利用するSNSの種類による主観的幸福感の違いとSNS利用から起こるネガティブ感情への対処法の検討
郷上由茉
本研究では、TwitterとInstagramにおいて、利用時間、利用の仕方、利用動機、魅力など各SNSの利用時における特徴を明らかにするとともに、それらがどのように主観的幸福感と関連するか、またSNSストレスやスマホ依存などSNS利用によって引き起こされるネガティブ感情の原因とその対処法について検討することを目的とした。
大学生118名が参加し、Twitter、Instagramそれぞれの利用動機、魅力、人生に対する満足感質問紙、SNSにおける対人ストレス尺度、スマホ依存尺度への回答を求めた。Twitter、Instagramそれぞれの利用における特徴や主観的幸福感、SNSストレス、スマホ依存との関連について検討を行った。また、Twitter、Instagramの利用時間と利用の仕方により4つのクラスターに分類し、主観的幸福感、SNSストレス、スマホ依存に違いがあるかを検討した。
その結果、Twitterでは利用時間は短く、閲覧のみの利用者が多かった。Twitterの利用動機、魅力について被験者内一要因分散分析を行ったところ、Twitterは主に「新しい情報の収集」と「優れた投稿の閲覧」など個人で完結できる行為に利用されることがわかった。Twitter利用において、友人との繋がりを実感できるほど主観的幸福感が高まり、「悪口・中傷状況」や「疎外状況」など自身が直接傷つけられる内容でSNSストレスを感じることが示唆された。また、閲覧強迫という情報を見落とすことへの不安感がスマホ依存に繋がることが示唆された。
Instagramでは利用時間は長く、投稿する利用者が多かった。Instagramの利用動機、魅力について被験者内一要因分散分析を行ったところ、Instagramは「新しい情報の収集」に加え、「友人との繋がり」のために利用されることがわかった。Instagram利用において、友人との繋がりを実感することや煩わしさを感じずに利用できることで主観的幸福感が高まることが示唆された。また、友人との繋がりのために利用されるInstagramでは「疎外状況」でSNSストレスが高く、Instagram利用時間が長くなることに伴い、スマートフォン使用時間も長くなりスマホ依存に繋がることが示唆された。
TwitterとInstagramを比較して、より多くの大学生が利用しているのはInstagramであることがわかった。これは、Instagramの方が伝えられる情報量が多いことやストーリー機能の手軽さによるものだと考えられる。
参加者をTwitter、Instagramの利用時間、利用の仕方で4つのクラスターに分類し、SNS低利用群、Twitterメイン群、Instagram単独利用群、Instagramメイン群と名付けた。4つのクラスター間で主観的幸福感、SNSストレス、スマホ依存の違いを検討したところ、すべてにおいて有意な群間差はみられなかった。この結果から、主観的幸福感、SNSストレス、スマホ依存に利用時間や利用の仕方は影響を与えないことが示唆された。また、スマホ依存はSNS利用状況に限らず高い可能性が考えられる。
SNSは暇な時間に利用されることが多く、コロナ禍でリモート授業が一般的になった大学生はスマホ依存が加速していると考えられる。スマホ依存状態になると、健康状態や学業など様々な場面で支障を来すため、Twitter、Instagramそれぞれの利用動機や魅力を把握し、それ以外の目的で長時間利用しないことがスマホ依存の予防に大切であると考える。
本研究では、利用時間や利用の仕方でクラスター分けを行ったが、それ以外のところで違いをみていく必要があると考える。また、今後、SNS利用なし群を作り再検討することで、SNS利用そのものが主観的幸福感、SNSストレス、スマホ依存に与える影響を検討できると考える。