廣瀬卒論


自己ペース走が心身に与える影響についての検討

廣瀬羽冴

 現代の大学生が抱える問題として取り上げることができる対人不安は、運動によって改善が可能とされている。本研究では、対人不安の高低に運動に対する考えが関係しているのかを検討するものとする。
運動の中でも特に対人不安低減の効果が見込まれるのは中等度強度の一過性運動であり、本研究では中等度強度の一過性運動である自己ペース走の実施によって、対人不安が低減するかを再検討する。また、対人不安の低減が見られた場合、どのような要因が影響を与えているかを検討する。
実験1では、運動に対しての苦手意識の有無と対人不安の高低は関係しているかを調査するため、「運動に対して苦手意識があるか」という質問について回答を求め、状況別対人不安尺度についても回答求めた。
結果として、運動が苦手である群と苦手ではない群とでは、苦手である群の方が、状況別対人不安尺度の全項目について不安得点が高くなったが統計的に有意な関係はみられなかった。
この結果より、運動に対する苦手意識の有無は対人不安の高低には影響しないことが示され、運動に対して苦手であると考える人と苦手ではないと考える人がいることが示された。この結果を受け、対人不安の高低に影響を与える要因に運動に対する苦手意識の有無に加えて、運動をすることが好きか嫌いかを追加し、回答者の感情をより正確に把握するために2件法から5件法に変更し、実験2を行った。
実験2では、中等度強度の一過性運動である自己ペース走の実施が対人不安を低減するかを再検討するとともに、対人不安が低減した場合に、どのような原因が介在しているかを調査するものであった。自己ペース走に関しては達成条件を4つ設定し、この条件を全て達成できるように実施させ、質問紙では状況別対人不安尺度に加えて、WASEDAを自己ペース走実施前後にそれぞれ回答を求めた。自己ペース実施後では、状況別対人不安尺度とWASEDAに加えて、自己ペース走に関する質問紙と運動状況に関する質問紙にも回答を求めた
結果として、自己ペース走を実施することによって対人不安の低減がみられ、中等度強度の一過性運動の効果を再確認することができた。運動の実施によって生じる高揚感について有意な関係がみられた。運動の実施によって高揚感が上昇することは、運動の実施によって心身が活性化され興奮状態になったことが、対人不安の低減に影響を与えている可能性が示された。本研究では、対人不安の低減に影響を与える要因として「運動に対する苦手意識の有無」「運動をすることは好きか嫌いか」「自己ペース走の達成度」「普段の生活で運動を行う頻度」の4つを想定したが、重回帰分析の結果、有意な関係はみられなかった。
この結果から、運動による対人不安の低減は、運動に対する苦手意識や好き嫌いに関係なく効果があることが示された。しかし、この効果が生理的な反応によって生じたものか、本研究で対象としなかった別の要因が影響しているかを明