榎原卒論


自己志向的完全主義が職業未決定に及ぼす影響について

榎原綾乃

 この研究では自己志向的完全主義の4つの因子が職業未決定にどのような影響を及ぼすのか検討することを目的として行った。また、就職活動や将来不安に感じることの違いと就職活動で重視したいと思うことの違いが職業未決定や自己志向的完全主義とどのような関わりがあるのか検討することも目的として行った。
 職業未決定の得点を目的変数、完全主義の4つの因子を説明変数としたステップワイズ法に基づく重回帰分析を行った結果、自己志向的完全主義の不適応な側面である「ミスを過度に気にする傾向」と「自分の行動に漠然とした疑いをもつ傾向」は、職業が決定できない状態を高めてしまうことが明らかになった。一方、自己志向的完全主義の適応的側面である「自分に高い目標を課する傾向」は、職業を決定できない状態を抑える効果が明らかになった。また、職業未決定 (高低) と「将来不安に感じることの違い」または「就職活動で重視したいことの違い」との連関性についてカイ二乗検定を行った。結果、やりたいことがわからない、何をしたらよいかわからないといった悩みをもつ人のほうが職業が決められないことや、希望の職に就けるかといった悩みをもつ人のほうが職業が決められていることがわかった。さらに、「自分に高い目標を課する傾向」と「自分の行動に漠然とした疑いをもつ傾向」、「将来の不安の違い」と「就職活動で重視したいことの違い」との連関性についてカイ二乗検定を行った。結果、「自分に高い目標を課する傾向」が高い人の方が、仕事のやりがいや仕事内容を重視したいと思っていることが示された。また、「自分に高い目標を課する傾向」が低い人のほうが、休日や給料などを重視したいと思っていることがわかった。
 本研究の結果は、やりがいや仕事内容を重視している人の方が職業を決めやすいとも捉えられる。そのため、やりがいや仕事内容を重視できるような支援をしていくことが必要である。しかし、職業決定においてはやりたい職業のみを考えるのではなく、長い目で考えることが重要である。また、不適応な完全主義傾向のある人は不安を受容しポジティブな側面の支援が必要ということから、ポジティブ心理学的介入なども有効な支援ではないかと考えられ、今後検討していく必要がある。