根本卒論


大学生のストレスコーピングと性格特性の組み合わせの関係についての検討

根本楓

本研究は、参加者の性格特性とストレスコーピング傾向を測ることにより、性格・状況・性別ごとにどのようなストレスコーピングを用いる傾向にあるのか、またどのようなストレスコーピングの組み合わせが用いられる傾向にあるか明らかにすることを目的とした。参加者は大学生83名(男性28名、女性55名)であった。参加者には、フェイスシートによって、性別、年齢の回答と、日本語版モーズレイ性格検査、「対人関係においてストレスを感じた状況」と「身体的な問題においてストレスを感じた状況」をそれぞれ想定させたLazarus, Rのストレスコーピングインベントリーの回答を求めた。
その結果、状況とストレスコーピング傾向に交互作用が見られ、責任受容型、自己コントロール型、離隔型、肯定評価型の得点が「対人関係においてストレスを感じた状況」のほうが有意に高かったことから、身体的な問題がある状況より対人問題がある状況の方が、誤った自分の行動を素直に自覚し反省したり、自分の考えを表にあらわさず問題に慎重に対処したり、問題は自分とは関係ないと切り離そうとしたり、問題解決を自己発見や自己の成長だと考えたりする傾向が高いと言える。
交互作用が見られなかったことからストレスコーピングと性格特性との明らかな関係を証明することはできなかった。しかし、統計的には有意差が無かったが、離隔型のコーピングを行う傾向が高いクラスターが、また逃避型と離隔型のコーピングを行う傾向が高いクラスターが、そうでないクラスターと比べて、また外向的尺度の得点の平均値が低かった。このことから完全に実証することはできないが、逃避型、離隔型のコーピングを選択する傾向が高い人は外向性が低くなるという可能性があるかもしれないと考えられる。
また、コーピングの組み合わせと性格の関係も本研究では実証しきれなかった。しかし、各クラスターはそれぞれ異なるコーピング特徴を持っており、これらは各クラスターにおいて同時に使われるコーピングの組み合わせが存在する可能性を示唆していると考えられる。全体的な傾向として、性格は外向性より神経症的傾向が有意に高かったので、今後さらに詳細に検討して本研究で得られたコーピングの組み合わせと性格の関連について検討する必要がある。
本研究では状況によるストレスコーピングの傾向は明らかになったものの、性別、性格特性によるストレスコーピングやその組み合わせの傾向は十分な関係を証明することはできなかった。しかし、本研究の結果、同時に行われるコーピングの組み合わせがある可能性が考えられ、またその組み合わせである可能性が考えられる複数のコーピングを提示することが出来た。これらのコーピングの組み合わせを元に、性格特性との関連を検討することにより、ストレスコーピングの組み合わせと性格特性を明確に証明できると考えられる。