求めた。その後、再度質問紙への回答を求めた。
 実験の結果、Contour Drawing Rating Scaleを用いた回答である理想体型においては、群の主効果と交互作用において有意な差が見られ、痩せ型体型のモデルをみた統制群は、実験後にはより細い理想体型を選択することが示された。痩身願望尺度においては、群ごとの主効果のみ有意な差が見られ、ふくよかなモデルの画像を提示するとやや痩身願望が促進される結果となった。身体像不満足感尺度の因子1「全身のふくよかさ不満足感因子」と、因子2「身体に関する他者評価不満足感因子」では、共に有意な差は見られず、ふくよかなモデルの画像を見ることで自身の身体に関する不満感と、他者評価への不満感は緩和されないということが示された。
 理想体型の結果から、痩せすぎモデルを見ることで理想体型がより細くなっていくことが明らかになり、これは痩せすぎモデルが女性の痩身願望を促進するという先行研究と一致しており、痩せすぎモデルの危険性が再認される結果となった。また、ふくよかな体型のモデルは痩身願望の緩和には至らないものの、促進の防止にはなる可能性が示された。
 痩身願望尺度の結果から、ふくよかな体型のモデルをみることでやや痩身願望が促進されることから、ふくよかさへのマイナスイメージが生じてしまったことが考えられる。肥満者はだらしないというイメージが持たれやすい(佐名・五十嵐, 2013;2014)という先行研究と一致する結果になってしまったことが考えられ、3枚の画像では今まで築いてきた痩せていることが美しいという意識を変えるに至らなかったと考えられる。
 上述の点から、本研究の目的であるふくよかな体型のモデルによる痩身への価値観の変化と、痩身願望の緩和は、そのような結果は見られなかったものの、ふくよかな体型のモデルが痩身願望の促進を防止する可能性を示唆した。